碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

ラッパ屋「30周年記念」公演、開始

2013年11月04日 | 舞台・音楽・アート

ラッパ屋の30周年記念公演である「ダチョウ課長の幸福とサバイバル」が始まりました。

紀伊国屋ホールで10日まで。

私も近々駆けつける予定です。

2013年8月22日 藤圭子さんのこと

2013年08月22日 | 舞台・音楽・アート

藤圭子さん転落死 
自殺か 都内のマンション

二十二日午前七時ごろ、東京都新宿区西新宿六のマンション敷地内で、女性が血を流してあおむけに倒れているのを通行人が見つけ一一〇番した。警視庁によると、女性は歌手の藤圭子さん(62)。病院に搬送されたが、頭を強く打っており、間もなく死亡した。

新宿署によると、藤さんはTシャツに短パン姿。マンション十三階にある知人男性の部屋のベランダから、転落したとみられる。スリッパの片方がベランダ、もう一方が地上にあったという。争った形跡はなく、警視庁は飛び降り自殺を図ったとみて調べている。

藤さんは一九六九年に「新宿の女」で歌手デビュー。「圭子の夢は夜ひらく」の大ヒットで第一回日本歌謡大賞を受賞した。その後も「命預けます」「京都から博多まで」などのヒットを連発し、一九六〇年代終わりから七〇年代にかけ一世(いっせい)を風靡(ふうび)した。

R&Bシンガーの宇多田ヒカルさんの母親として若い世代にも知られ、二〇〇〇年代に発売した「藤圭子コレクション」が完売するなど再び人気を集めた。最近は歌手活動を休業していた。

(東京新聞夕刊 2013.08.22)



・・・・詳細はまだわからない。

ただ、「ああ、そういう亡くなり方をしたのか」と。

そして、不謹慎ながら、どこか意外という感じがしないのも事実だ。

「新宿の女」の藤圭子が、新宿で亡くなったんだ、まるで出発点に戻ったようだなあ、と思ったりもした。


1969年9月のデビュー曲「新宿の女」。

あれはインパクトがあった。

「凄み」みたいなものが半端じゃなかった。

だからラジオで最初に聴いた時、まさか18歳の女の子が歌っているとは思わなかった。




そうだ、五木寛之さんが、当時の彼女について書いた文章があったはずだ。

本を探してみる。

あった。

「風に吹かれて」に続く、第2エッセイ集「ゴキブリの歌」。

ここ収められている「艶歌と援歌と怨歌」だ。




毎日新聞に掲載されたのは確か1970年で、翌年に単行本化されている。

以下、抜粋してみます・・・・


藤圭子という新しい歌い手の最初のLPレコードを買ってきて、夜中に聴いた。彼女はこのレコード1枚を残しただけで、たとえ今後どんなふうに生きて行こうと、もうそれで自分の人生を十分に生きたのだ、という気がした。

歌い手には一生に何度か、ごく一時期だけ歌の背後から血がしたたり落ちるような迫力が感じられることがあるものだ。それは歌の巧拙だけの問題ではなく、ひとつの時代との交差のしかたであったり、その歌い手個人の状況にかかわりあうものである。

彼女のこのLPは、おそらくこの歌い手の生涯で最高の短いきらめきではないか、という気がした。

――中略――

ここにあるのは、<艶歌>でも<援歌>でもない。これは正真正銘の<怨歌>である。

(五木寛之「ゴキブリの歌」より)



