碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

木村拓哉がキムタクを封印して挑む「アイムホーム」

2015年04月22日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今週は、木村拓哉主演「アイムホーム」(テレビ朝日系)について書きました。


「アイムホーム」テレビ朝日系
木村拓哉がキムタクを封印して
誠実に演じている

結論から先に言えば、これはいわゆる“キムタク・ドラマ”ではない。

脚本も演出も脇役も、ひたすらキムタクをカッコよく見せることだけに奉仕するのがキムタク・ドラマなら、今回は違う。ここにいるのは“キムタク”ではなく、一人の俳優としての木村拓哉だ。

事故で過去5年の記憶を失った家路久(木村)。なぜか妻(上戸彩)や息子の顔が白い仮面に見えてしまう。彼らへの愛情にも確信がもてない。その一方で、元妻(水野美紀)と娘に強い未練をもつ自分に戸惑っている。

原作は石坂啓の名作漫画で、仮面が邪魔して家族の感情が読み取れないというアイデアが秀逸だ。その不気味さと怖さはドラマで倍化しており、見る側を家路に感情移入させる装置にもなっている。

自分は元々家庭や職場でどんな人間だったのか。なぜ結婚し、離婚し、新たな家族を持ったのか。知りたい。でも、知るのが怖い。そんな不安定な立場と複雑な心境に陥ったフツーの男を、木村拓哉がキムタクを封印して誠実に演じているのが、このドラマなのだ。

もちろん主演は木村だが、いつものような悪目立ちはない。何より、夫であり父でもあるという実年齢相応の役柄に挑戦し、きちんと造形していることを評価したい。

脚本は『医龍』(フジテレビ系)や『ハゲタカ』(NHK)で知られる林宏司。大人が見ていい1本だ。

(日刊ゲンダイ 2015.04.22)


4月21日、「民放の日」にテレビの“原点”を考える

2015年04月21日 | ビジネスジャーナル連載のメディア時評



ビジネスジャーナルに連載しているメディア時評、碓井広義「ひとことでは言えない」

今日(4月21日)は「民放の日」。

テレビの“原点”について考えてみました。


かつてのテレビは、なぜ面白かったのか
 “本物”の番組は
とてつもない力を持っている!

今から30年前のことだ。当時、番組制作者だった私は、取材で広島県の尾道市にいた。朝から歩き回り、遅い昼食をとるため、一軒の食堂に入った。老夫婦がやっている店で、時間がピークを過ぎていたこともあり、客は私ひとりだった。定食を注文して待っていると、おばあさんが「いつも見ているドラマが始まる」と言って、神棚のような位置に置かれたテレビのスイッチを入れた。

ところが、画面に映ったのは見慣れたドラマではなく、まったくの別番組だった。おばあさんはチャンネルを間違えたと思ったらしく、大急ぎでカチャカチャとリモコンを操作した。ところが、どの局も同じ番組しか映らない。慌てたおばあさんは、厨房のおじいさんを呼んで助けを求めた。

その時、すぐに説明してもよかったのだ。今日、つまり4月21日が、ラジオ16社に民放初の予備免許が与えられた、1951年4月21日を記念する「放送広告の日」(現在は「民放の日」)であること。毎年この日の、この時間に、日本中のテレビ局が一斉に同じ特番を流すこと。つくっているのは私が所属していた制作会社、テレビマンユニオンで、自分がディレクターを務めているのだと。だが、結局は言わなかった。

●ローカルのユニークな番組たち

85年4月21日、午後4時から5時まで、全民放ぶち抜きで放送されていたのは、放送広告の日特別番組『民放おもしろ物語』である。日本民間放送連盟(民放連)の番組だった。

取材などで全国各地を歩いていると、その地方でしか見られないユニークなローカル番組に遭遇できるため、宿泊先でそれらの番組を見ることを楽しみにしていた。同時に、一体どんな人たちが、どんなふうにつくっているのか、ずっと気になってもいた。それが企画として実現したのだ。北海道、福井、大阪など縦断ロケを行い、それぞれの現場に密着した。

『いやはやなんとも金曜日』(福井テレビ)のプロデューサーは、東京からやって来る司会者・高田純次さんを「経費節約だ」と言って、毎週空港まで自分の車で送り迎えしていた。また、「予算はないけれど、魚は豊富」と豪快に笑い、反省会と称する番組終了後の自前の飲み会は、毎回明け方まで続いた。生放送の自社制作バラエティはハプニングの連続で、見ているほうも冷や汗をかくが、目が離せないほど面白かった。

