花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

九州国立博物館 常設展(超サクッと感想)。

2024-08-19 21:29:57 | 美術館

九州国立博物館の建物は、東博や京博の重厚さとは異なり、意外にも明るく現代的な建物だったのが印象的だった。

常設展を観る前に、1階の「Mカフェ」で「長沢芦雪」展を観た後のホッとお茶タイムを。

さて常設展は、九州が古代から大陸や半島との交流が盛んだったから、その考古学的な遺物や大宰府を中心とした歴史遺物など、九州の歴史・経済・文化をザクっと一望できる見応えのある内容だった。

で、先ず目を奪われたのは豪華絢爛の色絵絵付けの皿や壺のシリーズっだった!!

さすが九州は有名な窯元が多いし、なるほどなぁ~と見入ってしまう。

で、もちろん長崎の出島貿易の輸出品として螺鈿漆器も多く作られたのは知っていたが、まさかフリーメーソン柄まであるのには驚いた。フリーメーソン会員から受注した貿易品との事だが、江戸時代ならVOC(オランダ東インド会社)経由なのかな?

《フリーメーソン螺鈿箱》 (江戸時代 19世紀)九州国立博物館

刀剣類もかなり充実していた。その中に波紋の際立つ国宝の刀もあった。

国宝《刀 無銘則房》(備前 鎌倉時代 13世紀)九州国立博物館

でも、私的に目を惹かれたのは陶磁器類だった

重要文化財《灰被天目 虹天目》(南宋~元時代 13-14世紀)文化庁

で、なんと!東博からの展示品もあったのだ

《青磁管耳花入》龍泉窯 古川家伝来(南宋時代 12-13世紀)東京国立博物館

で、ほっこり気に入ったのは...縄文時代の壺型土器。

《壺型土器》(縄文時代 前20~前10世紀 )九州国立博物館

薄色と赤色の土で形成された土器で、その色彩とデザインがお洒落。解説では「縄文時代後期の東北地方を中心に分布する土器。胎土の白色と部分的な赤彩による赤白のデザイン性を高めた渦巻文や頸部の橋状取手が特徴的である。」とのこと。東北人の血が騒いでしまったかも(笑)。


福岡市美術館 常設展。

2024-04-21 17:12:50 | 美術館

前回から間が空いてしまったが福岡旅行の続きをば

福岡市美術館の常設展示は充実していて、さすがだなぁ!と羨ましくなってしまった。下の写真はロビーに展示されていた前川國男設計福岡市美術館の建築模型だ。

さて、常設展で特に楽しみにしていたのは松永コレクションだった。中でも久々の仁清《吉野山図茶壷》に目が喜ぶ。(展覧会で何度か観ていた

野々村仁清《色絵吉野山図茶壷》(江戸時代 17世紀)

この《色絵吉野山図茶壷》はMOAの《色絵藤花文茶壷》、出光の《色絵罌粟文茶壺》、東博《色絵月梅図茶壷》と並ぶ私的お気に入りの仁清茶壷であり、今回も360度ぐるぐる回りながら吉野山に咲き誇る桜を堪能してしまった

松永耳庵は茶人コレクターとして有名だから、茶事のお茶碗や掛け軸等にも目が惹かれる。柿蔕茶碗 「白雨」はいびつな風情が面白かった。

《柿蔕茶碗 銘「白雨」》(朝鮮王朝時代 16-17世紀)

 

尾形乾山《花籠図》(江戸時代 18世紀)   《王子型水瓶》(奈良時代 8世紀)

展示されていたのは松永コレクションの極一部だろうが、耳庵の目利きぶりも見ることができたような気がする。(もちろん資力あってこそだとは思うが

で、近現代コレクションの展示も面白く、下↓写真作品は時局的に心に響くものがあった。作者のショニバレのルーツはナイジェリアであり、女性の頭は地球儀、そして、アフリカンプリントのドレスを纏う。