・・・・「最初のLPレコード」と書かれているのは、デビュー曲をタイトルにしたアルバム『新宿の女/“演歌の星”藤圭子のすべて』だ。

「たとえ今後どんなふうに生きて行こうと、もうそれで自分の人生を十分に生きたのだ」という文章がすごい。

また、「この歌い手の生涯で最高の短いきらめき」という言い方にも驚く。

デビュー直後の18歳の歌手のことを書いたとは思えない。

まるで、それから先、45年の軌跡を予見しているかのようだ、というのは思い込みが過ぎるかもしれないが。

しかし、この五木さんの文章以上に、「藤圭子」の本質を突いたものを、他に知らない。


歌手・藤圭子。

享年62。

合掌。

伝説の「シティボーイズ」、ただいま公演中

2013年04月04日 | 舞台・音楽・アート

シティボーイズの公演『西瓜割の棒、あなたたちの春に、桜の下ではじめる準備を』を、「金曜オトナイト」の工藤プロデューサー、繁田アナウンサーと一緒に観てきました。

場所は、三軒茶屋の世田谷パブリックシアター。

ある年代以上の人はお分かりかと思いますが、シティボーイズは
一つの“伝説”であります。

その生きた伝説の舞台が観られるのは、オーバーに言えば(笑)、
同時代を生きる者として、こんなシアワセなことはない。

終演後、楽屋に大竹まことさんを訪ね、感想などお伝えしましたが、
60代に突入しても、なお、時代に向けた鋭い針と毒を、批判精神を失っていないこと。

それを、生身の舞台で展開していること。

いや、もうそれだけで、ちょっと感激、感動モノなのでした。


この東京公演は4月13日(土)まで。

その後、大阪、名古屋、北九州と回るそうです。

がんばれ、大竹さん!

がんばれ、シティボーイズ!




シティボーイズミックス PRESENTS
『西瓜割の棒、あなたたちの春に、桜の下ではじめる準備を』


約1年半ぶり、シティボーイズ待望の新作です。今回は作・演出を、3人も所属していた伝説的ユニット「ラジカル・ガジベリビンバ・システム」のメンバーである宮沢章夫が手掛けるという、うれしいサプライズ!
同じくメンバーのいとうせいこうも出演するなど、いやが上にも期待が高まる作品です

[作・演出] 宮沢章夫

[出演] 大竹まこと/きたろう/斉木しげる(シティボーイズ)
     中村有志/いとうせいこう/戌井昭人/笠木泉



2013年の「聴き初め」は、オスカー・ピーターソン

2013年01月02日 | 舞台・音楽・アート

2013年の「聴き初め」は、古いレコードプレーヤーで聴く、オスカー・ピーターソン。

これは弟のおかげです。

歯科医師である弟の趣味は、動かなくなった古いレコードプレーヤーを入手して、それを自分の手で修理し、そのプレーヤーと同じ時代のレコードをかけて楽しむ、というもの。

繊細な治療を行うその技術が、思わぬところに生かされているわけです。

実家には、アメリカ製のエジソン型から80年代の国産品までが並んでおり、すでに博物館状態(笑)。

そんなコレクションの中から、今回聴かせてもらったのが、80年代のビクターL-E3で聴くオスカー・ピーターソンでした。



CDは何枚も持っていますが、ジャンクの状態から甦ったプレーヤーによるレコードのオスカー・ピーターソンは、「おいおい別物かい?」と思うほどいい。

大学のある四谷には、有名なJAZZ喫茶「いーぐる」があって、時間があると寄るのですが、「いーぐる」の音ともまた違う、なんとも身近な感じの音なのだ。

親戚のおじいさんが、新年会で、一杯やりながら演奏しているような(笑)。


そうそう、最近見せて(&聴かせて)もらった中では、テレビとレコードプレーヤーが合体した「ステレオ・ビジョン 14-FP1」(三洋電機 1960年製)が、とても珍しく、また面白かったです。




テレビ・ラジオ付き電蓄orプレーヤー・ラジオ付きテレビ



これら弟のコレクションは、彼のブログで見ることも、また聴くこともできるので、興味のある方は、ぜひ、のぞいてみてください。

<浪漫紀行>
~昭和のなつかしいメロディを、当時のオーディオ機器で鑑賞します
http://keiai1515.blog51.fc2.com/



ラッパ屋の新作「おじクロ」が幕を開けた

2012年11月09日 | 舞台・音楽・アート

「おじクロ」である。

「ももクロ(ももいろクローバーZ)」ではない。

ラッパ屋の新作が「おじクロ」なのである。

しかも、まじで「おじさんクローバーZ」なのだ(笑)。

脚本・演出の鈴木聡さん、いわく・・・

「かなりヘビーだが笑ってみせる。それはももクロの少女たちの志でもあるが、ラッパ屋の芝居の志でもある。僕がももクロを好きになった一番の理由は、たぶんそれなんだな。大変な時こそ笑っていこう。今年、ももクロが人気になったのは、そんなこととも関係があるんじゃないかと思ってます」

