碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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【気まぐれ写真館】 今年の桜 (六本木)

2017年04月08日 | 気まぐれ写真館

週刊ポストで、フジテレビ「女子アナ採用」についてコメント

2017年04月08日 | メディアでのコメント・論評



フジテレビの女子アナ採用は
役員の好みで決まる

古くは河野景子、八木亜希子、有賀さつきの「花の三人娘」、近年はアヤパン(高島彩)、カトパン(加藤綾子)と、女子アナブームを牽引してきたフジテレビには、時代ごとにエースがいた。しかし“女子アナ王国”を築いてきたフジが今、“人材難”に陥っているという。そんな苦境を憂えた同局の元人気アナが、何と局のトップたちを相手に声を上げた。

昨年末、オリコンスタイルが発表した「好きな女性アナウンサーランキング」のトップ10から、フジの女子アナが消えた。この結果に、局内は屈辱的なムードに塗れている。

「1位の水卜麻美アナを擁する日本テレビは、3年連続で視聴率年間三冠王に輝いています。フジが視聴率年間三冠王に君臨していた1990年代初頭は、『花の三人娘』が活躍していた。2004年に再び三冠王に返り咲いた頃は、アヤパンが『めざましテレビ』の顔として活躍し、内田恭子や中野美奈子もいた。女子アナは数字が取れる“局の顔”だけに、最近のウチの低迷は人気女子アナの不在が響いているのではないかと言われています」(フジ局員)

凋落を決定づけたのが昨年、“不動のエース”として活躍してきたカトパンの退社だった。

「カトパンの後継者として2014年入社の永島優美アナを『めざましテレビ』のメインキャスターに抜擢し、局を挙げてプッシュしましたが、良くも悪くも真面目すぎていまひとつ跳ねなかった。カトパンと人気を分けたショーパン(生野陽子)も、今や同僚アナの人妻。山崎夕貴アナは“ぶっちゃけキャラ”で好感度は高いのですが、庶民的イメージがありすぎて華がない。エース不在の状況が続いています」(同前)

◆幹部会での爆弾発言

そんななか、1月23日に各部署の幹部たちが集まる定例の「戦略会議」が開かれ、その席で女子アナに関する異例の発言が飛び出した。本誌は「戦略会メモ」と題された議事録を入手した。そこには〈改めて週末強化が課題〉〈やはりコンテンツ力が勝負になる〉など、当たり障りのない発言が並んでいるのだが、「アナウンス室部長」の発言だけが明らかに毛色が違った。

〈2018年4月入社新人アナ内定男2女2、毎年現場で推薦した学生が役員の好みでひっくり返る。今年は誰に選ばれたか(現場は)まだ分かっていない〉

予定調和ムードの会議のなかで、この発言のインパクトは大きく、内容はすぐに局内に広まった。

発言の主は、佐藤里佳・アナウンス室部長(50)だ。平成元年に視聴率三冠王時代のフジに入社して以来、プロ野球ニュースや土曜昼のニュース『FNNスピーク』のキャスターを務めた。『笑っていいとも!』で阿吽の呼吸を見せたタモリからの信頼も厚く、『ヨルタモリ』でも再び起用された。そんなフジ女子アナの王道を歩んできた佐藤部長がなぜ、突然こんなことを言い出したのか。同年代のフジ幹部はこう説明する。

「ふだんは人当たりがよく、会議でも目立った発言はしないタイプなので、驚きました。うちのアナウンサーの採用試験は、アナウンス室部長を含めたベテランアナが実技を見た上で、役員クラスによる最終面接に臨みます。

ところがここ数年、その段階で評価されていなかった女子学生が役員面接で採用と決まったケースがいくつかあったために、アナウンス室を仕切る佐藤さんとしては怪訝に思っていたそうです。その上、今年の採用試験(2018年入社)でどの学生が最終的に採用されたのかをアナウンス室にその時点で知らされていなかった。その不透明さに、苦言を呈したのでしょう」

