碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「花咲舞」はもちろん、『虎に翼』の「寅子」や「よね」も黙ってない!

2024年04月19日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

「花咲舞」はもちろん、

『虎に翼』の

「寅子」や「よね」も黙ってない!

 

「強い群像劇」であること

NHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』。主人公は、法律を学ぶ猪爪寅子(いのつめともこ、伊藤沙莉)です。

これまで、昭和6年のお見合い事件。昭和7年の明律大学女子部への入学。2年生になった昭和8年の「法廷劇」騒動などが描かれてきました。

その特徴を挙げるなら、朝ドラでは珍しい「強い群像劇」になっていることでしょう。

ヒロインである寅子だけでなく、共に学ぶ女子学生たちの人物像もきちんと造形しています。

華族の令嬢である桜川涼子(桜井ユキ)は、語学に秀でているだけでなく、行動やファッションが雑誌などで伝えられる有名人。

最年長の同期生で、既婚者の大庭梅子(平岩紙)には弁護士の夫と3人の息子がいます。

朝鮮半島からの留学生、崔香淑(ハ・ヨンス)は日本語が堪能。兄の勧めで進学しました。

そして、短髪・男装で異彩を放つ同級生がいます。いつも何かに怒っているかのような表情と、遠慮会釈もない言動で不穏な空気を漂わせる、山田よね(土居志央梨)。

単なる「周囲の人」ではない彼女たちの存在が、物語に広がりと奥行きを与えています。

「戦前社会」の中の女性

第3週では、よね自身が、その生い立ちから現在までの軌跡を寅子たちに語りました。戦前社会の中で、女性であることからくる生きづらさを人一倍背負ってきたことが明かされたのです。

それは、よねがこれまでに発した言葉の中に凝縮されていました。

「女は常に虐げられて、ばかにされている。その怒りを忘れないために、あたしはここ(裁判の傍聴)に来てる」

さらに、「そもそも男と女、同じ土俵に立ててすらいなんだ!」

当時の女性には参政権がありませんでした。家督(家族の代表者としての地位)も基本的には継げません。遺産も相続できません。

姦通罪(配偶者が別の異性と性交渉をもつことで成立する罪)も女性だけに適用されます。一方、夫は家の外に「囲い者」の女性が何人いようと、問題視されません。

この時代の民法では、女性は戸主である父親や夫の庇護下に置かれる存在であり、社会的には、はるかに不平等な立場だったのです。

寅子やよねも黙ってない

よねは、「あたしは本気で弁護士になって世の中を変えたいんだよ!」と訴えます。

「あたしには(涼子のように)お付きの子もいない。日傘や荷物を持たせたりしない。(梅子のように)おにぎりを人に施す余裕も、(香淑のように)働かなくても留学させてくれる家族もいない。大学も仕事も一日も休まず必死に食らいついてる。だから、余裕があって恵まれたやつらに腹が立つんだよ」

憤りを抑えられない、よねは・・・

「この社会は女を無知で愚かなままにしておこうとする。恵まれたおめでたいアンタらも大概だが、戦いもせず現状に甘んじるやつらはもっと愚かだ」

すると、寅子が「それは絶対に違う!」と反論します。

「いくらよねさんが戦ってきて立派でも、戦わない女性たちや戦えない女性たちを愚かなんて言葉でくくって終わらせちゃ駄目。それを責めるのは、もっと駄目!」

脚本家・吉田恵里香さんによるセリフが見事でした。

「戦わない女性たち」や「戦えない女性たち」をも巻き込んでいく姿勢こそ、モデルである三淵嘉子の思想であり、主人公・寅子の基本理念でもあるからです。このドラマのテーマが浮上してきます。

『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)の初回。花咲舞(今田美桜)は、常に女性を見下す銀行支店長に怒っていましたが、90年前の寅子やよねも黙っていません。

 


【新刊書評2024】 鈴木おさむ『最後のテレビ論』

2024年04月18日 | 書評した本たち

 