・・・そうか、ももクロの「全力の魅力」の背後には、そんな意味があったのか(笑)。


そして、この新作芝居だ。

初日というのは役者さんも緊張するだろうが、ラッパ屋に20年来通っている私も緊張する(笑)。

でも、そこがまた初日の良さだ。

大田区にありそうな町工場が舞台。

不況下での経営は大変だ。

下請け中小企業の苦労は十分リアルで、笑いの中に苦さもある。

そして、この状況だからこそ、「かなりヘビーだが笑ってみせる」おじさんたちが愛おしい。

あっぱれ、「おじクロ」のパフォーマンスも期待以上だ(笑)。

笑って、手拍子を打ちながら、つい、ちょっと泣けてきたりして。

さすがラッパ屋だ。


開演前には、紀伊国屋ビル地下の「モンスナック」に寄った。

ここのポークカレーが好きだ。

紀伊国屋書店もしくはホールへ来た時の、学生時代から変わらない習慣みたいなものだから、もう35年以上もポークカレーを食べている(笑)。

昔、いつ入っても、名物ママさんがカウンターの奥にいて、いわばモンスナックの象徴みたいなものだったけど、今はもうその姿は見られない。

でも、細いコの字型のカウンターの椅子に座って、黄金色がスープに浮かぶポークカレーを食べていると、今が、どの時代なのか、ふとわからなくなる。

頃合いを見計らって、4階まで階段を上がった。

ホール入口の先では、いつものように脚本・演出の鈴木聡さん自ら、お出迎えだ。



ああ、今年もラッパ屋が見られた。

これで年が越せる(笑)。

鈴木さんに感謝しながら、客席へと向かった。

シワワセな時間だ。


芝居が終わってロビーに出たら、テレビマンユニオンの後輩である
小林正樹監督(映画「がんばっぺ フラガール!~フクシマに生きる。彼女たちのいま~」)に出会った。

こういう場所での再会も嬉しい。

そこに鈴木さんも加わって、しばし3人で談笑。

いい夜でした。


公演は18日(日)まで、新宿・紀伊国屋ホールです。

美と才能のピアニスト、アリス・沙良(さら)・オットを聴く

2012年10月30日 | 舞台・音楽・アート

渋谷のNHKホールへ。

NHK音楽祭2012「世界のマエストロ~輝ける音楽界の至宝~」。









NHK交響楽団、ロリン・マゼール(指揮)、アリス・沙良・オット(ピアノ)という組み合わせだ。

曲目は・・・・

ベートーヴェン/序曲「レオノーレ」第3番 ハ長調 作品72
グリーグ/ピアノ協奏曲 イ短調 作品16
チャイコフスキー/交響曲 第4番 ヘ短調 作品36

・・・・82歳だというマゼールだが、お元気で何より(笑)。

悠々たる指揮ぶりは、時にユーモアさえ交えて。

ステージ上を、腕を振り、大股で歩く姿もチャーミングだ(笑)。

そんなマゼールがお目当てだったのだが、グリーグの時のアリス・沙良(さら)・オットのピアノにびっくり。


1988年ドイツ人と日本人の両親のもとミュンヘンに生まれる。4歳から本格的にピアノを学び、5歳で最初のコンクールに入賞。1995年ドイツ連邦青少年音楽コンクール優勝を皮切りに、97年スタインウェイ国際、98年イタリア・リゲティ国際、99年ハンブルク音楽ホール、2000年グロートリアン・シュタインヴェーク国際、01年及び02年ミュンヘン・カール・ラング、03年リンダウ・ロータリー・ヤング・ミュージックの各コンクールで全て第1位受賞。2003年には権威あるケーテン・バッハ・コンクールで第1位と市長特別賞も獲得。2004年史上最高得点でイタリア・ピエネロ・デルヴァルティドーネ国際コンクール優勝、05年欧州ピアノ指導者連盟コンクールでも第1位桂冠。2003年からバイロイト音楽祭に招かれ、ワーグナー愛用のピアノでリサイタルを開催、06年リストの超絶技巧練習曲全曲を演奏して奇跡を成し遂げたと評される。ミュンヘンのヘルクレスザール、アムステルダムのコンセルトヘボウほか世界の主要会場で出演を行っており、ライプツィヒ・バッハ音楽祭、チューリッヒ音楽祭、ザルツブルク音楽祭、ルール・ピアノ音楽祭等著名フェスティバルへの招待も数多い。


クラシックの素人である私が聴いても、「こりゃ、すごいや」という見事な弾きっぷりでした。