◆「よくぞ言ってくれた」

フジテレビは「アナウンサーを含む社員の採用は適切に行なっております」(企業広報部)と答えている。仮に役員面接で評価が「ひっくり返った」としても、あくまで最終面接による合否判断であり、それはそれで「適切な採用」に違いない。興味深いのは、佐藤部長の発言が局内で広まり、「よくぞ言ってくれた」という共感が広がっていることだ。

「最近のフジの新人アナは、“ミス慶応”の小澤陽子アナや元読者モデルの堤礼実アナなど、ビジュアル的には申し分のない子ばかりだし、彼女たちなりに頑張っている。でも中にはアナウンス技術が低いまま努力もしない子がいて、現場スタッフから『あの子は使えない』『どんな基準で採用しているんだ』という疑問の声が上がっていたんです」(別のフジ局員)

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は、「フジの女子アナ採用は時代とズレているのではないか」と言う。

「人気1位の水卜アナを見ればわかるように、親しみやすい人柄と確かなアナウンス力が今は求められている。最近のフジの女子アナは、ショーケースに並べられた美しいお人形という印象で、テレビの主な視聴者の中高年にとって応援しづらくなっているのではないでしょうか」


視聴率争いの劣勢もむべなるかな。問題は役員たちの“センス”ということか。

(週刊ポスト2017年4月14日号)



【気まぐれ写真館】 今年の桜 (神楽坂)

2017年04月08日 | 気まぐれ写真館


NHK「3.11」ドラマ&ドキュメンタリー

2017年04月08日 | 「北海道新聞」連載の放送時評



北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。

今回は、NHKの「3.11」特番について書きました。


ドラマとドキュメンタリーを駆使
「3.11」をリマインドしたNHK

3月23日から2夜連続で、NHKが特集ドラマ「絆~走れ奇跡の子馬~」を放送した。東日本大震災と原発事故で家族と牧場を失った福島の一家が、震災の最中に生まれた子馬を競走馬として育てていく物語だ。

あの日、松下拓馬(岡田将生)は馬の出産に立ち会って亡くなった。地元からGⅠ馬を生み出すという息子の夢を実現しようと奔走する父・雅之(役所広司)。看護師として働きながら牧場を支えてきた母・佳世子(田中裕子)。東京から戻って父を助ける拓馬の妹・将子(新垣結衣)。実力派の俳優陣が現地に暮す人々の6年間を丁寧に演じていた。

雅之たちは北海道の生産育成牧場に子馬を預けようとするが、「あの馬、被ばくしていないと言い切れるのか」と断られてしまう。また新たな牧場を作ろうとした土地も除染廃棄物置き場となってしまう。自分たちではどうにもならない現実と悔しさが描かれていく。

全体的に抑制の利いた、ストイックともいえるドラマだった。しかし寡黙に徹した役所広司が被災者の憤りを、そして「あの子馬を見ると息子を思い出してつらい」と静かに語る田中裕子が被災者の悲しみを代弁していた。

NHKスペシャル「シリーズ東日本大震災」が2本続けて放送されたのは3月11日の夜だ。どちらも重要な問題提起を行っており、見応えがあった。1本目は「“仮設6年”は問いかける~巨大災害に備えるために~」。

現在も3万5000人が仮設住宅で暮らしている。しかし、この施設での長期生活には無理があり、亡くなる高齢者も多い。番組はこの事態の原因として「災害救助法」を挙げる。昭和22年に制定された古い法律で、仮設暮らしが長期化する大規模災害に対応できないのだ。

かつて見直しも検討されたが、応急救助の厚生省と再建支援の国土省の折り合いがつかなかったという。“災害救助法の壁”と“省庁の壁”。2つの壁の存在と問題点を明らかにした番組の意義は大きい。

2本目のNスペは「避難指示“一斉解除”~福島でいま何が~」だ。先日、国の判断で福島県4町村の避難指示が一部解除された。しかし住民は、放射線量への不安、山積みの除染廃棄物、打ち切られる補償といった悩みを抱えたままだ。

一方、自治体は村や町の存続への危機感から避難指示解除を急いできた。そのギャップが行政と住民、住民同士、さらに家族の間での“分断”を進行させている。それは二重被災ともいうべきもので、あらためて誰のための復興なのかが問われていた。

(北海道新聞 2017.04.04)