インカ・ショニバレCBE《桜を放つ女性》(2019年)

そして、福岡市美術館の近現代コレクションの中でもやはり特筆されるのはダリ《ポルト・リガトの聖母》だろう。撮影禁止なので写真は撮れなかったが、下記の福岡市美術館URLをご参照あれ。

https://www.fukuoka-art-museum.jp/collection_highlight/2657/

以前、上野での「ダリ展」にも出展されていた記憶がある。ダリのシュルレアリスムは綺想を裏打ちする超写実力なのだと思う。大画面を間近で観るとその写実力に驚かされる。絵肌の滑らかさはまるで画題から滲む不穏さを包み隠そうとしているようにも思えた。

ということで、福岡市美術館では展覧会&常設館をしっかりと堪能できたのだった


【追記あり】マドリッド「Galeria de las Collecciones Reales(Patrimonio Nacional)」にカラヴァッジョ《サロメ》展示。

2023-06-28 21:31:52 | 美術館

マドリッドにスペイン王室コレクションを展示する新しい美術館「Galeria de las Collecciones Reales」が誕生し、カラヴァッジョ《洗礼者ヨハネの首を持つサロメ》もこの美術館で一般公開とのこと。(Fさん情報に感謝!!)

https://www.arte.it/notizie/mondo/un-caravaggio-a-palazzo-torna-al-pubblico-la-salom%C3%A9-dei-re-di-spagna-19127

※「Patrimonio Nacional」公式サイト

https://www.patrimonionacional.es/colecciones-reales

※【追記動画】:https://www.youtube.com/watch?v=Yuu1Gxv35Sw

カラヴァッジョ《洗礼者ヨハネの首を持つサロメ》(1608年頃)スペイン王室コレクション

※参考動画:こちらの動画にも《洗礼者ヨハネの首を持つサロメ》が 0:49頃 に一瞬登場する

https://www.youtube.com/watch?v=_nol1mikwvs

私もマドリッド王宮では観たことはなく、展覧会で観ているので、ようやく一般公開されるのは喜ばしい


東京国立博物館《花車図屏風》。

2023-01-12 19:47:53 | 美術館

多分、私は屏風絵が好きなのだと思う。やはり、今回の東博常設展示で一番目が惹かれたのも《花車図屏風》だった。四季の花々もだが、螺鈿蒔絵の車の漆黒が金地に実に映える。

《花車図屏風(6曲1双)》右隻(江戸時代・17世紀)東京国立博物館

《花車図屏風(6曲1双)》左隻(江戸時代・17世紀)東京国立博物館

https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0009745

「絢爛に金で装飾された花車(花見の車ともいいます)5輛それぞれに藤、牡丹、杜若、紫陽花、菊など、四季の花々を載せています。花車図は江戸時代はじめ、大名家の間で人気のあったモティーフで、主に狩野派の絵師たちによって描かれました。」(colbaseサイトより)

《花車図屏風(6曲1双)》右隻 一部拡大

咲き乱れる季節の切り花の数々が四季それぞれの花車に、それも螺鈿蒔絵の車なのだ!! 近寄って見てみると、本当に螺鈿細工が散りばめられた蒔絵として描かれていることがよくわかる。もしかして、昔の車(花車)には実際に蒔絵装飾が施されていたのかもしれない。東博には豪華な螺鈿や高蒔絵の鞍も展示されているが、車も一種の乗り物と見れば、装飾の美々しさを競う当時の心意気みたいなものが偲ばれる。

で、面白いのは、同じ17世紀、欧州でも花卉画が流行をみせているが、そこにはヴァニタス的意味合いが多分に含まれている。しかし、この日本の花車図は四季の花々と装飾デザインの豪華さをただただ愛でる風流趣味(大名趣味?)のように思えるのだ。

