有事の“お守り”?
テレビ局「政治家の身内」ゴロゴロの歪んだ思惑
フジテレビ問題がここまで社会を騒がす事態になると、24日に召集される通常国会でも取り上げざるを得まい。
すでに放送行政を所管する村上誠一郎総務相は、フジの「なんちゃって」調査委員会に異例のダメ出し。フジの解体や電波停止処分を求める世論が高まれば、国会議員も無視できないだろう。
ただ気になるのは「身内」の存在だ。テレビ局の社員にはなぜかタレントやスポーツ選手ら有名人、さらにはスポンサー企業の子息・子女や親類が多い。
国会議員の2世もご多分に漏れず、ゴロゴロいる。小渕恵三元首相の次女・優子元経産相はTBS出身。石原慎太郎元都知事の長男・伸晃元幹事長も、日本テレビの政治部記者あがりだ。
渦中のフジも例外ではない。安倍晋三元首相の甥で岸信夫元防衛相の長男・信千世衆院議員は、元フジの社会部記者。同期入社には加藤勝信財務相の長女もいる。
他にも中川昭一元財務相と郁子前衆院議員夫妻の長女や、中曽根康弘元首相の孫(長女の息子)、つまり弘文元外相の甥で康隆衆院議員のいとこもフジに入社している。
加藤鮎子前こども担当相の姉は元TBS社員だが、夫はフジの総務局長。父・紘一元幹事長の娘婿にあたる。
■「オールドメディア」と批判されるゆえん
「テレビ局が多くの政治家の子供を採用することには、何らかのメリットがあるのでしょう。万が一の有事に備えて恩を売っておく、という考えもあるかもしれません。今まさにその有事がフジテレビに起きています。
もちろん子供を“人質”に取るようなロコツなことはしないまでも、仮に身内の職場が停波に追い込まれるような事態になれば、その判断を迫られる政治家側は躊躇するはず。政治家の子供を抱え込めば“切り札”とは言わないまでも、有事の軽減を期待する“お守り”のような存在にはなり得ます。
メディアには『権力監視』という重要な役割があるのに“政治家の身内が内部にいて、まともに政権批判ができるのか″とも言えますし、逆もまたしかりです。日本の政界とメディアのなれ合い関係を感じます」(メディア文化評論家・碓井広義氏)
この血統優先の旧態依然とした構図こそ「オールドメディア」が批判されるゆえんだ。もはや「魔除け」をありがたがる時代でもあるまい。
(日刊ゲンダイ 2025.01.24)