花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

国立西洋美術館にラヴィニア・フォンターナ《アントニエッタ・ゴンザレスの肖像》が!

2024-11-27 18:00:10 | 西洋絵画

国立西洋美術館「モネ」展を観るため、久々に日帰りで東京に出かけた。顔面の帯状疱疹はほぼ回復したものの循環器系に故障を抱えており、以前のような展覧会ハシゴは控えようと、西美だけ観ることで我慢

で、「モネ展」を観た後に常設展もチェックしたわけだが、なんと!新収蔵品としてラヴィニア・フォンターナ《アントニエッタ・ゴンザレスの肖像》が展示されていた !!

ラヴィニア・フォンターナ《アントニエッタ・ゴンザレスの肖像》(1595年頃) 国立西洋美術館

この作品については以前拙ブログ「アルチンボルド展 感想(4)」で紹介したことがある。多毛症のゴンザレス一家と当時の宮廷における「自然の驚異」として扱われた経緯を含め、詳細は下記↓をご参照あれ。

https://blog.goo.ne.jp/kal1123/e/50a2d228440685436ad27dfc989d54fd

描いた画家はボローニャ生まれのラヴィニア・フォンターナ(Lavinia Fontana, 1552- 1614年)、描かれた多毛症の少女はアントニエッタ・ゴンザレス(ペドロ・ゴンザレスの娘)、アントニエッタは当時パルマ公国のソラーニャ侯爵夫人の屋敷の住人となっていた。

先のブログでも触れたアルベルト・マングェル著『奇想の美術館-イメージを読み解く12章』(白水社)が西美のブックショップにも置いてあったのが、なるほど~

ということで、西美サイトの作品紹介もチェック。

https://collection.nmwa.go.jp/artizeweb/search_7_detail.php

※(ラヴィニアの持っている紙の)銘: “Dall’Isole Canari fu con / dotto al Re Enrico II di fra. / D. Pietro Huomo selvatico che / di presente se trova presso al Ser.mo / Duca di Parma dal qual naqui io / Antonietta et hora me trovo a presso / Alla Sig.ra donna Isabella Pallavicina / Sig.ra marchesa di Soragna 159(?)”

ちなみに、Isabella Pallavicino(1549-1623)はソラーニャ侯爵夫人で、当時最も教養があり洗練された女性の一人だったようだ。

※来歴:Collection of Edgar Bérillon (1859-1948), Burgundy, France, then by descent; Rouillac, June 4, 2023 [Lot 00057]; purchased by NMWA, 24 July 2024.

https://www.rouillac.com/en/auction/garden_party/642-artigny_2023/

上↑の写真を見ると、なんだか楽しそうなオークションだったように思える

で、ラヴィニア・フォンターナ( Lavinia Fontana, 1552- 1614)だが、西美の解説によると「西洋美術史上初めて本職の画家として成功を収めた女性」とのこと。Wiki伊版によると「後期マニエリスムのイタリアの画家。彼女は祭壇画を描いた最初の女性であることと、シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿から依頼された女性(着飾る行為のミネルバ)によって最初の女性のヌードを描いたことで記憶されている。」とのこと。

https://it.wikipedia.org/wiki/Lavinia_Fontana

フォンターナは当時最も成功した女性画家のようだが、なにしろボローニャ生まれ、カラッチ派の影響も受けたようだ。ボローニャ国立絵画館のボローニャ派展示室に飾られているあの豪奢な赤ちゃんも近年ラヴィニア・フォンターナに帰属されたらしい。

ラヴィニア・フォンターナ《クッラ(幼児用寝台)に横たわる女児》(1583年頃)ボローニャ国立絵画館


パウル・クレーとセガンティーニ。

2024-10-26 23:24:55 | 西洋絵画

M先生の講座で知ったのだが、ベルンの「パウル・クレー・センター(Zentrum Paul Klee)」はパウル・クレー(Paul Klee, 1879-1940年)の作品4000点を収蔵しているそうで、その中に初期のエッチング作品《樹上の処女》がある。

パウル・クレー《樹上の処女》(1903年)パウル・クレー・センター(ベルン)

私の知っているクレーの作風とは異なり、その硬くねじれた人物造形はまるでエゴン・シーレを予告するかのように感じられた。が、その画像を見た瞬間、ジョヴァンニ・セガンティーニ《悪しき母たち》も想起したのだ  年代的にもセガンティーニ作品の方が先行しているはずである

ということで、ジョヴァンニ・セガンティーニ( Giovannni  Segantini, 1858-1899年)の《悪しき母たち(Le cattive mdri)》である。

ジョヴァンニ・セガンティーニ《悪しき母たち》(1894年)ベルベデーレ美術館

ジョヴァンニ・セガンティーニ《悪しき母たち》(1894年)チューリッヒ美術館

早速ネットで調べてみると...やはり...