しかも、なぜか裸足だし(笑)。

その指というか、腕というか、動き方がハンパじゃなく、しかも正確で。

「リスト:超絶技巧練習曲集」なんてアルバムを出しているのも納得です。

細い体なのに、ここぞってところでは超パワフルで、椅子からお尻が飛び上がるような感じで、鍵盤をぶっ叩く。


それに、噂以上の美形であります(笑)。

美と才能ってことで、最強?

出てくるんですねえ、こういう人が。

いいものを拝見、いや聴かせていただきました。








松たか子に圧倒される「ジェーン・エア」

2012年10月20日 | 舞台・音楽・アート



日生劇場で、松たか子主演のミュージカル「ジェーン・エア」を観た。

いやはや、自分でも、ちょっと困るくらい感動してしまった(笑)。

まず何と言っても、目の前で動き、語り、歌う、ナマの松たか子に圧倒されました。

これは、最もゴヒイキの女優さんだから仕方がないというだけでなく、実際に実力がないと、この役は難しいのだ。

シャーロット・ブロンテの、この長編小説が世に出たのが1847年。

165年前のイギリスだ。

時間的にも、空間的にも、はるか遠いはずの物語を、現代の観客がミュージカルとして観る。

ジェーンを古典・名作の中の女性としてだけでなく、“21世紀のヒロイン”として現出させることは、よほど強い存在感をもった女優でなければ出来ない。






舞台の上の松たか子は、完全にジェーンだ。

そこにすっくと立つだけでジェーンだった。

演技はもちろん、歌も素晴らしい。

「大空へと羽ばたくこと」を願う歌。

神を信じ、「許すこと」を自分に誓う歌。

その伸びやかな歌声を堪能した。

ミュージカルというのは、上手く入り込めないと悲惨だが、この作品には大没入(笑)。

今回、SP席(ステージプレミアシート)といって、舞台の上に設置された席で観ることができたことも大きい。

「舞台と客席の関係をより親密度の高いものにしたいというジョン・ケアードの演出意図から、舞台を客席に張り出し、ステージ上にも客席を設けます。出演者と同じ空間で臨場感溢れるご観劇をお楽しみいただけます」というものだ。

松たか子が、わずか3メートルの距離にいたりするわけで、これは衝撃でした(笑)。


日生劇場で、28日(日)まで上演中。




<このブログで書いた関連する文章>

東京新聞に、映画「夢売るふたり」のことを書きました
2012年09月20日
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/9258e63129865cac940f802d3c4be169

映画『夢売るふたり』の松たか子が、すごい
2012年09月11日
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/a1ed52cba07c924a10c2522530406a3a

アサヒ芸能で、「熟女優」をめぐる対談
2012年08月24日
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/96cc44344dff30a751fc65fae7bdfa1d

『週刊現代』の「決定!日本のいい女優ベスト20」に寄稿
2010年11月24日
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/024b1c568b7455d20780ad1a36c203f5

今、「いい役者」といえば誰なのか
2010年11月10日
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/2d5af96ecfea8374d9805b210817fd89

映画『告白』は、早くも今年の“マイ・ベストテン”入り
2010年06月06日
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/ff0cb64aba94f808d7c9a24d54ecd94b

