碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」脚本賞について

2019年02月03日 | メディアでのコメント・論評


大石静氏が『大恋愛』で脚本賞 
戸田×ムロの恋人役に「これはいける」
【18年10月期ドラマ賞】


オリコンによるエンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』が主催し、有識者と視聴者が共に支持する質の高いドラマを表彰する「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」が、18年10月期(第14回)の結果を発表。「脚本賞」は、金曜ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』でオリジナルの純愛物語を紡いだ大石静氏が受賞した。


『セカンドバージン』(NHK総合)など、オリジナルによるヒット作を多数手がけ“ラブストーリーの名手”とも称される大石氏が今回挑んだのは、若年性アルツハイマーにおかされる女医(戸田恵梨香)と、彼女を明るく支え続ける元小説家の男(ムロツヨシ)の10年間を描く純愛ドラマ。

時代性やテレビ視聴スタイルの変化により、近年はこうしたラブストーリー作品が苦戦を強いられる状況にあるなか、大石氏は「恋人が記憶を失っていく」という使い古されたフォーマットを用いながら、見事に“愛の奇跡”を描き上げた。

同作が切なくも終始明るさを纏っていたのは、劇的でありながらも地に足の着いたストーリー展開、登場人物の魅力的なキャラクター、そしてウィットに富んだ会話・やり取りがあったからこそと言えるだろう。

有識者からは、「病を抱えたヒロインとそれを支える男。2人の“生きる覚悟”には、最後まで見届けたいと思わせるだけの現代性と切実感があった」(碓井広義氏/上智大学文学部新聞学科教授 メディア文化論)、「“悲しいラストへの旅路”という全体像が見えているなかでの物語展開はやはり見事」(境真良氏/国際大学GLOCOM 客員研究員)との声が寄せられた。なお、大石氏の受賞コメントは以下のとおり。

◆脚本賞:大石静氏

本当にうれしく思います。光栄のひと言に尽きます。戸田恵梨香さん、ムロツヨシさんの驚きのカップルがキャスティングできた時に、これはいけるかもしれないと思いました。そして、撮影現場や完成した映像を観て、ラブラブなシーンが、観る人をこんなに幸せにするコンビは、他にいないと確信しました。『大恋愛』という大仰なタイトルは最初はイヤだったのですが(笑)、終わってみれば、このタイトルにふさわしいドラマだったと思っています。

※「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」とは
オリコンのグループ会社oriconMEが発行する、週刊エンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』が主催し、有識者と視聴者が共に支持する「質の高いドラマ」を表彰する賞。視聴者の評価は、『コンフィデンス』が毎週、約700名を対象に調査しているドラマ満足度調査「オリコンドラマバリュー」の累積平均データを使用。審査員の投票結果と合計したうえで、最終的には有識者15名による審査会で決定する。

(オリコン 2019.02.01)



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異色作にして意欲作 大河ドラマ「いだてん」

2019年02月02日 | 「北海道新聞」連載の放送時評


<碓井広義の放送時評>
異色作にして意欲作 
大河ドラマ「いだてん」

1月に始まったNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」。現時点での話題は内容よりも視聴率の低さばかりだ。制作側も視聴率という物差しだけで判断されるのは不本意だろう。いや、この状況も想定内だったのか。なぜなら、元々今回の大河は明らかに異色であり、異端であるからだ。

まず、物語の舞台となる「時代」の問題がある。昭和39年(1964年)の東京オリンピックに至るまでの話であり、明治から昭和を描く「近現代劇」である。大河視聴者の多くが好む戦国時代や幕末のドラマではない。

次に登場する「人物」だ。織田信長や豊臣秀吉、坂本龍馬といった、よく知られる歴史上の有名人ではない。日本人として初めてオリンピックに参加したマラソンランナー、金栗四三(かなくりしそう)。昭和の東京オリンピックの実現に尽力した水泳指導者、田畑政治(たばたまさじ)。スポーツの世界では有名な2人かもしれないが、一般的にはこのドラマで初めて知ったという人が珍しくない。来年の東京オリンピックへとつながる、「知られざる男たち」の物語なのだ。

さらに「出演者」のこともある。金栗を演じるのが歌舞伎の中村勘九郎で、田畑は舞台出身の阿部サダヲだ。どちらも高い演技力の個性派だが、国民的ドラマの“顔”としては、かなり凝ったキャスティングと言える。

つまり「いだてん」は、大河で扱われるには馴染(なじ)みのない時代、知らない人物、そしてマニアックな俳優という異例づくしの作品なのだ。時代劇ではないことを知った段階で、今年はパスすると決めた視聴者も少なくない。若い視聴者の新規参入を計算しても、高視聴率を期待できるものではなかったはずだ。