また『夜はクネクネ』(大阪・毎日放送)の制作チームは、街で偶然出会った素人にカメラを向け、そのまま自宅までお邪魔したりしていた。収録の夜は毎回、街の中を複数のカメラマンや照明用のバッテリーを背負った技術スタッフたちが練り歩く。ちょっとした大阪名物だった。

素人と話をするのは、角淳一アナウンサーとタレントの原田伸郎さん。もちろん台本もなく、すべての展開はその場の流れ次第だ。ロケも何時に終わるのか、皆目わからなかい。そんな制作のプロセスも番組の中に取り込んでいく手法は、まさにドキュメント・バラエティーだった。

●本物をつくる

尾道の食堂では、制作者たちの奮闘ぶりがテレビから流れていた。しばらくは当惑していた店主夫妻も、途中から楽しそうに視聴している。

今この瞬間、全国のテレビ局で放送されているはずの同じ番組を、自分も旅先で見ず知らずの人たちと一緒に見ていることの不思議。「つながり」や「共有」といった大仰な話ではないが、テレビが持つ何かとてつもない力に触れた体験だった。

あれから30年。社会もメディアも大きく変化した。もちろんテレビも例外ではない。しかし、どんなに時代が変わっても、人の心が激変したとは思えない。何に笑い、何に泣き、何に感動するのか。その基本的な部分は崩れていないのではないか。目指すは、偽物ではなく本物をつくること。表層ではなく本質を伝えること。テレビだからこそ可能なトライの中に、このメディアの明日があるはずだ。

(ビジネスジャーナル 2015.04.21)

週刊新潮で、『おかあさんの木』鈴木京香さんについてコメント

2015年04月20日 | メディアでのコメント・論評


発売中の「週刊新潮」最新号で、映画『おかあさんの木』で主演を務める鈴木京香さんについてコメントしています。


出征兵士の母「鈴木京香」が一皮剥けた!

女優の鈴木京香といえば、来月には47歳になるのだが、モデル出身だけにスタイルも折り紙付き。男の噂も数々あれど、いまだ独身を貫いている。それが、いきなり7人の子持ちに――。

「もちろん映画の話ですけどね。東映が戦後70年記念作品と銘打ち、6月6日より公開する『おかあさんの木』のおかあさんを、同世代ではもはやトップ女優の鈴木が演じているのです」と業界誌記者。

作品名に思い当たる人は50代以下だろうか。小学5年の国語の教科書に40年前から使われていた、児童文学作家・大川悦生の『お母さんの木』(教科書での表記)が原作。7人の息子たちが戦場に向かうたびに桐の木を植え、7本の桐に語りかけながら、ひたすら息子たちの無事を祈り、帰りを待ち続ける、いわば岸壁の母。

「東映が“号泣ロードショー”と宣伝するほどですから、出来もいいんでしょう。そして今年は戦後70年ということで、時期はズレますが、松竹は『日本のいちばん長い日』(主演・役所広司)、東宝は日本のシンドラーこと『杉原千畝 スギハラチウネ』(主演・唐沢寿明)を公開する。力も入る」(同)

だが、独身の鈴木京香が、7男の母を演じきれたのか。

「確かに彼女には母親のイメージはない。それに交際中といわれる長谷川博己と出会ったNHKドラマ『セカンドバージン』でも、脱ぐ脱ぐといわれつつも脱がない、なにをやってもギリギリの所で自分を守ってしまうイメージが強いんです」

とは上智大学の碓井広義教授(メディア論)だ。

「ただし、朝ドラ『君の名は』の真知子を演じたように、彼女はあの時代が似合うし、女性を敵に回していない。さらに東日本大震災の復興支援ソング『花は咲く』で存在感を再認識しました。東北出身で、痛みをもった人を支える佇まい、雰囲気が表れていて、母の強さを演じられそう。いつまでもいい女ではいられないから、これがステップとなって、一皮剥けるかも」(同)


一肌脱ぐのも今のうち。

(週刊新潮 2015年4月23日号)

