週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。
篠原勝之
『戯れの魔王』
文藝春秋 1,944円
3年前、『骨風』で泉鏡花文学賞を受けた、ゲージツ家のKUMAさんこと篠原勝之。本書は最新連作集だ。「山岳の作業場」に籠る「オレ」は限りなく著者に近い。オッカサンの最期を描く「蓮葬り」もさることながら、白塗りの舞踏家マロの舞台に立つ表題作が鮮烈だ。
川村 湊
『ホスピス病棟の夏』
田畑書店 1,944円
文芸批評家である著者が、乳がんで逝った妻と看取った自身の日々を、日記形式で綴っている。病状を冷静に記録していたかと思うと、隠せない不安が顔を出す。さらに「なぜ、こんな文章を書いているのか」という自問も。ホスピスのリアルを垣間見る貴重な一冊だ。
(週刊新潮 2019年1月17日迎春増大号)
中村邦生:編
『推薦文、作家による作家の』
風涛社 2,484円
「全集内容見本」は書店に置かれる出版案内のパンフレットだ。本書には、ある作家について他の作家が書いた推薦の弁が並ぶ。丸谷才一が吉田健一を、井上ひさしが藤沢周平を、そして村上春樹が吉行淳之介を語る贅沢。文学エッセイのアンソロジーとして秀逸だ。
鈴木 耕
『私説 集英社放浪記』
河出書房新社 1,944円
著者の本名は鈴木力。通称「リキさん」は集英社の編集者として36年を過ごした。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」「週刊プレイボーイ」「イミダス」と渡り歩き、さらに集英社新書の創刊にも携わる。“譲れぬ一線”を守り続けた編集者の貴重な同時代記録だ。
(週刊新潮 2018年12月27日号)
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