 

放送作家が語る、

伝説のバラエティー番組の裏側と

個性的なテレビの裏方たち

 

鈴木おさむ『最後のテレビ論』

文藝春秋 1870円

 

職業としての「作家」はイメージできるが、「放送作家」はやや心もとない。一体、何をする人なのか。

主戦場はバラエティー番組だ。新番組の企画はもちろん、具体的なネタを出したり、構成台本を書いたりする。番組責任者であるプロデューサーにとって、大物チーフ作家は頼れるブレーン的パートナーだ。

著者は『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)や『SMAP×SMAP』(同)といったヒット番組に携わってきた放送作家だ。加えて漫画『ONE PIECE』の映画版や、放送が終了したばかりのドラマ『離婚しない男』(テレビ朝日系)の脚本なども手掛けてきた。

そんな著者が今年3月末に放送作家を辞めた。昨年秋に宣言し、仕事の整理など準備を進めてきたのだ。本書の上梓も、その一環だと言っていい。32年に及ぶ放送作家体験が凝縮された一冊となっている。

大きな読みどころは二つある。まず、ヒット作の裏側だ。たとえば、企画書を見て一番ワクワクしたという『¥マネーの虎』(日本テレビ系)。クイズ番組の賞金は上限が200万円というルールを、「投資バラエティー」という新機軸で突破していく。

また、一問一答が当たり前だったクイズ番組に逆らって、複数の問題が常に画面に表示されるようにしたのが、『Qさま!!』(テレビ朝日系)の「プレッシャーSTUDY」だ。視聴者が一瞬も目を離せない、新しいタイプのクイズとなった。

もう一つは、著者が一緒に仕事をしてきたテレビの裏方たちだ。『SMAP×SMAP』の「BISTRO SMAP」に高倉健をゲストとして招こうと、1年間に50通の手紙を送ったプロデューサーがいる。

『24時間テレビ』(日本テレビ系)のエンディングで、定番の曲「サライ」の後に「世界に一つだけの花」の大合唱を仕掛けたマネージャーがいる。

伝説を作ってきたのは、常識を疑い、壊していく熱狂の人だ。

(週刊新潮 2024年4月11日号)


「くるり~誰が私と恋をした?~」テーマは、自分って何?

2024年04月17日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「くるり~誰が私と恋をした?~」

「自分って何?」という

普遍的テーマが潜んでいる

 

火曜ドラマ「くるり~誰が私と恋をした?~」(TBS系)。主演は、これがゴールデン・プライム帯での連ドラ単独初主演となる生見愛瑠だ。

緒方まこと(生見)は階段からの転落事故で記憶を失ってしまう。名前はもちろん、自分に関する情報は皆無。唯一の手掛かりは、ラッピングされた男性用の指輪だった。

やがて彼女を知っているという男たちが現れる。会社の同僚で「唯一の男友達」と称する朝日結生(神尾楓珠)。フラワーショップの店主で、「元カレ」だという西公太郎(瀬戸康史)。さらに偶然出会った年下の青年、板垣律(宮世琉弥)も何やら訳アリふうだ。

主人公が記憶喪失という設定のドラマは珍しくない。たとえば木村拓哉主演「アイムホーム」(テレビ朝日系)がそうだったように、自分が何者で、何をしてきたのか。家族も含め周囲の人たちにとっての自分は、一体どんな人間だったのか。それが分からないことがサスペンスを生むからだ。

このドラマも、まことと3人の男をめぐる一種のミステリーになっている。しかし、それ以上に注目したいのは、「過去の自分」探しと「未来の自分」づくりが、同時進行していく物語の新しさだ。そこには「自分って何?」という普遍的なテーマが潜んでいる。

記憶喪失モノは暗くなりがちだが、生見の明るさを生かした出色のラブコメになりそうだ。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2024.04.16)


今夜、見たい番組~クロ現『追跡「スポーツ賭博」の闇』

2024年04月16日 | テレビ・ラジオ・メディア

 

