碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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テレ東「コタキ兄弟と四苦八苦」は1-3月期の隠れた秀作

2020年04月01日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

古舘寛治×滝藤賢一

テレ東「コタキ兄弟と四苦八苦」は

1-3月期の隠れた秀作

 

先週、最終回を迎えた「コタキ兄弟と四苦八苦」。兄の古滝一路(古舘寛治)は元予備校講師で現在無職の独身。弟の二路(滝藤賢一)は妻子持ちだが離婚の危機。兄が一人で住む実家に、弟が転がり込んできたことで物語が動きだした。

まず、古舘と滝藤の組み合わせが秀逸だ。しかも2人がやっているのが時給1000円の「レンタルおやじ」。先輩格のムラタを演じるのは宮藤官九郎。これで脚本が「アンナチュラル」の野木亜紀子なのだから、ぜいたくだ。

2人は親戚に成りすまして結婚式に出席したり、ホームパーティーのゲストになったりする。毎回、現場で発生する予期せぬ出来事への対応が見ものだった。しかしそれ以上に、行きつけの喫茶店「シャバダバ」の看板娘、さっちゃんこと五月(芳根京子、好演)との関係が、おかしくもスリリングで目が離せなかった。

父のいない五月は、再婚した母と離れて自活している。恋人は歯科医を目指す女子学生だ。相手の将来を思い、一度は身を引いた五月だが、兄弟に励まされて恋人と生きることを選ぶ。実は五月が2人にとって「腹違いの妹」だという設定が効いていた。もちろん五月は最後までそのことを知らずに旅立っていく。

このドラマ、冴えない中年男たちのゆるい日常を描きながら、他者とは何か、人とのつながりとは何かを思わせてくれた、今期の隠れた秀作だ。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2020.04.01


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