碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」野木亜紀子脚本の狙いと問いかけ

2024年11月28日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

ドラマの舞台である長崎の端島(軍艦島)

 

日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」

野木亜紀子脚本の狙いと問いかけ


日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(TBS系)が中盤に入ってきた。

1955年、大学を卒業した鉄平(神木隆之介)は故郷の炭鉱の島に戻り、働き始めた。

一方、2018年の東京に住むホストの玲央(神木の二役)は、会社経営者のいづみ(宮本信子)と知り合い、彼女の秘書を務めることになった。

物語は2つの時代と場所を行き来しながら展開されている。

当初、脚本の野木亜紀子の狙いは、昭和の経済成長の光と影を描くことではないかと思った。だが、どうやらそれだけではないようだ。

それは先日の第4話に表れていた。鉄平の家では、20歳だった長兄がビルマで戦死。16歳の姉と14歳の妹は福岡の空襲で命を失っていたのだ。

父の一平(國村隼)は、名誉なことだと信じて息子を戦場に送った自分を、ずっと責め続けている。

また鉄平の幼なじみである百合子(土屋太鳳)は、母や姉と出かけた長崎で原爆に遭遇していた。

姉はその時に亡くなり、母も長く患った末に白血病で逝った。いつか自分も発症するのではないか。百合子はその恐怖を抱えながら生きている。

鉄平が言う。「死んだ者たちは帰らない。過去の過ちは消えない。私たちは祈る。今度こそ間違えないようにと」。

しかし70年後の今、この国は胸を張って「間違えていない」と言い切れるだろうか。野木の強烈な問いかけがそこにある。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2024.11.27)

 


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