「《樹上の処女》は、ジョヴァンニ・セガンティーニの《悪しき母たち(Le cattive madri)》(1894年)の モチーフと結びついています。この絵は、アルフレッド・ジャリー、マックス・ヤコブ、クリスチャン・モルゲンシュテルンのグロテスクな抒情詩の影響を受けています。それは、20世紀の変わり目に象徴主義者の作品に見られる文化的悲観主義を特徴としています。」(Wiki英版)

美術ド素人の私には、クレー《樹上の処女》もセガンティーニ《悪しき母たち》も、女性の人生が樹木に捕らわれているように見えるのだよね。まぁ、現代女性は樹木なんてへし折って薪にしちゃうかも

※追記:ちなみに、クレー《樹上の処女》って《ポリフィロの夢》を踏襲しているんじゃないかなぁ?? ジョルジョーネの《眠れるヴィーナス》からマネ《オランピア》の系譜に連なったり??

フランチェスコ・コロンナ《ポリフィロの夢》(1499年)


バイエラー財団美術館のモネ《睡蓮》。

2024-10-10 16:49:33 | 西洋絵画

国立西洋美術館「モネ展」が10月5日から始まったが、体調がまだ不安定なので、いつ行けるかわからない。

・公式サイト:https://www.ntv.co.jp/monet2024/

・作品リスト:https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/pdf/2024monet_list.pdf

作品リストを見ると、どうやら西美所蔵作品とマルモッタン美術館所蔵作品を中心とした構成のようだ。

で、まだ観に行けないものだから、2018年秋のアルベルティーナ美術館「モネ展」を想起し、デジカメ写真を再見しながら、あらためて気が付いたことがあった。

・公式サイト:https://www.albertina.at/en/exhibitions/monet/

 

展示作品は欧州&米国の美術館所蔵作品が中心であり、目玉作品が国立西洋美術館《舟遊び》であったのが私的に嬉しかった

で、展示作品の中に、その年の春に訪れたばかりのバイエラー財団美術館《睡蓮》も展示されていた。うかつにもバイエラー作品だとは気が付かず、「私好み💛」として写真を撮っていたのだ

クロード・モネ《睡蓮》(1916-1919年)バイエラー財団美術館

バイエラーで観た時より好印象で、より色彩の深みも増し、睡蓮の花と葉の緑のコントラスト、池面に映る空の表情も鮮やかなような気がした。

何故なのか??

バーゼルにあるバイエラー財団美術館は建築家のレンゾ・ピアノによる設計で、館内には自然光があふれていた。

・公式サイト:https://www.fondationbeyeler.ch/startseite

館内の広い展示室の一面に、モネ作品は並んでいた。

3枚並びの右端の作品が《睡蓮》である。

クロード・モネ《睡蓮》(1916-1919年)バイエラー財団美術館

自然光の中で近接し、モネの筆致をしみじみ味わうことができた。多分、モネが描いたジベルニーの光の色彩そのままなのかもしれない。睡蓮池の水面に移ろう光と色彩を留めようとしたモネの筆致が鮮明なのである。

で、写真を比較しながら「何故なのか??」が了解された。

バイエラーの《睡蓮》はキャンバスそのままあり、かつ、自然光の中で展示されていた。一方、アルベルティーナの《睡蓮》は額装され、照明の下で展示されていた。要するに、額装と照明の効果が了解されたと言うべきなのかな?

どちらが良いとかは関係なく、両方観ることができたのはラッキーだったと思う。自分の場合だが、自然光では客観的に見がちであり、効果を高めるための照明の下では「鑑賞」がちかもしれない。好きな作品ならどっちでも観ていて嬉しいものだしね


東北大学MOOCのオンライン公開講座(無料)。

2024-07-20 19:49:53 | 西洋絵画

NTTドコモGACCOの一環で、東北大学MOOCのオンライン公開講座(無料)が全国区で受講できるようだ。

https://gacco.org/tohoku/#menu02。

興味津々なのが…2024年10月9日から開講する尾崎彰宏先生の「静物画のスペクタクル」。

https://lms.gacco.org/courses/course-v1:gacco+ga193+2024_10/about

※紹介動画:https://www.youtube.com/watch?v=PaeysXwEkPw&t=2s

オンライン講座なので、自宅でPC・スマホを使い、好きな時間に受講できるのが便利。ということで、早速申し込んでしまった

ご興味のある方にもお薦めかも


日経新聞(美の粋)「ルネサンス期の聖母像(1)ボッティチェリ」(^^;