読売新聞で、自民党「NHK・テレビ朝日聴取」についてコメント

2015年04月19日 | メディアでのコメント・論評



17日に、自民党による、NHKとテレビ朝日からの聴取が行われました。

その行為自体が、十分、政治圧力だと思います。

この件について、読売新聞の取材を受けました。


NHKとテレ朝聴取
与党に慎重対応求める声
識者「TVも自浄作用必要」

自民党の情報通信戦略調査会(川崎二郎会長)は17日、NHKとテレビ朝日の報道番組の内容を巡り、両局幹部から意見聴取を行った。川崎会長は、メディアへの圧力には当たらないとしたが、識者からは「与党には、より慎重な対応が求められる」などの声が上がっている。

意見聴取の対象となったのは、やらせ疑惑が浮上したNHK「クローズアップ現代」と、コメンテーターの古賀茂明氏が生放送中にニュースから逸脱した発言をしたテレ朝「報道ステーション」の2番組。NHKの堂元光副会長と、テレ朝の福田俊男専務が出席した。

冒頭、川崎会長は「真実が曲げられた放送がされた疑いがある」とあいさつ。その後、調査会は非公開で両局幹部から事情を聴いた。

川崎会長は会議後、「(この日は)事実関係の説明を受けただけ」と説明。来週にも同調査会内に小委員会を設置し、議論することを明らかにした。

テレ朝の福田専務は「当日のいきさつ、コメンテーターの位置づけなどを説明した。誤解を生じているかもしれないので、いい機会ととらえて出席した」と話し、NHK広報部は「4月9日に公表した中間報告の内容を説明した」とコメントした。

この日の意見聴取について、碓井広義・上智大教授(メディア論)は「与党による意見聴取は『我々は黙って見ていない』という圧力に受け取られ、その結果、メディア側が与党に関する報道を自主規制する可能性もある。報道の自由は守られるべきで、圧力は許されない」と批判。一方で、「報道機関も『うそが混じっている』と後ろ指を指されないよう、自浄作用を示す必要がある」と話す。

服部孝章・元立教大教授(メディア法)は「自民党が放送局の幹部を呼び出すこと自体が圧力と受け取られる。与党にはより慎重な対応が求められる」と述べる一方で、1993年にテレビ朝日の報道局長(当時)が「総選挙で非自民の連立政権を成立させる手助けとなるような報道をした」などと発言して国会で証人喚問を受けたケースなどを踏まえ、「テレビ局の側が過去の教訓を生かし切れていない」とも語った。

(読売新聞 2015.04.18)

書評本: 高杉 良『小説 創業社長死す』ほか

2015年04月19日 | 書評した本たち



あの大塚家具の「おわびセール」に1万人が殺到しているそうで・・・。

「お家騒動」は炎上商法だったのではないか、という噂も消えていません。

なんだかなあ、の感がありますね。


週刊新潮での書評は、高杉良さんの“モデルあり”の経済小説などを取り上げました。


高杉 良 『小説 創業社長死す』
角川書店 1728円


創業者で会長の父親。それを排除しようとしたのは社長である娘。実際に大手家具販売会社で展開された泥沼の経営権争いは、同族会社の持つ危うい側面を見せつけた。

経済小説の名手による新作の舞台は食品会社だ。平成元年、60歳の小林貢太郎は大手食品総合メーカー、東邦食品工業の創業社長として君臨していた。当面の課題はアメリカにおけるカップ麺「コバチャン」の製造・販売であり、その責任者として誰を送り込むかだった。それは次期社長人事とも密接に関係していたが、最終的に小林が最も信頼する専務の深井が赴くことになる。

4年後、深井はアメリカでの成果を携えて帰国。だが、社長ではなく会長のポストに就く。社長の椅子に座ったのは筒井だ。本来その器とは言えない人物だが、小林の妻の強い後押しがあった。社長選びという重要事項で、なぜ小林は妻の影響を受けるのか。そこには、長年にわたる“もう一つの家庭”の存在があった。

平成17年、相談役だった小林が、くも膜下出血で急逝する。これを機に深井会長と筒井社長の溝は深まり、やがて筒井の独断専行が始まる。深井をはじめ次々と邪魔者を排除し、経営の実権を握るのだ。しかし私欲が透けて見える言動によって、社内の活力は低下していく・・・。

優れた経済小説の面白さは、外部からはうかがい知れない企業や組織の実態をリアルに感じさせてくれる点にある。ましてや本書は明らかにモデル小説だ。カップ麺という商品をめぐってライバル関係にある東邦食品も大手の日華食品も、モデルの社名がすぐ思い浮かぶ。著者は実在の会社や人物たちを踏まえつつ、想像力を駆使してヒリヒリするような人間ドラマを展開していく。