る・ばる「八百屋のお告げ」の熟練個性派女優パワー

2012年03月03日 | 舞台・音楽・アート

東京は一日中、雨でした。

夕方まで大学で仕事をして、高円寺へ。

四谷から高円寺って、快速でわずか11分なのだ。


駅から数分のところにある座・高円寺で、<グループる・ばる>の芝居「八百屋のお告げ」を観た。

<グループる・ばる>は、松金よね子・岡本麗・田岡美也子という3人の女優さんによる演劇ユニットだ。

今回の作品は、ラッパ屋の鈴木聡さんの作。演出は、鈴木裕美さん。
再演です。

このユニットのために書かれたものなので、役柄が各人に完全にフィットしている。


よね子さんは熟年離婚で1人暮らし。子供たちはすでに独立している。

予知というか予言というか、何でも当てちゃう八百屋さんから、「あんた、もうすぐ死んじゃうよ」との “お告げ”があり、信じたよね子さんは落ち込んでしまう。

これ、「八百屋さん」ってところが、いかにも鈴木聡さんだ(笑)。

若い頃からの親友である美也子さん(旦那あり・子供なし)、麗さん(独身・不倫恋愛経験多数)が、よね子さんの家にやってきたことから、「最後の日」を共にすることに・・・・というお話です。

ここに訪問販売の男や、運送会社の男や、昔憧れだった男の息子やらも加わって、「ひとが死ぬということ」「生きるということ」が、笑いと涙の物語となって展開される。


彼女たちの年齢設定が56歳ということで、ほぼ私と同年代。

だから、舞台でのやりとりも、「ああ、わかるなあ」という共感がたくさんあった。

劇中、シュガーの「ウエディング・ベル」が歌われたのも、懐かしいやら、可笑しいやら。

というのは、かつて松金よね子さんに出演してもらったドラマの中で、
この曲が使われていたのだ。

当時も今も、よね子さんが登場するだけで、その場が「よね子空間」(笑)になるから、すごい。

しかも、そこに岡本さん、田岡さんという、これまた強力な女優さんが
ガッチリとからんでくるから、面白くないわけがない。

久しぶりで、そんな“熟練個性派女優パワー”を堪能しました。



           4日(日)まで公演中



ホイットニー・ヒューストンの歌声が

2012年02月14日 | 舞台・音楽・アート
(大学から見た新宿方面)

ここ数日、ラジオでホイットニー・ヒューストンの歌声を頻繁に聴いた。

「ああ、確かにいい曲がたくさんあったなあ」と、しみじみ思う。

亡くなった時に、ここぞという具合に、メディアからその人の曲が大量に流されるのって、まあ追悼なのかもしれないけど、逆にせつなかったりして。

映画「ボディガード」を見直してみたくなる。

そうそう、彼女が亡くなったホテルは、「ザ・ビバリー・ヒルトン」だったんだね。

だからナンだってわけじゃないけど。

ホイットニー・ヒューストン、享年48。

合掌。

ラッパ屋の新作『ハズバンズ&ワイブズ』は必見!です

2011年11月12日 | 舞台・音楽・アート

震災から8ヶ月の11月11日。

新宿・紀伊国屋ホールで、ラッパ屋の新作『ハズバンズ&ワイブズ』を観た。

公演の初日だ。

今回は特に早く観たかった。

いつもとは、ちょっと趣きが違う芝居になるのではないか、と思ったからだ。

一番のポイントは、“現実の出来事”を芝居の中に、はっきりと、くっきりと取り込んでいること。

しかも、それが「震災」であり、「津波」であり、「原発事故」なのだ。

とんでもない出来事だ。

芝居でこれらと向き合う。

しかもラッパ屋の基調であるコメディとして仕立て上げていく。

そんな作業が、難しくないはずはない。

下手をしたら、非難轟々である。

脚本・演出の鈴木聡さんは、この難題を、どうするのだろう。

私が心配しても仕方ないが、だから早く観てみたかった。

そして、観終わって、「やはり鈴木聡はトンデモナイひとだ」と脱帽した。

難題に挑戦して、見事にそれを実現していたのだ。

それどころか、芝居でしか伝えられない方法で、「3.11以後」の私たちの“生き方”にまで触れていた。

それでいて、これも大事なことだが、全体はいつものラッパ屋らしい「おまぬけなコメディだがキュンときてズンとくる」芝居(笑)になっているのだ。


紀伊国屋ホールで20日まで。

常套句みたいですが、必見!ではないでしょうか。

この芝居については、別途また書きます。



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公開シンポジウム
ギャラクシー賞「報道活動」を見て、
制作者と語る会 