2024-01-07 21:14:32 | 西洋絵画

今日(1/7)付の日本経済新聞(日曜版)見開き「美の粋」にボッティチェッリ図版が溢れていたので驚いた

「14~16世紀のルネサンス期、イエス・キリストの母マリアを描いた聖母像は身近な人物へと変化した。ボッティチェリ、ペルジーノ、ラファエロ、ティツィアーノという4人の画業を通してその変化をたどってみよう。」とのことで、第1回目が「ルネサンス期の聖母像(1)ボッティチェリ」だったようだ。

4人の画家の選定基準はよくわからないけど(少々面白みに欠けるかも)、ベルリンの《バルディ家祭壇画》が登場したので文句は言わないことにした

ボッティチェッリ《聖母子と二人の聖ヨハネ(バルディ家祭壇画)》(1484-85年)ベルリン国立絵画館

記事に「聖母の硬い表情はイエスの受難、聖者の殉教を予想しているためかと思いきや、実は禁欲的なサヴォナローラの影響もあるのかもしれない」とあり、私的に、へぇ~、だった。

美術ド素人眼にはサヴォナローラの影響が現れる前の作品だと思われるのだけどね。それこそウフィッツィ《受胎告知》(1489-90年)と比べても違いがわかるし...。


プラド美術館のカラヴァッジョ《ダヴィデとゴリアテ》修復完了&展示再開。

2023-12-21 10:32:40 | 西洋絵画

プラド美術館所蔵のカラヴァッジョ《ダヴィデとゴリアテ》の洗浄&修復が完了し、展示が再開されたようだ。(Fさん情報に感謝!!)

https://www.museodelprado.es/en/whats-on/new/the-museo-del-prado-is-displaying-its-magnificent/85b7358d-8dd3-237e-a820-8212cb308453

※修復動画:https://www.youtube.com/watch?v=oiw7erUJ6_U

下↓の写真は修復前の姿。プラド美術館...また訪れたいなぁ

カラヴァッジョ《ダヴィデとゴリアテ》(1597-98年)プラド美術館


カラヴァッジョのモデル《Fillide(フィリーデ)の肖像?》展示!

2023-08-16 17:19:51 | 西洋絵画

ボローニャのFさんからレプブリカ紙の記事を送っていただいた。(Grazie!!>Fさん)

記事はこれから読む予定であるが、とりあえず、その内容をサクッと...

https://www.repubblica.it/cultura/2023/05/11/news/fillide_melandroni_caravaggio_amante_scoperta-399703457/

カラヴァッジョお気に入りのモデルであるフィリーデ・メランドローニは、《ホロフェルネスの首を斬るユディット》などのいくつかの作品に登場しているし、彼女の風貌は失われたベルリンの肖像画の白黒写真で私たちも良く知るところである。

カラヴァッジョ《フィリーデ・メランドローニの肖像》(1597年頃)(元)カイザー・フリードリッヒ美術館(1945年焼失)

なんと!そのフィリーデの新たな肖像画とされる作品が発見され、5月~7月までパラッツォ・バルベリーニで展示されたようだ。果たしてカラヴァッジョの手によるものかは不明であるが、帰属させたいと思っている研究者も多分いる模様

17世紀初頭にローマで活躍した画家《若い女性の肖像》個人蔵(80 x 65cm, キャンバスに油彩)

※ご参考

http://www.arte.it/notizie/roma/un-inedito-a-palazzo-barberini-%C3%A8-la-fillide-di-caravaggio-20403

さて、作品調査がなされているとは思うが、果たしてどのような結論(?)になるのか、私的にも興味津々である。


リュイス・ダルマウ《(バルセロナ)市参事会員の聖母》。

2023-08-12 23:37:36 | 西洋絵画

イスパノフラメンコ様式についてちょっと知りたいと思い、「スペイン美術史入門」(NHKブックス)をサクッと読んだ。

https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000912512018.html

で、興味深かったのは(第二章のP141-P142をサクッとまとめると)…

ヤン・ファン・エイクはフィリップ・ル・ボンの使節団の一員として、1428年から29年にかけての10か月間、ポルトガルとスペインに滞在した。しかし、イザボーの肖像画を除き、ヤンが旅の間に何らかの作品を制作した痕跡はなく、ヤンと現地の画家たちとの接触を裏付ける記録も残されていない。したがって、来訪をイスパノフラメンコ様式誕生の要因とみなすことはできない。むしろ、この様式を生んだ当時のスペインとフランドルとの緊密な関係性の象徴ととらえるべきであろう、とのこと。(ちなみに、第二章の著者である松原典子氏は、イスパノフラメンコ作品はヤンの技法よりも、むしろロヒール・ファン・デル・ウェイデンに着想源を求めている、と見ている。)