創業社長の為すべきことのひとつが後継者の育成だ。自らが生んで育てた会社であっても永遠には携われない。本書は「会社は誰のものか」という問いも突きつけている。


春日太一 『役者は一日にしてならず』
小学館 1620円


平幹二朗、松方弘樹など16人の俳優が、自らの軌跡と演技について語るインタビュー集だ。「台本を読む前に役柄の周辺を調べます」という夏八木勲。「役は『作る』ものではなく『なる』もの」と蟹江敬三。常に強烈な存在感を示した名優2人も今は亡い。


新津きよみ 『彼女の遺言』
ハルキ文庫 691円


亡くなった親友から届いた遺品は、意外や梅酢だった。ただし、この梅酢には意識が過去へと戻れる不思議な力があった。タイムスリップによって過去の出来事に関与した場合、未来は変えられるのか。このタイムパラドックスに挑んだ、書き下ろし長編サスペンス。


鎌田 彗 『反国家のちから』
七つ森書館 1944円


現地を見て、まるで「侵略戦争」のようだと著者は言う。沖縄に対する安倍内閣のふるまいのことだ。原発再稼働も同様で、福島のあり様を踏まえた判断とはとても思えない。すべては経済優先の結果だ。新聞やテレビが報じない、この国の現状と病根を再認識できる。

(週刊新潮 2015.04.16号)


週刊朝日で、[春の情報番組改編]について解説(3)

2015年04月18日 | メディアでのコメント・論評



発売中の「週刊朝日」最新号に、“春の情報番組改編”に関する特集記事が掲載されました。

この記事の中で、各番組について解説しています。


●日本テレビ「スッキリ!!」

(午前中の情報番組で)依然好調なのが「とくダネ!!」(フジ)だ。視聴率7・8%と、他局の改編の動きの影響を一切受けず、首位をキープし続けている。

(中略)

同様に固定ファンをつかんで安定した人気を誇るのが「スッキリ!!」(日テレ)だ。今回でテリー伊藤と勝谷誠彦というアクの強い出演者2人を卒業させて、上重聡アナを司会に抜擢した。

さわやかに再スタートした初回の視聴率7・2%と好調。しかし、その直後に「週刊文春」が上重アナの有力スポンサーからの利益供与疑惑が報じ、別の意味で注目を集めてしまった。マンションの購入資金として「1億7千万円」の融資を無利子で受けたと報道され、庶民感覚を軸にする情報番組の顔としては致命傷を負ったのだ。

重しが抜けてスッキリしすぎ

「フリーになった羽鳥慎一アナの後継として看板アナに育てるはずが、まさかの事態。社内はかなり冷ややかです」(日テレ関係者)

アナウンサーには清廉性が求められるからと、銀座でホステス経験があった女子大生の内定取り消し騒動を起こした日テレだけに、分が悪かった。上重アナは番組内で釈明、頭を下げた後も出演しているが、どこかやりにくそうに映る。

むしろ、加藤浩次が折に触れて「今、イメージ上げようと必死な時期だもんな」などと際どいツッコミを入れるのが話題になっている。

「上重アナは直球の元気さが売りなのに、すっかり精彩を欠き、暗いオーラが漂う。ピリ辛コメントを連発するテリー伊藤と勝谷が何を言うかわからないのが面白い番組だったから、2人が不在になった今、一層その価値が浮き彫りになってしまった。重しが抜けてスッキリしすぎ、軽すぎなんです」(碓井教授)

既存の番組が強さを見せる一方、意外に注目なのが「みんなのニュース」(フジ・15時50分~)だ。情報番組やバラエティで活躍するエース・伊藤利尋アナが、報道番組のメーンキャスターに初挑戦中だ。

(中略)

各局が春の改編改革に乗り出したものの、やはり根強い人気は宮根、小倉に加え、エース伊藤で決まりなのか――。

だが碓井教授は、番組の真価が問われるのはこの先だという。

「あるコーナーから番組人気に火がつくこともありえる。いざ何かが起きた時に視聴者は生中継の安藤と宮根のどちらを選ぶのか、その勝負は楽しみです」


(週刊朝日 2015年4月24日号より)




週刊朝日で、[春の情報番組改編]について解説(2)

