碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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祝!「日本文学100年の名作」全10巻の完結

2015年06月08日 | 書評した本たち



“新潮文庫100年記念”のアンソロジーである、「日本文学100年の名作」全10巻が、ついに完結しました。

最終刊は、2004~2013年分となる、『バタフライ和文タイプ事務所』。

タイトルは、巻頭に置かれた、小川洋子さんの作品からきています。

その小川さんから絲山秋子さんまで、16編の中短編が並ぶ。

個人的には、伊集院静「朝顔」、桜木紫乃「海へ」あたりが、いいですね。

100年分の中短編から選びに選んで編まれた、10冊のオリジナル文庫。

編者である池内紀、川本三郎、松田哲夫のお三方に感謝です。


週刊新潮に書いた書評は、以下の通りです。

永栄 潔 
『ブンヤ暮らし三十六年~回想の朝日新聞』

思草社 1944円

ブンヤが新聞記者の異名であることを知らない世代も増えてきた。しかし、ここにあるのはブンヤとしか言いようのない記者魂だ。瀬島龍三との駆け引きや石原慎太郎との対峙も興味深いが、朝日新聞の内幕を率直に語って読みごたえがある。異色の体験的メディア論だ。


荒井 修 
『浅草の勘三郎~夢は叶う、平成中村座の軌跡』

小学館 1944円

著者は、舞扇の老舗「荒井文扇堂」四代目店主。3年前に他界した十八代目中村勘三郎とは、40年にも及ぶ交友があった。「平成中村座」にも立ち上げから関わっている。本書は勘三郎と中村座の歩みを綴った回想録だ。勘三郎の歌舞伎への熱い思いが伝わってくる。


ジョアンナ・ラコフ:著、井上里:訳 
『サリンジャーと過ごした日々』

柏書房 2376円

『ライ麦畑でつかまえて』で知られるサリンジャーは“生ける伝説”だった。世界的な作家でありながら、私生活は極端に謎だったからだ。本書の舞台は90年代のニューヨーク。出版エージェンシーで働く若き日の著者が体験した、本と恋愛と自分探しの物語だ。


倉田真由美 
『もんぺ町 ヨメトメうお~ず』
 
小学館 1404円

『女性セブン』に連載された、究極の嫁姑バトル漫画である。元ヤンキーのクマ子が嫁ぎ先で遭遇するのは、息子を奪った嫁に敵意を燃やす義母。引きこもり系デイトレーダーの義弟。無神経な隣人たちなど。特に姑という強敵を相手の孤軍奮闘は苦笑・爆笑の連続だ。

(週刊新潮 2015.06.04号)