花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

アパルタメント・ボルジア

2008-11-25 03:51:04 | 美術館
「ベッリーニ展」の続きを急ぎたいのだが、ちょっとばかり寄り道をする(^^;;;

今回、久しぶりにヴァチィカンを訪れ、朝から晩まで丸一日楽しんでしまった。博物館の方もすっかりシステム化され、スムーズな対応と午後6時まで開館という、以前とは比較にならないほどの進歩だ。併設のレストランも意外に美味しかったし(笑)。

さて、もちろん入場後は一直線に絵画館を目指し、ラファエッロやカラヴァッジョ《キリストの埋葬》など一通り観た後はシスチィーナ礼拝堂へと続くコースを辿った。このコースはラファエッロの《アテネの学堂》などを見学し、ボルジアの間(アパルタメント・ボルジア)を通ってシスティーナ礼拝堂へと続く。

すっかり改修されたアパルタメント・ボルジアは噂通り現代宗教美術コレクションのギャラリーになっていた。多数の現代アーティストたちの作品が並ぶ。


サルバトーリ・ダリ《受胎告知》


サルバトーリ・ダリ《キリスト磔刑》

展示作品にルオーやシャガール、ダリなどがあるのはわかるが、意外なことにモランディ作品まである。それでも一番驚いたのは、なんとフランシス・ベーコンの《イノケンティウス10世》シリーズの1枚まで展示されていたのだ!だってここはローマ法王のお膝元なのだよ(^^;;


フランシス・ベーコン《イノケンティウス10世》

このボルジアの間で現代宗教画を観ながら、夏に読んだエドガー・ヴィント著「シンボルの修辞学」(晶文社)を想起してしまった。

会社のライブラリーで偶然見つけたもので、表紙がアルテ・ピナコテークのグリューネヴァルトであることが目を惹き、当然借り出して読み始めた。初めはヴィントの小難しいそーで博覧強記的な語り口に読みにくいかなぁと思っていたのだが、これがなかなかに面白くて、最後の章ではゴンブリッチの『アビ・ヴァールブルク伝』への辛辣な書評なんか書いちゃって、ヴィント先生言い過ぎかもと心配するほど(^^;;;

で、何故想起したかと言うと、まず、「プラトン的専制政治とルネサンスの「運命」―フィチーノによる『法律』第四巻709A‐712Aの読解」の章を読んで、マキアヴェッリの『君主論』が当時のネオ・プラトニズム研究から生まれたことが了解でき、私的にチェーザレ・ボルジアが父アレクサンドル6世の逝去時にマラリアに罹らなかったらイタリアはどうなっていただろうか?などとあれこれ想像してしまったからだ(^^;;

それに、「伝統宗教と近代芸術―ルオーとマティス」の章で、近代芸術における宗教画の困難さに言及するとともに、ルオーとマティスの宗教的背景の相違はあっても、抽象化された表現により宗教画として昇華されていると言う(本が手元に無いのでうろ覚えの私的意訳です(^^;;;)ヴィントの話になんだか肯けるものがあったし…。

例えばノーサンプトン・セントマシュー聖堂のグレアム・サザランド《キリスト磔刑》はグリューネヴァルトの《イーゼンハイム祭壇画》に負うものだが、果たして祈りの対象となり得るのか?…とヴィントは言うのよね。その、サザランド作品がこのボルジアのギャラリーにもあって、私もやはり「う~ん…」と唸ってしまったのだ(^^;;


グレアム・サザランド《キリスト磔刑》

確かに現代アーティストが宗教心に訴える宗教画を描くことが難しい時代である。アーティスト側だけでなく信者側も大きく変わっただろうし…。
もちろん、アパルタメント・ボルジアに展示された作品はアーティストにとっての宗教の形であることは非キリスト教徒の私にもわかる。でも、アーティストってやはり自分の芸術の革新性を作品に塗りんでしまうだろうから、よっぽどの宗教心あるいは宗教に対して、信者に対してのリスペクトが無いと伝わり難いというのもあるなぁと感じてしまった。本当に祈りの対象となると難しいだろう...ね。