2015年04月18日 | メディアでのコメント・論評



発売中の「週刊朝日」最新号に、“春の情報番組改編”に関する特集記事が掲載されました。

この記事の中で、各番組について解説しています。


飛躍!迷走?春の情報番組改編


●TBS「ゴゴスマ~GOGO!Smile!~」、「白熱ライブ ビビット」

年度の変わる4月。今年もテレビの番組改編が行われた。しかし、そこでコケたのがTBSだ。独走状態の「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系・午後1時55分~)に対抗しようとするも専門家からは、辛口評価が並ぶ。

東海地方が拠点の中部日本放送(CBC)で生放送されていた情報番組「ゴゴスマ~GOGO!Smile!~」(午後1時55分~)を全国区に迎え入れたのだ。2008年に「ミヤネ屋」が大阪・読売テレビから全国に躍り出て人気を博したように、二匹目のドジョウを狙ったとも考えられる。

番組名だけ見ると「スマップ関連?」と勘違いしかけるが、スマップは無関係。MCを務めるのは全国では知名度が低いCBC石井亮次アナ。初回視聴率は2.9%だった。

テレビコラムの連載を持つライターの吉田潮氏は手厳しい。

「無難すぎて特筆すべきものが1ミリもない。テレビショッピングの延長線上のような印象ですね」

上智大の碓井広義教授(メディア論)は、

「てっきりTBSは大阪の毎日放送から番組を持ってくると思っていたら名古屋だった。なんなら次は福岡のRKB毎日放送など、半年ごとに地方を変えるほうがまだおもしろいのでは。宮根さんのような強烈な『顔』がいないと難しいでしょう」


この3月に終了した「いっぷく!」の後継として引き続き司会を務める国分太一と共に、女優の真矢ミキを抜擢したのが「白熱ライブ ビビット」(TBS系・午前8時~)。

初回視聴率は3.0%だったが、何より強烈なインパクトを与えたのは“紫”が基調のスタジオセットだ。テレビ局関係者は「紫は欲求不満の色なんて言われますし、通常、深夜番組でしか見ない。それを朝の情報番組にもってくるとは」と驚く。前出の吉田氏が言う。

「真矢のアップが多すぎ。彼女が奇麗なのはわかるが、アレルギー成分で問題になった石けんCMの『あきらめないで!』という“迷セリフ”が今にも聞こえてきそうです」

真矢の起用については、碓井教授も首をひねる。

「放送開始から1週間以上が経ったのに、ほとんど印象がない。局は国分の横で“しっかりもののお姉さん”的な役割を求めたかもしれないが、『次は○○』とコーナーのつなぎだけ。元宝塚スターに失礼な気がします」


ただし2人の脇で、黒縁メガネで進行する井上貴博アナを評価する声がある。

「みのもんたが降板した後の『朝ズバッ!』の後任として、若手ながらものすごい重圧の中で番組を回していた器用さを今後生かしたいところ」(TBS社員)

(週刊朝日 2015年4月24日号より)

週刊朝日で、[春の情報番組改編]について解説(1)

2015年04月18日 | メディアでのコメント・論評



発売中の「週刊朝日」最新号に、“春の情報番組改編”に関する特集記事が掲載されました。

この記事の中で、各番組について解説しています。


飛躍!迷走?春の情報番組改編


●フジテレビ「直撃LIVE グッディ!」

この春の番組改編で、年間視聴率3位に沈むフジテレビが仕掛けている。社運を賭けて切り崩しを狙うのは、昨年の年間視聴率三冠王である日本テレビの「情報ライブ ミヤネ屋」(午後1時55分~)だ。

フジが今回、最も力を入れたのが“曰く付き”とされる午後の時間帯の変革だ。2012年からの「知りたがり!」は1年で終了、13年からの「アゲるテレビ」も半年で打ち切りと、情報番組は苦戦から抜け出せずにいる。

起死回生を狙ったのが、15年も報道番組「スーパーニュース」のメインキャスターとして君臨した“女王”安藤優子と、バラエティー「トリビアの泉」でMC経験がある俳優の高橋克実を情報番組「直撃LIVE グッディ!」(午後1時55分~)の進行役に起用したこと。

終了後に続けて放送される報道番組「みんなのニュース」(午後3時50分~)と合わせた5時間を生放送に切り替えた。その背景には、独走状態の「ミヤネ屋」の存在があった。

「ミヤネ屋」は近年、午後の時間帯では唯一の生放送枠として、注目を集めた記者会見や事件を独占して報じてきた。その高視聴率番組にフジが果敢にも挑んだ、まさに「社運を賭けた勝負」なのだ。フジ社員が解説する。

