花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

東京都美術館「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」に思うこと。

2013-04-23 01:23:01 | 美術館
東京都美術館で4月23日(火)から「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」が始まる。東美サイトを見ると、正式名称は「ミラノ アンブロジアーナ図書館・絵画館所蔵 レオナルド・ダ・ヴィンチ展-天才の肖像」(長ったらしいこと(^^;)だから、去年ミラノで観た展覧会の拡大ヴァージョンなのだろうと思う。《音楽家の肖像》などの絵画と『アトランティコ手稿』が並ぶはずだ。


アンブロジアーナ絵画館

しかし、私的には「う~ん」と少々複雑な心境になってしまったのだった...。

ミラノではアンブロジアーナ図書館(Bibliotaca Ambrosiana)の方に絵画も手稿も展示されていた。


アンブロジアーナ図書館

絵画は閲覧室の隣の部屋にさりげなく展示されていたが、『アトランティコ手稿』は閲覧室書棚を背景に、ページ別に透明スタンドケースに入れられ立ち並んでいた。天井までびっしりと詰まった書棚には古色漂うモロッコ革本なども見え、この図書館の歴史が凝縮されているようにも思えた。ナポレオンによる収奪を含め、紆余曲折の歴史の中で『アトランティコ手稿』は守られてきたのだろう。参考動画→ここ

図書館は決して暗くはなく、入場者も少なかったし、若い係員たちのイタリア特有の大らかさも気持良く、ゆっくりと一枚一枚眺めることができた。かつて森美術展で観たビル・ゲイツ所蔵のレスター手稿展示(暗闇にほんの一瞬の照明)とは段違い。だからこそ、また展示室が暗いんじゃないかと心配になる。あ、もちろん、今回の展示はミラノとはまた別ページの手稿だろうから、観に行こうとは思っている。

実はもうひとつ、アンブロジアーナの展示を思い出し、考えてしまったことがある。美術館@歴史建造物が多いイタリアだってミラノのパラッツォ・レアーレやローマのスクデリエ・デル・クイリナーレのようなホワイトキューブ的な展覧会は多い。しかし、図書館を使ったアンブロジアーナの展覧会は、展示物と呼応した雰囲気が濃厚に漂い、展示内容の歴史的意味が強く立ち上がってきたのだ。

例えば、2011年の春にローマのサンティーヴォ・アッラ・サピエンツァにある州立公文書館(Archivio di Stato,Complesso Monumentale di Sant’Ivo alla Sapienza)で開催された「ローマでのカラヴァッジョ(Caravaggio a Roma. Una Vita dal vero)」展も然り。公文書館の書棚を背景に、展示ケースの中のカラヴァッジョの生前の記録も生々しく、あのバリオーネ裁判の関連画家たちの絵画も一緒に展示されているものだから、余計に当時の状況が沸々と思い描かれるのであった。もし、ホワイトキューブ的な会場での展示だったら、あの時のゾクゾクするような興奮は無かったかもしれない。参考動画→ここ


サンティーヴォ・アッラ・サピエンツァ 中央教会はボッロミーニ設計 公文書館は左側建物2階


カラヴァッジョ関連資料(生の一次資料!)


左はオラッツィオ・ジェンティレスキ作品 右はバリオーネ作品

展示物の持つ魅力や歴史が最も生かされる会場で観るのが、観客にとっても展示物にとっても幸せなことなのだと思う。でも、西洋古典絵画を日本で観る場合はあきらめざるを得ないのだろうなぁ。。。せめて会場は暗くしないでね(^^;