ローマ「ジョヴァンニ・ベッリーニ展」(1)

2008-11-16 07:44:11 | 展覧会
さて、ローマのスクデリエ・デル・クイリナーレ(Le Scuderie del Quirinale)で

9月30日~1月11日まで開催されているのが「ジョヴァンニ・ベッリーニ(Giovanni Bellini)展」である。充実した内容とあまりの素晴らしさに2日間通ってしまった(^^ゞ



大型祭壇画を含めたジャンル別・年代別に展示されたジョヴァンニ・ベッリーニ(1438/1440-1516)の足跡を辿りながら、ヴェネツィア絵画の特色とも言える、自然主義的な光と豊穣な色彩が醸し出す詩情溢れる世界にどっぷりと浸ることができる展覧会だったのだ。 まず、オープニングから《ペーザロ祭壇画(Pala di Pesaro)》+《ピエタ/通称(Imbalsamazione di Cristo)》(ヴァティカン所蔵)の合体がど~んと展示してあり、入場者がおおっ!と驚く仕掛けになっている。さすが合体すると規模の大きさが実感できるのだ。


《ペーザロ祭壇画》:聖パウロ・聖ペトロ・聖ヒエロニムス・聖フランチェスコのいる聖母戴冠 + 《ピエタ》
  
このペーザロ祭壇画はペーザロの領主スルフォッツァ家のために描かれた。祭壇画本体である《聖母の戴冠》は構図的にもかなり興味深い。中央のキリストと聖母が座る玉座の背面が窓となり背景が遠近法的に描かれており、両脇の聖人たちの上に浮かぶ天使たちを含めて空間が窓の空間と呼応して広がりを見せる。その二重空間的な窓から見える風景はベッリーニ的な光に満ち、あの美しい横雲がたなびく。 不思議だったのはキリストと聖母よりも両脇に立つ聖人たちの方が写実的に描かれている点だった。そのため聖人たちの存在感が際立ち、背景にヴェネツィアの光に満ちた風景が無ければ北方絵画的な雰囲気もするなぁと思えたほどで、もしかしてこれは玉座部分の「聖母の戴冠シーンを幻視している聖人たち」を描こうとしたものなのかも?とも考えてしまった(^^; 更に上部の精霊の象徴である鳩の上にはヴァティカンの「ピエタ」が合体している。本体画面の空と呼応するようかの空と雲ではあるが、そこには観る者の心を打つ沈痛な悲しみが溢れている。そう、私が初めてバティカン絵画館に行った時に画面と一体になることのできたピエタは、まさしくこの「ピエタ」だった。夕暮れの光と静かな悲しみが画面の外にまで広がり、まるでその場に居合わせたような気がしたものだった...。 ちなみに、ヴァティカン絵画館の現在は....↓である(^^;



ペーザロ祭壇画を飾る額縁縦両側にニッチ風に描かれた聖人たちも、その影を映す明暗により活き活きとした立体感を見せる。しかし、下のプレデッラの方は聖パオロの回心などの聖書物語が描かれてはいるが、意外にも素朴な画風である。 このペーザロ祭壇画は油彩で描かれており、油彩は当時フランドル派から学んだアントネッロ・ダ・メッシーナのヴェネツィア滞在(1475年ごろ)によって伝えられた技法と言われる。しかし、青色には当時主流のアズライトやラピスラズリだけでなくガラス質のエナメル顔料も使われているようで、ベッリーニが油彩についての先進技術を身につけていたことがわかると言う。

■参考:マリオリーナ・オリヴァーリ著「ジョヴァンニ・ベッリーニ」(東京書籍刊)


風邪ひき中

2008-11-14 00:54:23 | 西洋絵画
旅行から帰ると東京は寒さの真っ只中。ということで、案の定風邪をひいてしまった(^^;;
風邪薬を飲んで、両肩には貼れるホッカイロ(笑)。早く治したいと思う。