●日時: 11月19日(土)午後1時~午後5時
(開場:午後12時30分)
●会場: 上智大学 9号館 249教室


キャンパスマップ
http://www.sophia.ac.jp/jpn/info/access/map/map_yotsuya

当日は土曜日で、新宿通りの北門は閉鎖のため、
土手沿いの正門から、お入りください。

●参加自由(資料費 500円)/申込不要
●主催: NPO法人 放送批評懇談会「報道活動」選奨委員会
●共催: 上智大学文学部新聞学科

全国各地の放送局から集まってくださる受賞制作者の方々、選奨委員会のメンバー、そして参加者の皆さんと一緒に、報道活動について語り合う場です。

当日は総合司会を務めさせていただきます。

ぜひ、ご参加ください。


舞台『わらいのまち』に笑って泣いて

2011年10月01日 | 舞台・音楽・アート

札幌の道新ホールで舞台「わらいのまち」を観た。

昼間お会いした宅間孝行さんの作・演出で、もちろん出演もしている。

お話は・・・・


何の名所も特産品もない寂れた田舎町の寂れた温泉旅館「まつばら」に国会議員の大関代議士が急遽、泊まりに来る事になった。明日から始まる町の未来を賭けた町おこしのイベントを視察する事になったのだった。

町おこしの実行委員長を務める「まつばら」の三男であり主人の信雄をはじめ、次男で板長の将雄、仲居のくにゑ、真知子も大喜び。

それもそのはず、町 おこしのイベントを視察して、しっかりしたモノだと認められれば、町おこしの資金が県の予算に組み込まれるよう大関先生が口を聞いてくれるというのだ。

明るい未来を見出せるとあって、大関先生に好印象を与えようと張り切る「まつばら」の面々だったが、そこに不吉な知らせが舞い込む。長男の富雄が町に帰って来てるらしいというのだ。

「疫病神」とあだ名される富雄はヤクザもの。しかも権力が大嫌い。とにかく大関先生と富雄が鉢合わせしないようにと大慌ての「まつばら」の面々。しかし行き違い、勘違いの交錯で話はとんでもない方向へ・・・。



・・・・東宝セレソンDXの芝居を観るのは初めてだ。

出演は宅間さんの他に、片桐仁、岡田義徳、田畑智子、柴田理恵など。

いやあ、予想を大幅に超えて(笑)面白かったです。

脚本がよく練られていて、小さな「行き違い・勘違い」の連続のせいで、混乱がどんどん加速していくプロセスが笑える。

このタイプの芝居は、ややもすれば“やり過ぎ”で困ったことになったりするが、程よい抑制が効いていて、嫌な笑わせ方になっていない。

何より、笑いの底に、日本のあちこちの地方で見られる沈滞化・空洞化をめぐる社会批評がある。

しかも、批評自体が目的ではなく、「今こそ笑って元気に!」というスタンスなのがいい。

そういうわけで、“読後感”も上々でした。


残りの札幌公演は、今日(1日)と明日(2日)。いずれも13時と18時の2回。

その後は名古屋、大阪、広島、福岡とツアーが続くそうです。



歯医者さんとアナログプレーヤーのシアワセな関係

2011年04月13日 | 舞台・音楽・アート

信州で歯医者さんをしている弟が、発売中の『サンデー毎日』に登場している。

しかも、専門の歯科医療の話(かなり優秀な歯科医なのです)ではなく、趣味であるところの「アナログプレーヤー」のマニアとして、である。

巻末にある、カラーグラビア「ON and OFF」のコーナー。



以前から、古いオーディオ機器(動かないものが多い)を入手して、時間をかけて自分で修理し、その機器が作られていた時代のレコード(このコレクションもすごい)を聴く、というのが、弟の楽しみなのだ。

