碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

淀川長治さん「最後の講演」のこと

2008年04月22日 | 日々雑感
WOWOWインターネットラジオにゲスト出演し、
その配信が始まっている。

番組は
映画コメンテーターの有村昆(通称・アリコン)さんが
パーソナリティを務める『アリコンMOVIEパラダイス』だ。

WOWOWは当然のことながら映画専門の衛星放送であり、
インターネットラジオは
一種の”販促ツール””PRツール”として活躍しているが、
この『Mパラ』は純粋なラジオ番組としても、なかなか楽しめる。

収録は表参道にある某マンションの地下のスタジオで行われた。
ラジオ局のアナウンス・ブースより小ぶりではあるが、
パーソナリティとゲストがわずか50センチほどの近さで
向き合う濃密さも新鮮だった。

30分の番組を、ほぼリアルタイムで収録する。
あまり編集しないほうが臨場感があっていいのだろう。

話は、私のプロフィール紹介に始まり、
テレビプロデューサーとしてのこれまでの仕事、
大学での教育や研究、
そして、これまでに出会った映画人へと進んでいった。

熊井啓監督、岡本喜八監督、篠田正浩監督などを大学にお招きし、
監督自身が学生たちに見せたい作品を1本、
ちゃんとフィルムと映写機で上映。
その後、監督にお話をうかがう、という催しの話をした。

これは98年から99年にかけて
慶應の湘南藤沢キャンパス(SFC)で行ったものだ。

そして、
この「日本映画の巨匠たち」シリーズという
連続上映&講演会の前に開催したのが、
映画評論家・淀川長治さんの講演だった。
98年10月7日のことだ。

淀川さんは、この講演から約1ヶ月後の
11月11日にお亡くなりになったため、
この講演が人生最後のものとなった。

あれからちょうど10年。
何かの「節目」なのだろうか、
そういう「ご縁」なのだろうか。

雑誌『文藝春秋』が今年の2月号で、
「ドキュメント・見事な死
 ~阿久悠から黒澤明まで著名人52人の最期」
という特集を組んで、
その際、淀川さんの「最後の講演」について取材を受けたのだ。

すると、その記事を
フジテレビ『とくダネ!』の「新・温故知人」コーナーの
スタッフが目にして、
取り上げたいという話が来た。

結局、
当時私がいた札幌まで
取材班がインタビューを撮りに来てくださった。
実はこのとき、
当時の様子を語っているうちに
不覚にも涙が出てきて困った。

心優しいディレクターさんが
うまく編集してくださったので、
画面上はわからないように放送された。
それが3月25日(火)のことだ。

そして、
今回の『Mパラ』となる。

若いころから
淀川さんに映画の見方を教えていただいた者として、
こうして
在りし日の淀川さんのお人柄と
映画への強い愛情とを、
様々なメディアを通じて
少しでも伝えていけることは嬉しい。

もちろん淀川さんには
遠く及ばないが、
映画との「一期一会」を大切にする気持ちを
これからも持ち続けたいと思う。


●WOWOWのインターネットラジオ『アリコンMOVIEパラダイス』

 http://radio.wowow.co.jp/mpara/

配信期間:4月18日(金)~5月15日(木) 無料登録で受信可能に