 

クローズアップ現代

追跡「スポーツ賭博」の闇

水原容疑者に何が

 

 2024年4月16日(火) よる7時30分~

 

大谷翔平選手の通訳を務めていた水原容疑者の違法賭博問題。

“胴元”のマシュー・ボウヤー氏が事件後、初めてNHKのカメラの前に姿を見せた。そこで語ったこととは…。

アメリカの多くの州で合法とされる「スポーツ賭博」は、若者を中心に爆発的な広がりを見せる一方、ギャンブル依存症に陥る事案も相次ぐ。

日本では違法行為だが、勧誘サイトなどからアクセスしてのめり込む人も。世界で広がるスポーツ賭博の闇に迫る。

(番組サイトより)

 


【気まぐれ写真館】 信州で、道の駅

2024年04月15日 | 気まぐれ写真館

道の駅「安曇野松川」

松川村特別シンボル「すずむし りん太くん」

 


【気まぐれ写真館】 信州で、蕎麦

2024年04月15日 | 気まぐれ写真館

大好物の「馬刺し」

名物の「ざる蕎麦」

 


【気まぐれ写真館】 信州で、法事

2024年04月15日 | 気まぐれ写真館

大町市・青龍山天正寺

 


【新刊書評2024】 市毛良枝『73歳、ひとり楽しむ山歩き』ほか

2024年04月15日 | 書評した本たち

 

 

「週刊新潮」に寄稿した書評です。

 

市毛良枝『73歳、ひとり楽しむ山歩き』

KADOKAWA 1650円

山は眺めるものと思っている人間は、登山と聞くとややひるむ。重い荷物、苦行、危険といった言葉が思い浮かぶからだ。しかし、山歩きなら少しハードルが下がる。著者によれば、山は「自分らしくなれる場所」であり、「自分で見聞きしたことしか信じない」ようになったという。また自然を味わうだけでなく、山でしか出会えない人たちの魅力も伝わってくる。眺めても歩いても「山は文化」だ。

 

福田恆存『福田恆存の言葉~処世術から宗教まで』

文春新書 1100円

今年は福田恆存の没後30年にあたる。本書は1976年から翌年にかけて行われた全8回の講演録だ。常識と思われている「近代化」への批判も含め、福田ならではの視点で語っている。個人が人生を生きていくための「処世術」再評価。また社会生活は「自分以外は敵だ」というかたちで営まれており、敵情視察として「状況を読む」必要があると説く。生き方を「技術の問題」とする発想が新鮮だ。

 

尾崎俊介

『アメリカは自己啓発本でできている

 ~ベストセラーからひもとく』

平凡社 3080円

18世紀末にアメリカで誕生した「自己啓発本」。アメリカ文学・文化が専門の著者が、いわば「出世指南書」であるこのジャンルを徹底分析していく。成功への道をひらくための「自助努力系」と「引き寄せ系」の2大潮流にはじまり、ポジティブ思考、アメリカ流お金持ち哲学などが並ぶ。ちなみに本国以外で最も売れているのが日本だ。つい笑ってしまう「トホホ系」啓発本の実態も明かされる。

(週刊新潮 2024.04.11号)

 


4月14日(日)『談談のりさん+(プラス)』に出演

2024年04月13日 | テレビ・ラジオ・メディア

 

『談談のりさん+(プラス)』に

レギュラー出演することになりました。

毎月第2日曜の午前6時15分からです。

 

 

 

UHB 北海道文化放送

『談談のりさん+(プラス)』

2024年4月14日(日)

ごぜん6時15分~

 

下記の番組サイトで

「ノーカット完全版」を視聴できます。

 

談談のりさん+(プラス) | 番組情報 | UHB 北海道文化放送

 

 

 

 

次回の放送は、

2024年5月12日(日) 

ごぜん6時15分~

 

 


「下山事件」という闇

2024年04月12日 | 「しんぶん赤旗」連載中のテレビ評

 