「上層部は『グッディ!』では特に芸能ネタの強化をはかり、『ミヤネ屋』に対抗しろと指示している。『ここで勝てないとフジは勝てない』とまで言われています。視聴率を上げて、その後のゴールデン番組にも弾みをつけたいと考えているのです」

初回放送は、連ドラで医師役を演じる斎藤工がわざわざ白衣姿で登場した。すると安藤は、

「私27年間ニュースをやってきて、それが終わった途端、39度の熱が出たんです。今日も本調子じゃないの。診てほしい!」

と、相変わらずの報道愛をチラつかせつつも、セクシー俳優にノリノリで絡んだ。が、トップニュースは「三菱電機の液晶テレビが突然真っ暗になるトラブル」と地味な上、芸能ニュースを解説する週刊女性編集部の荒木田範文氏の肩書をテロップで「週刊文春」と間違えて訂正するというバタバタの展開だった。

その分、首位にある「ミヤネ屋」はそつのなさが際だった。司会の宮根誠司はいつもどおりの笑みを浮かべ、「他局も変わりましたから」とあえて触れた。リニューアルしたスタジオセットは「大塚家具です。全部」と時事ネタでボケる余裕を見せつけ、結果は視聴率に顕著に表れた。

「グッディ!」は第1部3.6%、第2部2.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)だったのに対し、「ミヤネ屋」は7%台。ダブルスコアでフジが惨敗した。

上智大の碓井広義教授(メディア論)が分析する。

「安藤さんは今までの夕方のニュースと変わらない印象。彼女は顔に出るタイプで、やわらかいネタでの反応の鈍さが視聴者にはわかりやすかった。常に『私が』と前に出ていこうとする安藤さんに対し、高橋さんはまだ自分をどう位置づけるかがつかみきれず、制作側もそこが見えておらず、視聴者もどう見ていいのかわからなかった」


前出のフジ社員も言う。

「安藤さんが自分の言いたいことを半分に抑え、『オバちゃんキャラ』になりきれたらという意見も出ています。ただ、スパルタな安藤さんと、テンパった自分を隠さない高橋さんのコンビが夫婦漫才のようなやりとりでハマってくると数字は上がるのではないか」

(週刊朝日 2015年4月24日号より)

週刊現代で、「昭和の英雄」マイ・ベスト3を選ぶ

2015年04月17日 | メディアでのコメント・論評



発売中の「週刊現代」最新号に、「昭和の英雄 マイ・ベスト3」という特集が掲載されました。

タイトル:
56周年&通算2800号記念
有名人100人が選んだ
「昭和の英雄」マイ・ベスト3
トップ30を発表(前編)


この記事で、選者の一人となっています。


私が「マイ・ベスト3」に選んだのは・・・・

長嶋茂雄
昭和30年代に少年時代を過ごした者にとって理屈抜きのヒーロー。あの頃は野球中継といえば巨人戦ばかりで、日本中の子どもたちが背番号3に憧れ、草野球をする時もサードを守りたいと思ったものだ。何より、あの天性の明るさが魅力だった。デビュー時の4打席フルスイングによる連続三振。日本プロ野球史上初の天覧試合での劇的なサヨナラホームラン。引退に際しての「我が巨人軍は永久に不滅です!」の言葉。それらすべてが物語であり伝説だ。

石原裕次郎
映画が“娯楽の王様”だった時代がある。次に来たのが、お茶の間にテレビが君臨した時代だ。石原裕次郎は、この2つの時代をスターとして生き抜いた稀有な俳優である。日活で量産されたプログラム・ピクチャーも、「太陽にほえろ!」や「西部警察」などのアクション・ドラマも、製作の先頭に立った映画「黒部の太陽」も、見る者を元気づけ、明日へと向かわせる力があった。また、病に倒れても、裕次郎は裕次郎であり続けた。自らが生きた伝説であることを熟知しており、大衆の願望に殉じた、ヒーローらしい最期だった。

三島由紀夫
昭和の年号がそのまま年齢と重なっていた、まさに昭和の作家だ。言葉と肉体とで文学を生きた三島は、“文士の時代”を体現した最後の一人ではないだろうか。昭和20年代から40年代半ばまで、文学のみならず、文化の最前線に立ち続けた驚くべき才能。今年は生誕90年であり、没後45年にあたる。衝撃的な最期は今も謎に満ちており、作品が読み継がれるのと同様、三島由紀夫という物語は続いている。




