碓井広義ブログ

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「紅白歌合戦」歌う側へのリスペクトは?

2025年01月12日 | 「毎日新聞」連載中のテレビ評

 

 

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「紅白」あなたへの歌 

歌う側へのリスペクトは?

 

昨年の大みそかに放送された第75回「NHK紅白歌合戦」。1953年から始まったテレビ中継も70年を超えた。しかし、近年はずっと「曲がり角」が続いているように思う。

特に記憶に残っているのは2015年だ。内外のヒットコンテンツの援用が目立った。アニメコーナーが設けられ、民放のアニメ番組のテーマ曲が映像と共に流された。

また、今や定番となったディズニー・ショーも。ミッキーのキレのいいダンスは見事でも、年始客の獲得を目指す東京ディズニーランドのPRにしか見えないのが残念だった。

この時点で大きな課題を抱えていたのだ。改めて1年を締めくくる音楽番組という原点に立ち返るか。それとも、何でもありの音楽バラエティーとして喧騒(けんそう)を続けるか。「紅白歌合戦」という伝統枠そのものについて、根本から検討する必要があるのは確かだった。

そんな中で健闘していたのが22年の第73回。最大の理由は改革への動きが見えてきたことだ。本来は優劣など付けられないはずの歌。それを「歌合戦」と称して男女の対抗軸を作り、無理に勝負させることへの違和感があった。

その合戦色が薄まっていた。以前のような「戦況」や「優勢」を伝える「中間発表」はなかった。結果的に白組勝利だったが、「優勝旗の授与」や白組リーダーの「勝利コメント」もなかった。「紅白歌合戦」という番組の構造がようやく変わり始めたのがこの年だ。

そして昨年のテーマは「あなたへの歌」。さまざまな視聴者に対応した、多様性のある「紅白」という設定だ。しかし、演歌勢には企画モノをかぶせてくる演出が目立った。

三山ひろしや水森かおりが歌う姿はワイプ処理で、メインの映像はけん玉やドミノだ。坂本冬美も石川県輪島市に出張して住民の方々と握手しながらの歌唱だった。

能登半島地震から1年というのなら、番組も能登一色でやってもよかった。演歌の歌い手は企画抜きでは歌わせてもらえないのかと思ってしまうような扱いだ。

一見、多くの「あなたへの歌」が並んでいた。だが、GLAYは「誘惑」で、THE ALFEEは「星空のディスタンス」、南こうせつは「神田川」というのが制作側の認識だ。全体的に歌い手へのリスペクトは低く、生演奏も少なめだった。

男女に分ける「紅白」も、競い合いの「合戦」も、実際はかなり変容してきている。今年は放送100年。この節目を機に、タイトルはもちろん、番組の存在意義やコンセプトを練り直してもいいのではないだろうか。

(毎日新聞 夕刊 2025.01.11)

 


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