 

「下山事件」という闇

 

日本がまだ占領下にあった1947年7月。行方が分からなくなっていた国鉄の下山定則総裁が、列車に轢かれた死体となって発見された。その後、犯人はもちろん、自殺か他殺かも特定されないまま捜査は打ち切られ、迷宮入りとなった。いわゆる「下山事件」である。

3月30日の夜、NHKスペシャル「未解決事件File.10 下山事件」が放送された。これまでに「グリコ・森永事件」や「地下鉄サリン事件」などを扱ってきたシリーズであり、前回は「松本清張と帝銀事件」だった。そして今回が〈戦後最大のミステリー〉と呼ばれてきた下山事件だ。

この事件に関しては、松本清張「日本の黒い霧」をはじめ、近年の柴田哲孝「下山事件 最後の証言」や森達也「下山事件」などで様々な考察が行われてきた。現時点で、番組としての新たな視点や知られざる事実を提示できるのか。そこが注目ポイントだった。

番組を見て驚いた。下山事件を担当した主任検事の名は布施健。後に検事総長として「ロッキード事件」の捜査を指揮し、田中角栄元首相を逮捕したことで知られる人物だ。制作陣は布施たちが残した700ページにおよぶ膨大な極秘資料を入手。これを4年かけて分析し、取材を進めてきたのだ。

浮上してきたのはソ連のスパイを名乗り、下山暗殺への関与を告白した“李中煥”という人物の存在だ。やがて李がGHQの秘密情報組織「キャノン機関」の密命を受けていた可能性が明らになっていく。いわゆる「二重スパイ」である。

さらに制作陣は、キャノン機関に所属していた人物をアメリカで発見する。李の写真を見せると、面識があったと証言した。

またGHQの下部機関であるCIC(対敵情報部隊)にいた人物の遺族と面談。本人が「あれは米軍の力による殺人だ」と語ったことを聞き出す。

米ソ対立が深まる中、米国は有事の際に国鉄を軍事輸送に使うことを計画。下山亡き後の朝鮮戦争ではそれが実施された。事件は米国の反共工作の中で起きていたのだ。

番組は森山未來が布施検事を演じたドラマ編と、ドキュメンタリー編の二部構成。両者は互いに補完し合いながら、現在の日本社会に繋がる戦後の闇に光を当てていた。

(しんぶん赤旗「波動」2024.04.11)

 


【気まぐれ写真館】 2024.04.11の多摩川

2024年04月11日 | 気まぐれ写真館

2024.04.11

 


「アリバイ崩し承りますスペシャル」 浜辺美波は異色探偵がよく似合う

2024年04月11日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「アリバイ崩し承りますスペシャル」

浜辺美波は異色探偵がよく似合う

 

6日夜に放送された、浜辺美波主演「アリバイ崩し承りますスペシャル」(テレビ朝日系)。2020年の連ドラが単発形式で復活したのだ。

主人公は、亡き祖父から古い時計店と「アリバイ崩し」の能力を受け継いだ美谷時乃(浜辺)だ。原作は大山誠一郎の同名小説だが、ドラマは大きなアレンジを加えている。

時乃にアリバイ崩しを依頼するのが新米刑事ではなく、中年の管理官(安田顕)であること。もうひとつが、刑事の話を聞くだけで推理していた時乃を、現場にも行けるようにしたことだ。

今回の事件の被害者は、1人暮らしの資産家・富宰建一(春海四方)。重要参考人となった3人の甥や姪の中で、犯人の最有力候補は元シェフの朝倉正平(矢本悠馬)だった。しかし、朝倉には鉄壁のアリバイがあった。

宅配便のシステムを利用したトリック。替え玉によるアリバイ工作。時乃はそれらを見破っていくが、朝倉は逆転劇を仕掛けてくる。全体はライト感覚なミステリードラマでありながら、見る側を最後まで引っ張るストーリー展開は本格的だ。