そして、100人が選んだ「ベスト30」の上位は・・・

1位 長嶋茂雄
2位 美空ひばり
3位 田中角栄
4位 王 貞治
5位 本田宗一郎
6位 黒澤 明
7位 手塚治虫
8位 力道山
9位 高倉 健
10位 古橋広之進




(週刊現代 2015年4月25日号)


・・・・ちなみに、私が長嶋茂雄と共に選んだ石原裕次郎は14位、三島由紀夫は22位でした。

記事全体は、ぜひ本誌をご覧ください。


毎日放送「ちちんぷいぷい」で、自民党「NHK・テレ朝を聴取」について解説

2015年04月17日 | メディアでのコメント・論評



大阪・毎日放送の看板番組「ちちんぷいぷい」

17日に自民党が NHKとテレ朝の幹部を呼び、聴取を行う件に関して解説しました。

パネル形式での登場です。

取材を受けて話した内容のポイントが提示されており・・・・


●特定の番組を取り上げて、政権与党が関与するというのは、大きな問題。

●自民党は、「あくまで聴取」と言いますが、放送局の人間を個別に呼び出して聴取するのは、十分に「圧力」です。

●NHK、テレビ朝日 以外の放送局にとっても、「無言の圧力」となると思います。

●今回の問題で「TV報道の公正さ」についても議論されることがありますが、政党の数が増えた現在、「全党派に公正な報道」は難しいのが現状です。

●今回のように、政党個別の聴取が広がれば、「政党から見た公正さ」で番組を批判する事にもつながりかねません。

●背景には安倍政権が「テレビ報道」の影響力を恐れて、「メディアコントロール」に力を入れているのが大きいと思います。


(毎日放送「ちちんぷいぷい」 2015.04.16)

新学期、碓井ゼミもスタート!

2015年04月17日 | 大学




参加した新メンバー


先輩たち


大先輩たち


2015年度 碓井ゼミ

読売新聞で、産経新聞前ソウル支局長の帰国についてコメント

2015年04月16日 | メディアでのコメント・論評



加藤達也・産経新聞前ソウル支局長が韓国から帰国。

15日の読売新聞で、この件についてコメントしました。


「帰国ほっとしている」
産経前支局長 笑顔で「感謝したい」

韓国政府から出国禁止措置を解除された加藤達也・産経新聞前ソウル支局長(48)は14日午後7時半過ぎ、羽田空港に到着し、「帰国してほっとしている。それが正直な気持ち」と安堵の表情を見せた。

出国禁止措置は昨年8月から8か月間続き、加藤達也・前支局長の帰国は、同7月以来。

同空港で報道陣に帰国して一番やりたいことを問われると、加藤氏は「日本にいる多くの人が心配してくださったことについて、感謝したい」と笑顔で答えた。

韓国政府の出国禁止措置については「自由に移動することを制限することは、非常に大きい問題だ」と延べ、「今後の裁判ではしっかりと主張が受け入れられるよう、論点を整理しながら分かりやすく説明していきたい」と力強く語った。

加藤氏は最後に、「どうもお世話になりました」と一礼した後、同社幹部に付き添われながら、大手町の産経新聞東京本社に車で向かった。

8か月もの出国禁止措置については、韓国内でも問題視する意見があった。

ある放送局記者は、「事実上の拘束だったが、過剰な対応だった。産経新聞が証人出廷を保証すると言っており、欠席することは考えにくかった」と指摘。

刑事事件に詳しい韓国の弁護士も、「もっと早く解除すべきだった。シフが最も重視していた『大統領密会説』で虚偽との結論が出たから踏み切ったのだろうが、判断が遅すぎた」と関奥検察の対応を批判した。

一方、日本国内では改めて、出国禁止措置を続けた韓国政府を非難する声が上がった。

ジャーナリストの田原総一朗さんは、「加藤氏が帰国できたのはよかった。そもそも、(出国禁止は)ジャーナリズム、そして表現の自由、報道の自由に対する弾圧であり、とんでもない措置だった」と話した。

また、碓井広義・上智大教授(メディア論)は、「日本の報道各社が一貫して韓国政府の対応を批判してきたことも、今回の解除につながったのだろう」とした上で、「これで問題が解決したわけではない。加藤氏は起訴されたままで、報道の自由が脅かされていることには変わりない。引き続きマスコミ全体にかかわる問題として注視していくべきだ」と述べた。

(読売新聞 2015.04.15)





