2019年がもうすぐ終わろうとしている。年末に当たり、今年観た展覧会のなかで特に印象的だった初見作品をいくつかピックアップしてみたいと思う。(名古屋「カラヴァッジョ展」は意図的に除外したので、念のため)
・「Utrecht, Caravaggio and Europe」展(ユトレヒト・セントラル・ミュージアム)
ヘンドリク・テル・ブリュッヘン《受胎告知》(1629年)ディースト市立美術館
受胎告知を受ける聖母マリアの白い面差しと淡い衣装が美しい作品で、画面をテル・ブリュッヘンらしい金襴織布が引き締めている。驚いたのはかなり大きな祭壇画だったことで、イコノクラスムを経た当時のオランダで大型祭壇画の仕事を受注する機会は貴重で珍しいかったのではないか?と思ってしまった。
・ 「Treasury!」展( エルミタージュ美術館アムステルダム分館)
ローヒール・ファン・デル・ウェイデン派(?)《聖母を描く聖ルカ》(1475-1500年頃)エルミタージュ美術館
観た瞬間驚いてしまったが、子細に観るとはやり何やら違うのだ。ボストン美術館のオリジナル作品を観ているので、この複製作品の大味な物足りなさが残念である。複製作品はエルミタージュ作品の他にも複数存在するようで、当時のフランドルでは好まれた主題作品なのだろう。構図自体もヤン・ファン・エイク由来だしね。ちなみにエルミタージュ作品はボストン作品の上部を欠いている構図で、よりコンパクトで正方形に近くなっている。
ご参考用まで:下↓写真はボストン美術館のオリジナル作品
ローヒール・ファン・デル・ウェイデン《聖母を描く聖ルカ》(1435-1440年)ボストン美術館
・「ハプスブルグ展」(国立西洋美術館)
ジョルジョーネ《若者の肖像》(1510年頃)国立ブダペスト西洋美術館
胸に手をあてる若者が物憂げであり、ジョルジョーネらしい暗い背景から浮き上がるメランコリックな作品だと思った。毛髪部分の絵の具が剥落しているようだが、しかし...イケメンだわ。ジョルジョーネ作品は残っている作品数自体も少なく貴重だし、今回の来日で観ることができ嬉しかった!!
・「クリムト展」(東京都美術館)
グスタフ・クリムト《イザベラ・デステの肖像(ティツィアーノの模写)》(1884年)ペレシュ国立博物館
(絵ハガキから画像借用)
やはりクリムトって上手い!ティツィアーノ作品をよく観察しているし、その模写力も素晴らしい。しかし、クリムトがティツィアーノを模写しているなんて私的に意外過ぎて驚いた。まぁ美術史美術館に展示されているからであろうが、装飾的傾向のあるクリムトの作風のどこかにティツィアーノから吸収した部分はあるのだろうかね??
下↓写真はご参考まで:ティツィアーノのオリジナル作品
ティツィアーノ《イザベラ・デステの肖像》 (1535-36年)ウィーン美術史美術館
ということで、来年も興味深い作品に出合えればいいなぁと思っているうちに、大晦日になってしまった
皆さんも、どうぞ良いお年をお迎えください!!