何より、少ない手がかりをもとに明るく楽しそうに「アリバイ崩し」に挑む異色探偵が、浜辺によく似合う。前作から4年。朝ドラ「らんまん」や映画「ゴジラ-1.0」などを経て、硬軟自在な表現にも磨きがかかっている。

いずれ連ドラの新シーズンも期待できそうだ。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2024.04.10)


【気まぐれ写真館】 さくら散策

2024年04月10日 | 気まぐれ写真館

2024.04.10


朝ドラ『虎に翼』のスタートダッシュで、伊藤沙莉が見せた秀逸なヒロイン像

2024年04月09日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

朝ドラ『虎に翼』のスタートダッシュで、

伊藤沙莉が見せた秀逸なヒロイン像

 

4月と10月の改編期、NHK朝ドラの新たなヒロインと出会います。

女性であることは分かっていますが、毎回「どんな人なんだろう、どんな人生を歩むんだろう」と興味と期待がふくらみます。

最近は実在の人物をモデルとした主人公が続いていますね。『らんまん』は男性でしたが、植物学者の牧野富太郎。『ブギウギ』では歌手の笠置シヅ子でした。

モデルは三淵嘉子(みぶち よしこ)

そして今回の『虎に翼』は、三淵嘉子がモデルです。

牧野富太郎や笠置シヅ子と比べると、誰もが「ああ、よく知ってるよ」という人物ではありません。しかし、なかなか凄い女性なのです。

大正3年(1914)生まれの嘉子は、昭和13年(1938)に現在の「司法試験」に合格。太平洋戦争が始まる1年前、昭和15年(1940)に日本初の女性弁護士の一人となります。

戦後は、まだ占領期の昭和24年(1949)に裁判官(判事補)。テレビ放送が始まる前年、昭和27年(1952)に初の女性判事。

そして、「あさま山荘事件」が起きた昭和47年(1972)には、初の家庭裁判所所長に就任しました。

司法界の「ガラスの天井」を次々と打ち破っていった嘉子の軌跡は、戦前・戦後を貫く「試練の女性史」でもあるのです。

とはいえ、実際の嘉子の人柄がどうだったのかはともかく、「初の女性弁護士」「初の女性判事」と言われると、ちょっと怖そうというか、堅そうというか、ややひるんでしまいそうな感じになりませんか?

ヒロインの強い「個性」と「協調性」

このドラマでは、嘉子をモデルにしたヒロインは猪爪寅子(いのつめ ともこ)。

演じるのは、伊藤沙莉さんです。朝ドラでは、『ひよっこ』(2017年)での安部米店の娘、さおりが印象的でした。

また同じNHKのドラマ10『これは経費で落ちません!』(2019年)も記憶に残っています。主人公の森若沙名子(多部未華子)が所属する経理部の同僚、佐々木真夕。

どちらも、沙莉さんにしか出来ない個性的な役柄であり、女性の妬みやそねみもユーモラスに演じて見事でした。

スタートしたばかりの『虎に翼』でも、沙莉さんが演じることで、「初の女性弁護士・判事」から来る、堅苦しいイメージのヒロインにはなっていません。

世間の常識が、まだ「女性の幸せは結婚にあり」だった時代。自己主張する女性が疎(うと)まれていた時代に、寅子は自分なりの幸福を求めていきます。

納得がいかない事態や言動に接したときに、寅子が発する「はて?」という疑問の声は、彼女の生き方の象徴とも言えるでしょう。

強い「個性」を持ちながら、周囲を巻き込む「協調性」もそなえている。芯は強いのですが、どこか大らかな寅子のキャラクターを、沙莉さんは全身で表現しています。

極端なことを言えば、伊藤沙莉という主演俳優を得たことで、今回の朝ドラの成功は半分約束されたのではないか。そんな予感を抱かせてくれる立ち上がりでした。

 


【気まぐれ写真館】 庭の桜も満開

2024年04月09日 | 気まぐれ写真館