レポートがしばしお預け状態ということで、エクスキューズに身代わり画像をUP(汗)


カラヴァッジョ「キリストの埋葬」(ヴァティカン絵画館)

久しぶりの再会でしみじみ見入ってしまった。画面にから突出するような石板の直角、ニコデモの肘の角度、そして視線...。

ローマ~パルマ~ボローニャ

2008-11-11 01:40:31 | 展覧会
今回の旅行で廻った美術館・教会を列記する。展覧会感想などは後日ということで...(^^;

■ローマ
 
・スクデリエ・デル・クイリナーレ
  「ジョヴァンニ・ベッリーニ展」 

・バルベリーニ国立古典絵画館
  カラヴァッジョ「ナルキッソス」・「フォロフェルネスの首を斬るユディット」・「瞑想の聖フランチェスコ」

・カピトリーニ美術館
  カラヴァッジョ「洗礼者聖ヨハネ(笑うイサク)」・ 「女占い師」

・ヴァティカン(博物館・宝物館含む)
   カラヴァッジョ「キリストの埋葬」


カピトリーニ美術館(ローマ)

・サンタンドレア・アル・クイリナーレ教会
・サン・カルロ・アッレ・クワトロフォンターネ教会
・サンタ・スザンナ教会
・サンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会
・サンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会
・サンタンドレア・デッレ・フラッテ教会
・プロパガンダ・フィーデ宮


サンタンドレア・デッレ・フラッテ教会(ローマ)

ローマを知っている方ならこの教会一覧を見て手抜きコースだと笑われるかもしれない(^^;;。でも、やはりローマ・バロックと言えばベルニーニもボッロミーニも外せないのだ。


■パルマ

コレッジョ展
 ・ピロッタ宮殿(テアトロ・ファルネーゼ含む)
 ・サン・ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ教会
 ・ドゥオーモ
 ・サン・パオロ尼僧院

コレッジョ展の会場は4ヶ所に渡り、特にドゥオーモとサン・ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ教会はクーポラ接見の足場を組んだ特別鑑賞になっており予約をするのがベストだ。下記でチケット予約できるが、別々に予約するよりも通し予約すると格安になる。予約の入り方に注意!とのこと(Fさん情報)。
 http://www.vivaticket.it/festival.php?id=341

・洗礼堂
・グラウコ・ロンバルディ博物館

パルマはもう「コレッジョ祭り」という雰囲気で、街中にコレッジョ展のポスターやフラッグが見られた。クーポラに足場を組んでの鑑賞大会企画もありで、パルマ市挙げての大イベントという様相だった。


■ボローニャ

・聖ジャコモ・マッジョーレ教会
・聖チェチリア祈祷所
・国立絵画館
  「アミーコ・アスペルティーニ展

ボローニャ在住Fさんの解説付きで街中を案内して頂いた。ボローニャ大学西洋美術史専攻中(う、羨ましいぃ~!)ということで、大学構内まで潜入させていただいた(^^)v。アスペルティーニ展はFさんご推薦の展覧会で、カラッチ以前のボローニャ派の様相がわかる。アミーコって不思議で面白い画家だった。
ちなみにボローニャはストの真っ最中で、またもやモランディ美術館を観れなかったのだ(^^;;

帰国報告

2008-11-10 01:28:11 | 海外旅行
業務連絡(?)を書く余裕も無くイタリア旅行へ出発してしまった。ということで、本日(昨日?)無事に帰国(^^ゞ


「ジョヴァンニ・ベッリーニ展」(ローマ)

今回はローマで「ジョヴァンニ・ベッリーニ展」、パルマで「コレッジョ展」を観るのが主目的であった。が、もちろんカラヴァッジョ作品との再会もしてきた(笑)


「コレッジョ展」(パルマ)

それに何と言っても、いつもお世話になっているFさんにボローニャでお会いできたのが嬉しかった!(色々と多謝多謝ですっ!!)

さて、今回は ローマ~パルマ~ボローニャ(日帰り)~パルマ~ミラノというコースで、詳細は明日UPしたい。