いずれにせよ、美しいものを見るのは目の喜びだよね


東京国立博物館《胴服 水浅葱練緯地蔦模様三つ葉葵紋付》。

2023-01-08 14:33:47 | 美術館

東京国立博物館で「国宝展」を観た後、当然、常設展も観た。ということで、サクッと感想を。2022年10月の時期、特に目が喜ぶ展示品がいくつかあった。

まずは、今年の大河ドラマの主人公である徳川家康ゆかりの《胴服 水浅葱練緯地蔦模様三つ葉葵紋付(辻が花染)》から。

https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/I-4270?locale=ja

《胴服 水浅葱練緯地蔦模様三つ葉葵紋付(辻が花染)》(安土桃山時代 16-17c)東京国立博物館

《胴服 水浅葱練緯地蔦模様三つ葉葵紋付(辻が花染)》背面

「現代の羽織の原形で、武士が普段着として小袖の上に着用した綿入れの上衣です。縫い締め絞りで地色と黄や萌黄の葉を染め分け、細い墨線による描絵で模様をあらわします。行徳における農民の争論を沈めた恩賞として、鷹師・荒井源左衛門威忠が徳川家康より拝領したと伝わっています。」(東博サイトより)

繊細な絞り染めの上に更に墨絵で描く「辻が花染」の技法が、デザイン的にも色彩的にも実にセンス良く、この《胴服》を格調高くしているように思えた。実際、この実用的かつ美しい《胴服》(綿入れ)を欲しくなっちゃったほど。ガウンとして寒い東北の冬にぴったりだわ

この《胴服》、徳川家康から拝領したからには、きっと家宝として大切にされてきたものだと思う。素敵な《胴服》なので、現代まできれいに保管されていて本当に良かったと思った。


国立新美術館が職域接種会場(^^;

2021-08-06 12:52:51 | 美術館

ご存知寄りのSさんからのメールによると、お嬢さん(クリエーター)のところに案内が来たそうだ。

「国立新美術館における文化芸術関係者向け職域接種の実施について」

https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/20210730.html

「文化庁は、文化関係独立行政法人とともに安全に文化芸術活動ができる環境を速やかに実現するため、国立文化施設を活用し、新型コロナウイルス感染症に係る文化芸術関係者向け職域接種を第1弾として国立劇場にて実施しております。

この度、第2弾として国立新美術館において文化芸術活動に携わる方(個人)を対象とした文化芸術職域接種を実施いたしますので、お知らせします。」(文化庁サイトより)

なるほど、国立新美術館が接種会場になるのね


クロイスターズ美術館(メトロポリタン美術館別館)。

2021-04-22 21:55:27 | 美術館

コメント話題に「クロイスターズ」が登場したので、すっかり懐かしくなり、思出話を少しばかり…。

「The Cloisters」はメトロポリタン美術館の別館であり、2004年にMETの展覧会「リアリティの画家(Painters of Reality: The Legacy of Leonardo and Caravaggio in Lombardy)」を観た折に併せて訪ねた。

https://www.metmuseum.org/exhibitions/listings/2004/leonardo-and-caravaggio

「クロイスターズ」の名を知ったのは、昔、兄の本棚でトマス・ホービング『謎の十字架』を見つけて読んだ時だ。当時は美術に関心も薄く(汗)、ミステリー小説のように読んだのだが、それでもいつかは観に行きたいものだなぁと思った。

クロイスターズはNY中心部から離れたハドソン川上流を臨む地にあり、MET本館近くからバスに乗り、小一時間ほどで着いた。クロイスターズの前にバス停があるので、往復バス利用は便利だった。

館内を見て歩くと...中世ロマネスクの礼拝堂まで移設したようで驚いてしまった

さて、お目当てはホービングの《十字架》だが、もちろんその後、美術鑑賞に目覚めたので(笑)ロベルト・カンピン《メロード祭壇画》と《一角獣のタピストリー》も楽しみだった。

