碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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岩手日報のコラムで・・・

2019年02月01日 | メディアでのコメント・論評


人気アイドルグループ「嵐」が2020年末…

人気アイドルグループ「嵐」が2020年末をもってグループ活動を休止する。衝撃は列島を駆け抜け、メンバー5人が臨んだ記者会見や一連の報道は、日を追うごとに影響を広げている

▼今年でデビュー20周年を迎える嵐は、いずれも30代後半。リーダーの大野智さんが語った「自由な生活」「見たことのない景色を見たい」との言葉の数々に、引き換えにしてきたプライベートの大きさを感じる

▼歌やバラエティーに、テレビで彼らを見ない日はない。それもそのはず。わが家では出演番組を録画し、子どもが見ている。数年前だろうか。メンバーの一人が観光地を訪れるお忍び旅行企画があり面白かった

▼帽子を目深にかぶり眼鏡の、どこかあか抜けない変装ぶり。本人と気付かれると、始めたばかりの旅も終了となる。あえて声を掛けない人もいたが芸能人のオーラを隠しきれない場合が多かったように記憶する

会員制交流サイト(SNS)が普及し、「一億総ジャーナリスト時代」(碓井広義上智大教授)とも言う。スマホを手に、あの人もこの人もいろんなことをつぶやく。スターにとって何とも窮屈な世間だろうか

▼ところが今、ファンの間では「#大野くんの夏休み」と寄り添う気持ちが拡散している。アイドルでなくても折々に身の振り方を考えるのは同じだ。人生は一度きり。

(岩手日報 2019.01.31)



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岩手日報で、「嵐」休止について解説

2019年02月01日 | メディアでのコメント・論評


SNS時代 スター苦難 「嵐」活動休止発表 
言動拡散、強まる重圧 
「引退増える」有識者が予測

人気グループ「嵐」が2020年末をもっての活動休止を発表した。芸能人は人気が高まれば高まるほど公私の別なく注目される立場になる。会員制交流サイト(SNS)の普及でスターを演じ続ける重圧が強まり、芸能活動の”転機”をファンにどう伝えるかも問われている。

「自由に生活をしてみたい」。27日夜に急きょ行われた記者会見で、嵐のリーダー大野智さんは率直に心情を語った。

タレントの認知度や「見たい」「知りたい」との意向をアンケートしたアーキテクト社の「タレントパワーランキング」では、嵐は桑田佳祐さんや宇多田ヒカルさん、福山雅治さんらを上回り「歌手・ミュージシャン」で1位。男女問わず幅広い世代に人気だ。

嵐の5人は歌の他、テレビのバラエティー番組やドラマ、映画でも活躍。国民的スターとしてあらゆる場面で注目され、批評の対象にもなってきた。

音楽マーケッター臼井孝さんは「芸能人の生きづらさが高まっている。SNSで批判や中傷が広まって活動を続けられない芸能人も出ており、活動休止や引退は今後増える」と予測する。

アイドルが芸能マスコミだけに気を付けていれば良かった時代と異なり、今はSNSの発達で「一億総ジャーナリスト時代」だと上智大の碓井広義教授(メディア文化論)も指摘する。

「自分の言動が思わぬ形で拡散してしまう時代なので、10~20年前のアイドルとは違うプレッシャーがあるだろう」

その上で嵐の会見について「運動体としての『嵐』を可能な限り自分たち5人でコントロールする意思を感じた」と語る。16年のSMAP解散を巡る騒動を、同じジャニーズ事務所の後輩に当たる嵐のメンバーが見て「『着陸』の仕方の大切さを感じたのではないか」。

話し合いを重ねたことを強調し、約2年後のグループ活動の休止を、時に笑顔を交えながら穏やかに伝えた嵐の”ソフトランディング(軟着陸)”。

「今回、嵐が示した形は、さまざまなグループや芸能人が今後、休止や解散などの局面に立った際のロールモデルになるのではないか」と碓井教授はみている。


(岩手日報 2019.01.29)




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