ヤンとの直接的な接点を持ったという意味で例外的なのは、イスパノフラメンコ様式の最初期の画家リュイス・ダルマウ(Luis o Lluís Dalmau,バルセロナで1428-1461年活動)である。彼はアルフォンソ5世の命により、1431年から5年間フランドルに滞在し、ヤンの工房に迎えられた。ヤンが《ヘント祭壇》の仕上げにかかっていた時期と重なっている。ダルマウが帰国後にバルセロナ市庁舎の礼拝堂を飾る祭壇画として描いた《市参事会員の聖母》は本場での油彩画技法の習得修行の成果を示し、ヤンの作品からの引用も見て取ることができる、とのこと。

ということで、画像を探して見ると...本当にそうだった...

リュイス・ダルマウ《市参事会員の聖母》(1443-45年頃)カタルーニャ美術館

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Dalmau_Mare_de_Deu_dels_Consellers.jpg

拡大してみると、合唱天使たちがそっくりで(;'∀')、ダルマウはヤン工房でちゃんと修行したのだなぁと、なんだかほっこりしてしまったのだった

ちなみに、カタールニャ美術館には以前行ったことがあるのだが、観た記憶が無いのが残念と言うか...


《グリッフォーニ祭壇画》。

2023-08-04 23:29:06 | 西洋絵画

ロベルト・ロンギ「フェッラーラ工房」でも言及されている、フランチェスコ・デル・コッサとエルコレ・デ・ロベルティによる《グリッフォーニ祭壇画(Il Polittico Griffoni)》(1472-73年頃)は、ボローニャのサン・ペトロニオ大聖堂内のグリッフォーニ礼拝堂の祭壇画だったが、後に分割され、現在は世界各地の美術館に分かれて所蔵されている。

※ご参考:https://it.wikipedia.org/wiki/Polittico_Griffoni

この分割された《グリッフォーニ祭壇画》をボローニャの地に結集・再構成を試みる展覧会が、2020年-2021年にかけて、ボローニャのパラッツォ・ファーバで開催された。(私は当然観ていません

「La Riscoperta di un Capolavoro: a Bologna la mostra dedicata al Polittico Griffoni 」( Palazzo Fava)

「La Riscoperta di un Capolavoro(傑作の再発見)」は、イタリア・ルネサンスの最も重要で独創的な作品の1つであるフランチェスコ・デル・コッサとエルコレ・デ・ロベルティによる《グリッフォニ祭壇画》をボローニャの街に持ち帰るための、特別な展示会であり、完全に例外的なイベントです。」

※展覧会動画:https://www.youtube.com/watch?v=6LRBUrJdL4s&t=2s

※展覧会紹介記事:http://www.arte.it/calendario-arte/bologna/mostra-la-riscoperta-di-un-capolavoro-il-polittico-griffoni-64129

フェッラーラのスキファノイア宮で一緒に仕事をしたコッサとロベルティが、再びボローニャでタッグを組んだ祭壇画であり、私的に断片のいくつかを各地の美術館で観ていたものの、この展覧会を観逃したのはとても残念である


サザーランド《チャーチルの肖像》。

2022-12-25 23:24:31 | 西洋絵画

Netflixで「クラウン」の第2シーズンを見ていたら、グレアム・サザーランド(Graham Vivian Sutherland,1903 -1980)が登場した。彼がチャーチルの肖像画を描き、秘書が(妻も承認する)その絵を燃やすという、実にドラマチックなシーンが印象的だった。

https://en.wikipedia.org/wiki/Portrait_of_Winston_Churchill_(Sutherland)

この失われた《チャーチルの肖像》を見ていると、ほぼ同じ頃(1953年頃)ベーコン(Francis Bacon,1909 -1992)も《インケンティウス10世》シリーズを手掛けており、何やら権力者への眼差しが重なるような気もしてくる

更に興味深いのは、ベーコンとルシアン・フロイト(Lucian Freud, 1922 - 2011)も親しかったことである。

https://www.afpbb.com/articles/fp/2530388

2007年キンベル美術館で「The Mirror and The Mask(鏡と仮面:ピカソの時代の肖像画)」展を観た時、現代美術苦手の私にもベーコンからフロイトへの流れが違和感なく了解できた理由がわかったような気がした。

https://kimbellart.org/exhibition/mirror-and-mask

ということで、思いがけず、この時代の英国の現代美術の方向性を改めて思いめぐらすことのできた《チャーチルの肖像》であった。(って、現代美術苦手が何を言う?なのだけどスミマセン)