《クロイスター・クロス》12世紀

同じセクションには、ランブール兄弟の《ベリー公のうるわしき時祷書》(多分実物?)も展示されていた。

ランブール兄弟《ベリー公の美わしき時祷書》(1399-1416)
 

ロベルト・カンピンと工房《メロード祭壇画》(1422年以降) 

思ったより小ぶりの祭壇画だったのが印象的だった。

ずっと観たかった、タペストリー《捕らわれた一角獣》(1495~1505年頃)

更に見て歩くと、「クロイスターズ」の由来である修道院風回廊に出る。

中庭には多種類のハーブが植えて有り、回廊の一角にあるカフェからも座って眺めることができる。何を飲んだのだっけ?やはり紅茶だったような気がする。ハーブティーもあったような…。(追記:もしかしてカフェは記憶違いも

クロイスターズからハドソン川の流れを眼下に見ながら、ロックフェラー2世の情熱があったからこその環境だなぁと思った。なんだか、歴史の浅い米国の欧州文化への切実な憧れが見えたような気もしたのだけどね

またゆっくりと訪ねたいが...困難な時代になってしまったのが本当に残念だ。


3月18日「フリック・マディソン(Frick Madison)」オープン。

2021-02-21 01:19:10 | 美術館

ニューヨークの「フリック・コレクション」は現在改装中であるが、2021年3月18日に一時的な(2年間の予定)移転先である「フリック・マディソン」を開館すると発表した。有名作品の殆どは「フリック・マディソン」に引っ越し展示されるようだ。

https://www.frick.org/press/frick_madison_open_march_18_2021

https://www.frick.org/madison

読書室も予約利用できるようで良かったね。って、このコロナ禍では行けないけど

上の写真は「フリック・コレクション」本館。N.Y....ご無沙汰してるなぁ...。


宮城県美術館「増築しない現地改修案」で方針転換!!

2020-11-16 12:28:22 | 美術館

昼のNHKニュースによると、宮城県知事は「宮城県美術館移転案」問題に対し、「増築しない現地改修案」で方針転換したとのこと!!

コスト比較(「新築移転案」、「現地増築改修案」、「増築しない現地改修案」)した結果、「増築しない現地改修王」が一番コストがかからないから、とのこと。

私的感想だが、理由にコスト比較を挙げているが、県民の反対が多かったからというのが実情だったのではないかと思う。県民に諮らず勝手に移転案を進めようとするとこうなるのよね。県民を甘く見ないでよねっ(ふんっ)。

「現地増築改修案」(2018年に策定された美術館リニューアル基本方針案)がベストなのだけど、取りあえずは「新築移転案」が中止になったことを喜びたい。


国立西洋美術館がスルバラン《聖ドミニクス》購入。

2020-07-14 01:27:51 | 美術館

ゲストの山科さんのブログで、国立西洋美術館がフランシスコ・デ・スルバラン《聖ドミニクス》(1626-27)を新規購入したことを知った。

https://twitter.com/NMWATokyo/status/1281028609692463105

http://collection.nmwa.go.jp/P.2019-0001.html

2019年10月の購入で(取得額は638,383,300円)、2020年7月7日から常設展示されているようだ。

フランシスコ・デ・スルバラン《聖ドミニクス》(1626-27年)国立西洋美術館

ちょうど「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」でスルバラン《アンティオキアの聖マルガリータ》が展示されているはずだが、《聖ドミニクス》はサイト画像を見る限り《聖マルガリータ》に負けない質の高さを感じる。私的には国立西洋美術館は良い買い物をしたと思う。

ちなみに、《聖ドミニクス》とほぼ同じ頃に描かれた大好きなスルバラン作品がある。ハートフォードで観て、フェッラーラで再会した《聖セラピウス(セラピオ)》だ。衣文の質感描写が似ているように思える。

スルバラン《聖セラピウス(セラピオ)》(1628年)ワズワース・アシニウム美術館

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:San_Serapio,_por_Francisco_de_Zurbar%C3%A1n.jpg