前回、「中世末期(欧州)の衣装」動画で紹介した中に登場した「木製サンダル(?)」を見ながら、ヤン・ファン・エイク《アルノフィーニ夫妻の肖像》に描かれたサンダルを想起してしまった。LNGで舐めるように眺めましたもの。
※ご参考:「中世末期の衣装」動画
https://www.youtube.com/watch?v=tUsZQobX3Uw
ヤン・ファン・エイク《アルノフィーニ夫妻の肖像》(1434年)ロンドン・ナショナル・ギャラリー
※ご参考:「Closer to Van Eyck」
http://closertovaneyck.kikirpa.be/verona/#viewer/rep1=2&id1=6cb22ad3c438b92c720d16b4d91d98ca
で、私的に凄く納得したのが、この描かれた木製サンダルに付いた「泥」なのだ!! カラヴァッジョを彷彿させるではありませんかぁ~!!
ヤン・ファン・エイクの恐るべきスーパー・リアリズム!が写し取ったサンダルの泥には、当時の道が雨や水で即ぬかるんでしまう現実が如実に表現されている。動画に出てくる当時の革靴ではすぐダメになってしまうのが了解され、革靴にこの木製サンダルを履くという発明(?)が、至極現実的な対処法だったのだろうなぁと凄く納得できたのだ。
ちなみに、絵画に描かれた木靴やサンダルは結婚の宗教的儀式を意味しているらしい。
さて、超有名な《アルノフィーニ夫妻の肖像》であるが、実は最近、某講座でお勉強させていただいたのだった。超サクッとまとめると...(誤解・誤記があったらスミマセンです)
・従来、ジョヴァンニ・アリーゴ・アルノフィーニとその妻ジョヴァンナ・チェナーミを描いたものと言われているが、モデルは誰で、どのような関係なのか、正確にはわかっていない。
※ご参考:「アルノルフィーニ夫妻が結婚したのは1447年であり、それは絵画に記されている日付1434年の13年後のことで、さらにファン・エイクが死去した1441年よりも後であることが1997年に判明した。…(現在では)従兄弟のジョヴァンニ・ディ・ニコラ・アルノルフィーニ夫妻で、女性は内縁の二番目の妻、あるいは近年の研究によれば1433年2月に死去した最初の妻コスタンツァのどちらかである」(Wikipedia)
・後世から見れば何も不思議はない構図だが、二人の構図は「受胎告知」を想起させ(ダブル肖像画)、当時では殆ど類例がない。当時、多翼祭壇画を展開した夫婦別々の肖像画は多いが、一枚の絵の中で、宗教画の構図を借り、風俗画(肖像画)に転用したことは、まさにヤン・ファン・エイクのオリジナリティのひとつと言える。
・絵の中で、男性は左手で女性の右手を取っている(従来、男性は右手で女性の左手を取るのが一般的)。婚礼の場面を描いたとすると、男性の左手はこの結婚が身分違いの女性を妻とした貴賤婚(?)との説がある。
・奥に描かれた凸面鏡は、二次元では描き切れない新しい空間を創出している。その鏡には作者であるヤン・ファン・エイクが描き込まれている。
等々、ということで、《アルノフーニ夫妻の肖像》が15世紀の時代の変わり目に相応しい異色作品であることを了解したのだった。
それにしても、超有名作品過ぎて、木製サンダルに付いた「泥」の感想ぐらいしか書けない自分が情けない。なんだか、この付着泥みたいな自分だなぁとも思ってしまったのだった。