相変わらずの駆け足旅行に行ってきた。去年見逃した展覧会を想うと悔しいが、今年できるだけ観たいものだと思う。さて、今回は...
■ローマ
・スクデリエ・デル・クィリナーレ(Scuderie del Quirinale)
「Tintotrtto」展
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「ティントレット展」垂れ幕
ヴェネツィア派は好きだがどうもティントレットは苦手だった。今回の展覧会では少しでも苦手意識を取り除きたいと思ったのだが...(^^;;
出展作品はやはりアカデミアやサン・ロッコなどヴェネツィアからの作品が多数を占める。今回の展覧会で収穫だったのは、ティントレット作品の中にトスカーナの手法が確認できたこと!マニエリスム画家であることが私的に了解できたことが何よりだった。
オープニングが自負心に溢れるV&A《自画像》で、最後が全てを見てしまったというような晩年の何か虚ろな眼差しのルーヴル《自画像》という、作品以上にティントレット自身を物語っていたような気がする。
・パラッツォ・バルベリーニ(Palazzo Barberini)
「Guercino 1591-1666」展
「常設展」
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パラッツォ・バルベリーニ入口の「グエルチーノ展」垂れ幕
グエルチーノの故郷Cento市立絵画館からの出展が多数を占めていた。中でも《Cristo risorto appare alla madre》は特にエモーショナルで、上手すぎる涙腺刺激傑作だった。グエルチーノにラファエッロの影響が見え、カラヴァッジョ的明暗作品から古典主義へと移行するのは、グイド・レーニと同じかもしれない。
常設展示の方はカラヴァッジョ3作品《ナルキッソス》《フォロフェルネスの首を斬るユディット》《瞑想する聖フランチェスコ》が出張なしで常勤状態だった。ユディットの背後の紅いカーテンのうねりはフォロフェルネスの血の増幅表現じゃないのか?
■ボローニャ
・国立絵画館(
Pinacoteca nazionale)
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ボローニャ国立絵画館
3度目の国立絵画館になったが、ラファエッロ《聖チチェーリア》の展示位置が異なっていた。実は今回、ジョット《聖母子と4聖人》の衣文表現の美しさに改めて目を奪われた。青色(多分ラピスラズリ)の諧調と深みにが素晴らしい。ボローニャ派展示室はそのままで、ローマでのグエルチーノ展の続き的チェックをしてしまった。で、グイド・レーニの晩年と思われる肖像画があり、なんだか苦労が偲ばれてしまった。
・サン・コロンバーノ(San Clombano)
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サン・コロンバーノ(教会・美術館)
サン・コロンバーノとパラッツォ・ペポリはボローニャのFさんに案内していただいた(Fさんに感謝!)。それぞれ古い教会とパラッツォを修復して美術館にしたそうだ。サン・コロンバーノは個人収集家の集めた楽器類(主にチェンバロなど)が展示されているのだが、元々の教会部分にボローニャ派によるフレスコ画が残っている。ある意味で豪勢だと思う。
・パラッツォ・ペポリ(
Palazzo Pepoli Campogrande)
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パラッツォ・ペポリ Campogrande 国立絵画館などからの委託展示が多いようだ。
パラッツォ・ペポリはフレスコ画装飾が美しいパラッツォで、古典~現代美術の展示を行っており、バロック作品も多く展示されていた。カラヴァッジョ的作品もあり目が吸い寄せられる(^^ゞ
ペポリの美術館リンクにYOU TUBE 動画を貼ったのでご参照ください。
■ミラノ
・パラッツォ・レアーレ(Palazzo Reale)
「Tiziano e la nascita del paesaggio moderno」展
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パラッツォ・レアーレ玄関前の垂れ幕。風の強い日だった。
ヴェネツィア派絵画における風景画の変遷を観ることができた。風景が作品背後に広がる人物主体から風景重視になる展開も実に興味深かった。なにしろオープニングがジョヴァンニ・ベッリーニ《Crocifisso con cimitero》で、懐かしくもプラートのアルベルティ美術館から来ていた!!このジョルジョーネ、ティツィアーノ、ヴェロネーゼと続く第1室だけで満足してしまう。続く展示室がちょっと寂しくても許してあげる(笑)。
ベネツィア派の風景画がフランドル絵画やデューラなどの影響を受けているのはよくわかるが、やはりティツィアーノあたりからヴェネツィア派独自の表現になっていくのが見えた気がする。
■ラヴェンナ
・ラヴェンナ市立絵画館(Museo d’Arte della citta di Ravenna)
「Miseria e splendore della Carne Caravaggio, Courbet, Giacometti, Bacon...」展
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ラベンナ市立絵画館。隣の立派な教会はサンタ・マリア・イン・ポルト教会。
今回の旅行の最目的はこの展覧会だった。カラヴァッジョ作品はロベルト・ロンギ財団《蜥蜴に噛まれる少年》だけだが、カラヴァッジョをどのような文脈で語るのかに興味があって出かけた。
この展覧会はロベルト・ロンギの弟子で評論家ジョヴァンニ・テストーリ(Giovanni Testori 1923-1993)に捧げるものだった。このテストーリおじさんはミラノ近郊出身でロンギの弟子だから当然カラヴァッジョ研究もしている。テストーリがロンバルディアの画家たちを愛し、カラヴァッジョを通じて、現代に至る画家たちを批評した軌跡が展示されたとでも言って良いだろう。やはり、クールベやジェリコーはわかるし、現代に至ってのサザーランドやベーコンへ受け継がれていった共通項は「リアリティ」なのだよね。今回私的になるほど!と思ったのがジャコメッティだった。並べてみると、ベーコンはジャコメッティとサザーランドに影響を受けているのではないかと思ってしまった。それ以上にジャコメッティって凄いかもしれない。結構面白い展覧会だったので詳細はまた書きたいと思う。
・サンタ・ポッリナーレ・ヌォーヴォ聖堂(Basilica di Sant Apollinare Nuovo)
・ネオニアーノ洗礼堂(Battistero Neoniano)
・サン・ヴィターレ聖堂(Basillica di San Vitale)
・ガッラ・プラチーディア廟(Mauseleo di Galla Placidia)
・アリアーニ洗礼堂(Battistero degli Ariani)
・大司教博物館(サンタンドレア礼拝堂)(Cappella di Sant Andrea)
・サンタ・ポッリナーレ・イン・クラッセ教会(Basilica di Sant Appollinare Classe)
・テオドリック王廟(Mausoled di Teodorico)
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サン・ビターレ聖堂《ユスティニアヌス帝と従臣たち》
ラヴェンナの世界遺産に登録されている史跡を駆け足で回った。黄金のモザイクが美しく、なおかつ素朴な造形から高度な技巧まで、それぞれの聖堂や廟にふさわしい荘厳さに心打たれた。ビザンチンの残光がラヴェンナには色濃く残されている。
ざっと急いで旅レポートを書き飛ばしたが、個々の展覧会や美術館・教会等の詳細感想文をできるだけ書きたいと思う。でも毎度オオカミ少年だから期待しないでお待ちあれ(^^;;;