碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「119エマージェンシーコール」は、隠れた良作ドラマ

2025年03月12日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

管制員と通報者とのやりとりがスリリングな良作

清野菜名主演

「119エマージェンシーコール」

 

清野菜名主演「119エマージェンシーコール」(フジテレビ系)の舞台は横浜市消防局指令課。119番通報を受付け、出動指令を発する部署だ。

制作に当たり同市の協力を得ていたが、途中でクレジットが取り下げられてしまった。「中居正広問題」の影響であり、ドラマ自体のせいではない。

粕原雪(清野)は新人の司令管制員だ。通報が入ると、まず「消防ですか、救急ですか」と問いかけ、事態を確認・把握した上で消防車や救急車を出動させていく。

ドラマの多くの部分が指令センターの室内場面だ。当初、見ていて退屈するのではないかと思ったが、杞憂だった。

管制員と通報者とのやり取りが何ともスリリングなのだ。頼りになるのは音声だけ。見る側は雪と一緒に耳をすませながら現場の状況を想像する。

しかも雪は優れた聴覚を持つ。かすかな音声も正確に聞き取ることが可能だ。そこから問題解決のヒントを見つけたりする。

先日は山で遭難した少年と雪の姉・小夏(蓮佛美沙子)のエピソードが描かれた。小夏は失声症のため通常の会話が難しい。雪の能力がフル稼働する回だった。

度々、管制員としては逸脱した行動をとる雪だが、命を守ることへの真摯な思いは伝わってくる。

生きることにちょっと不器用だが、応援したくなるキャラクターであるヒロインを清野が好演。隠れた良作となっている。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2025.03.11)