特に入れ込んでいるのは100年前のエジソン蓄音機だったりする。

私も帰省するたびに、“新作コレクション”を見せてもらい、音を聴かせてもらう。

たとえば、70年代の音楽を、70年代のオーディオ機器で聴く。

当時は当たり前のことだったわけだが、今や貴重な異次元体験(笑)。

いや、これが実にいいのだ。



少し前から、そのコレクションの一部を、「昭和のなつかしいメロディを、当時のオーディオ機器で鑑賞する」というコンセプトのブログで公開している。

浪漫紀行
http://keiai1515.blog51.fc2.com/


このブログが『サンデー毎日』の記者さんの目にとまり、今回のグラビア登場となったようだ。

弟は、誌面で「(動かないジャンクであっても)同じ品を3台入手すれば、完全作動品が一台できる」と言っている。



歯科医としての“腕”が趣味にも生かされた(笑)、シアワセなオーディオ・マニアなのだ。

というわけで、興味のある方は、ぜひ本誌と弟のブログをご覧ください。





(サンデー毎日 2011.04.24号)

ラッパ屋『凄い金魚』の迫力がすごい

2011年03月16日 | 舞台・音楽・アート

新宿から高円寺へ。

まだ新しい小屋「座・高円寺」で、ラッパ屋公演『凄い金魚』を観た。




驚いたのは、開演前に、脚本・演出の鈴木聡さんからの「ご挨拶」があったこと。

20年近く、ずっとラッパ屋を観ているが、初めてのことだ。

鈴木さんいわく・・・・

「震災の影響で、都内のさまざまな芝居や音楽会やイベントが中止となっています。

けれども、こういう時だからこそ、ほんのいっときでも、ラッパ屋の芝居を観ていただき、笑って、少しだけ元気になってもらえたら、と思います。

芝居には、そういう役割、使命もあるのではないか。

余震もあり、交通の便も悪い状況の中、こうして足を運んでくださった皆さんに感謝します」

・・・・といった内容でした。

続いて、制作の山家かおりさんから、

「この観客席は特設のため、皆さんがどっと笑ったりすると揺れます。

ぜひ地震と間違わないでください。

本物の地震の場合は、舞台の上の照明機材が、カチカチと音をたてて揺れます。

そうなった時は、しっかり係員が誘導しますので、皆さん落ち着いて、それに従ってください。

本日は、ありがとうございます」

・・・・てな、お話でした。

客席は7割の入り、といったところ。

でも、お二人のご挨拶のおかげで、一体感ばりばりになりました(笑)。

そして、余震も、交通の便もかえりみず駆けつけたラッパ屋ファンたちの気持ちに応える形となった舞台は、それはもう迫力いっぱいでした。

何度目かの上演だが、観るたびにバージョンアップされている『凄い金魚』。

何度も笑って、やっぱりちょっとほろりとして、大満足の舞台でした。

ちなみに、帰りの地下鉄が地震のため途中で止まったりしましたが、芝居の余熱で苦になりませんでした。

『凄い金魚』は、予定通りであれば、21日(月)までやっています。


ラッパ屋第37回公演『凄い金魚』

会場:座・高円寺1
http://za-koenji.jp/detail/index.php?id=414

<脚本・演出>
鈴木聡

<出演>
福本伸一、おかやまはじめ、木村靖司、弘中麻紀、岩橋道子、俵木藤汰、大草理乙子、宇納佑、熊川隆一、岩本淳、中野順一朗ほか

<口上>
家族や親せきが集まる通夜の晩の、リアルな日常と、急に訪れるへんてこりんなドラマ。1996年に初演した、ラッパ屋の「原点」とも言える本作を、現代の私たちにぴったりくる新演出でお届けします。