では、「いだてん」の価値はどこにあるのか。それはニュータイプの大河が楽しめることに尽きる。たとえば語り手は伝説の落語家、古今亭志ん生だ。昭和期の名人を演じるのはビートたけしで、明治期が森山未来。同じドラマの中に複数の語り手がいることや、頻繁に時代がジャンプするあたりは、いかにも宮藤官九郎の脚本らしいし、仕掛けとしても面白い。ただ、ビートたけしの言葉が聞き取りづらいことが難点だ。

また金栗だけでなく、やがて彼の妻となる春野ヤス(綾瀬はるか)、そして恩師である嘉納治五郎(役所広司)などが見せてくれる、明治の人々の真っすぐな生き方も徐々に共感を呼ぶのではないか。この確信犯的異色作、もしかしたら大河ドラマの可能性を広げる、画期的な1本になるかもしれない。

(北海道新聞 2019.02.02)

【気まぐれ写真館】 我が家の梅、満開!

2019年02月02日 | 気まぐれ写真館
2019.02.02

岩手日報のコラムで・・・

2019年02月01日 | メディアでのコメント・論評


人気アイドルグループ「嵐」が2020年末…

人気アイドルグループ「嵐」が2020年末をもってグループ活動を休止する。衝撃は列島を駆け抜け、メンバー5人が臨んだ記者会見や一連の報道は、日を追うごとに影響を広げている

▼今年でデビュー20周年を迎える嵐は、いずれも30代後半。リーダーの大野智さんが語った「自由な生活」「見たことのない景色を見たい」との言葉の数々に、引き換えにしてきたプライベートの大きさを感じる

▼歌やバラエティーに、テレビで彼らを見ない日はない。それもそのはず。わが家では出演番組を録画し、子どもが見ている。数年前だろうか。メンバーの一人が観光地を訪れるお忍び旅行企画があり面白かった

▼帽子を目深にかぶり眼鏡の、どこかあか抜けない変装ぶり。本人と気付かれると、始めたばかりの旅も終了となる。あえて声を掛けない人もいたが芸能人のオーラを隠しきれない場合が多かったように記憶する

会員制交流サイト(SNS)が普及し、「一億総ジャーナリスト時代」(碓井広義上智大教授)とも言う。スマホを手に、あの人もこの人もいろんなことをつぶやく。スターにとって何とも窮屈な世間だろうか

▼ところが今、ファンの間では「#大野くんの夏休み」と寄り添う気持ちが拡散している。アイドルでなくても折々に身の振り方を考えるのは同じだ。人生は一度きり。

(岩手日報 2019.01.31)



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岩手日報で、「嵐」休止について解説

2019年02月01日 | メディアでのコメント・論評


SNS時代 スター苦難 「嵐」活動休止発表 
言動拡散、強まる重圧 
「引退増える」有識者が予測

人気グループ「嵐」が2020年末をもっての活動休止を発表した。芸能人は人気が高まれば高まるほど公私の別なく注目される立場になる。会員制交流サイト(SNS)の普及でスターを演じ続ける重圧が強まり、芸能活動の”転機”をファンにどう伝えるかも問われている。

「自由に生活をしてみたい」。27日夜に急きょ行われた記者会見で、嵐のリーダー大野智さんは率直に心情を語った。

タレントの認知度や「見たい」「知りたい」との意向をアンケートしたアーキテクト社の「タレントパワーランキング」では、嵐は桑田佳祐さんや宇多田ヒカルさん、福山雅治さんらを上回り「歌手・ミュージシャン」で1位。男女問わず幅広い世代に人気だ。

嵐の5人は歌の他、テレビのバラエティー番組やドラマ、映画でも活躍。国民的スターとしてあらゆる場面で注目され、批評の対象にもなってきた。

音楽マーケッター臼井孝さんは「芸能人の生きづらさが高まっている。SNSで批判や中傷が広まって活動を続けられない芸能人も出ており、活動休止や引退は今後増える」と予測する。

アイドルが芸能マスコミだけに気を付けていれば良かった時代と異なり、今はSNSの発達で「一億総ジャーナリスト時代」だと上智大の碓井広義教授(メディア文化論)も指摘する。

「自分の言動が思わぬ形で拡散してしまう時代なので、10~20年前のアイドルとは違うプレッシャーがあるだろう」

その上で嵐の会見について「運動体としての『嵐』を可能な限り自分たち5人でコントロールする意思を感じた」と語る。16年のSMAP解散を巡る騒動を、同じジャニーズ事務所の後輩に当たる嵐のメンバーが見て「『着陸』の仕方の大切さを感じたのではないか」。

話し合いを重ねたことを強調し、約2年後のグループ活動の休止を、時に笑顔を交えながら穏やかに伝えた嵐の”ソフトランディング(軟着陸)”。

「今回、嵐が示した形は、さまざまなグループや芸能人が今後、休止や解散などの局面に立った際のロールモデルになるのではないか」と碓井教授はみている。


(岩手日報 2019.01.29)




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