“北海道産”ドラマ「不便な便利屋」に期待

2015年04月15日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今回は、テレビ東京のドラマ24「不便な便利屋」を取り上げました。


「不便な便利屋」(テレビ東京系)
北海道にこだわり続ける鈴井貴之の
“東京の作り手”たちへの挑戦状

北海道を舞台にしたドラマといえば、いまだに倉本聰脚本「北の国から」が挙がる。しかし今後はこのドラマが加わるかもしれない。「水曜どうでしょう」で知られる鈴井貴之が脚本・監督を務める、「不便な便利屋」(テレビ東京系)だ。

主人公は脚本家の竹山純(岡田将生)。演出家とぶつかり、東京を離れて北海道に来た。バスで富良野へ向かうが、猛吹雪で立ち往生。名も知らぬ町で途中下車する。ちなみに、純がバスの車中で読んでいたのは倉本聰のエッセイ集「さらば、テレビジョン」だ。

純は飛び込んだ居酒屋で、梅本聡一(遠藤憲一)の生き別れた息子だと勘違いされ大歓迎を受ける。酔って携帯と財布を失くし、便利屋である聡一の世話になるが、なかなか町を出て行けない・・というのが先週の初回だ。

冬の北海道で雪のトラブルは日常だ。道路封鎖や町の孤立も珍しくない。北海道出身・在住の鈴井は、ローカルならではの暮らしと人情をユーモアを込めて描写。登場人物たちの不思議なキャラクターと相まって、独自のドラマ空間を生んでいる。

主人公の純という名前や富良野は「北の国から」を、また便利屋は瑛太と松田龍平の「まほろ駅前番外地」を想起させるが、単なるオマージュではない。むしろ北海道にこだわり続ける鈴井の、“東京の作り手たち”に対する挑戦状とみた。

(日刊ゲンダイ 2015.04.14)


今期連ドラ、続々スタート中

2015年04月14日 | テレビ・ラジオ・メディア


先週から、今期の連ドラが続々スタート。

第1回目は、もちろん全部、見ています。

ちなみに、主なドラマの初回視聴率は・・・・

 ・ようこそ、わが家へ(フジテレビ) 13.0%

 ・心がポキッとね(フジテレビ) 10.4%

 ・医師たちの恋愛事情(フジテレビ) 10.3%

 ・アルジャーノンに花束を(TBS) 11.5%

 ・天使と悪魔(テレビ朝日) 6.4%

 ・ドS刑事(日本テレビ) 12.7%



「ほ、ほ~」という数字が並んでいますね。

今週は、「キムタクがフジからテレ朝へ」で話題の「アイムホーム」や、堺雅人の「Dr.倫太郎」(日本テレビ)も放送開始。

いずれ、いろんな媒体で論評していく予定です。


えーと、明日(火)発売となる「週刊朝日」の特集記事、「飛躍!迷走? 春の情報番組改編」で、各番組について解説しています。




ウディ・アレン監督の新作は、プチ肩透かし!?

2015年04月13日 | 映画・ビデオ・映像



ウディ・アレンの新作が公開されました。

『マジック・イン・ムーンライト』、見に行かないわけにはいきません。


この世に魔法や超能力など絶対に存在しないと信じる英国人マジシャン、スタンリー(コリン・ファース)が、ある大富豪が入れあげている米国人占い師の真偽のほどを見抜いてほしいと友人に頼まれる。すぐさま自信満々にコート・ダジュールの豪邸に乗り込むスタンリーだったが、その占い師ソフィー(エマ・ストーン)が連発する驚くべき透視能力に圧倒され、人生観を根底からひっくり返される。しかも容姿も性格も抜群にチャーミングな彼女に、不覚にも魅了されてしまい……。




舞台は1920年代の南仏。

リゾートと上流社会。

マジシャンと美人占い師。

ロマンチック・コメディ。

・・・てなことはともかく、ウディ・アレンはなぜ、こういうお話を映画にしたかったんだろう。

何を描きたかったんだろう。

ストーリーが、「あれれ?」「こんなですか?」という感じで、どうにも、いまいち面白みに欠けるのです。

ウディ・アレン節ではあるし、おしゃれかもしれないのですが、正直言って、やや退屈でした。

天文台のシーンは素敵でしたが、全体としては、うーん、残念。

ま、時には、こういうこともあるぞ、ということで。

監督は、まだまだ元気そうなので、次回作に期待しておきます。