ラッパ屋の舞台『YMO~やっとモテたオヤジ』が面白い

2010年12月22日 | 舞台・音楽・アート

新宿紀伊国屋ホールへ。

お待ちかねのラッパ屋『YMO~やっとモテたオヤジ』だ。

紀伊国屋ホール、ちょっと久しぶり。

隣の席に女優の松金よね子さん。

以前、松本伊代ちゃん主演のドラマでお世話になりました。

黒のセーター、素敵です。

斜め後ろの席には、熊谷真実ちゃん。

真実ちゃん(何歳になろうと、私はそう呼んでいます)のことを、今は亡き渡辺文雄さんは「金魚」にたとえていました。

私を見つけて、笑顔で手をひらひらさせる真実ちゃんは、まさにキレイな金魚でした(笑)。


そんなこんなで、開演です。

56歳のサラリーマン、バツイチ、頭髪薄め、加齢臭ありのオヤジが恋をする。

相手は41歳。立派な年の差恋愛だ。

しかし、そこはラッパ屋。そう簡単に恋は成就しないぞ(笑)。

社内の派閥争い、出世競争、別れた女房の再婚、娘の恋愛・・・・

まあ、いろいろあるよ、この年齢になれば。

でも、とにかくオヤジの恋だ。

がんばれオヤジ、負けるなオヤジ(笑)。

サラリーマンを描かせたら、鈴木聡さんの脚本・演出は、もはや円熟の域に達しており、この作品はその集大成、一つの頂点を示すものかもしれない。

いや、それくらい面白いのだ。

近年のラッパ屋の中で、ワタクシ的には最高です。

俵木藤太(たわらぎ・とうた)さん、初の主演。いい味、出てます。

紀伊國屋ホールで12月26日まで。

その後は2011年1月8・9日 北九州芸術劇場・小劇場。



鈴井貴之:作・演出の舞台『CUT』を観た。

2010年10月20日 | 舞台・音楽・アート

久しぶりの“ゆりかもめ”、久しぶりの先頭車両“かぶりつき”で(笑)、青海へ。



観覧車はここにあるんだねえ(笑)。



Zepp Tokyoで、鈴井貴之:作・演出の舞台『CUT』だ。

鈴井さんといえば、大泉洋さんと組んでのHTB「水曜どうでしょう?」が有名だが、舞台へのこだわりは半端ではない。




《ストーリー》
10年前に作られた映画「青い空の果てに」。当時はたった1週間で打ち切りになってしまったこの映画。誰の記憶にも残らず消えてしまった映画だった。

その映画のプロデューサー河東は、その消えた映画をリメイクしようと必死だった。商品化される映画作品の中で、河東は本物の映画を作ろうとしていた。心に残る映画を。

ベストセラー原作でもなく、人気コミックの映画化でもない。人気俳優が出るわけでもない地味な作品には、問題が山積みだった。不況の時代にヒットの可能性が少ない映画に資金を出してくれる会社はあるのか。

出資会社の社員の愛人問題、脚本家の恋愛問題、この映画を過去に見て感銘し、この道の進んだ若い助監督達、落ちぶれようとしている女優とマネージャーの将来は、そこに現れる女優の所属する会社の社長の思惑は。果たしてこの映画「青い空の果てに」は完成できるのか・・・。

◆作・演出:鈴井貴之 ◆出演:宇梶剛士、田中要次、野間口徹、増沢望、諏訪雅(ヨーロッパ企画)、土佐和成(ヨーロッパ企画)、木下智恵(北区つかこうへい劇団)、占部房子、納谷真大 ・ 鈴井貴之


この『CUT』、テレビと違うのはもちろんだが、いわゆる演劇、いわゆる舞台とも一味違うものになっていた。

映像の使い方などかなり実験的な表現があって、鈴井さん本人は「ライブエンターテインメント」と呼んでいるそうだ。

「ああ、こういうことがやりたかったんだ」とよく分かった。

そして、私には、鈴井さんの演出が、ちょっとテレているように見えた。

きっとシャイな人なのだ。

でも、テレずに、もっとかましちゃえばいいと思う(笑)。

役者では、木下智恵、占部房子の女優陣がいい。


東京公演は22日まで、Zepp Tokyoです。