京都は成人式の式典の日だった。
ミセス2月に掲載されていた楽家の初代長次郎さんから16代目の篤人さんまでのお茶碗の展覧会に久しぶりに京都に行く。
「楽家一子相伝の芸術」
随分前、調べると2007年だから9年前に佐川美術館に楽吉左衛門館が新設された。
その時、訪れた時はなんだか前衛的すぎて展示室が鉄道の枕木などで作ってあって器も含めて手触りがごつごつして(触れないけど)「これでお茶とか飲めるのかな?
なんて思っていた。展示室もごわごわしていてその時の私には落ち着かなかった。
でも今回京都国立近代美術館という一風変わったところでこの大回顧展が開かるので
これは観にいかなければと思った。
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大鳥居を晴れ着を着た新成人たちがひっきりなしに行きかう。
開館前にチケット売り場の前にはすでに人が並んでいた。
まずは初代、千利休とともに歩んだ長次郎さん
「無一物」
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最近寄る年波か、美しい物を目の前にすると自然と涙が出る。
利休の空極のミニマリズムをお茶碗にするときっとこの「無一物」の何物もないシンプルさに行き着くのではないでしょうか?
「俊寛」
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先代仁左衛門が南座で演じた「俊寛」や先代勘三郎が演じた「俊寛」をなぜか思い出す。
瞬間の取り残された無念さやたどり着いた無常感が表現された黒楽茶碗だと思いました。
私は特にこの2つに心奪われました。
それと江戸時代のアバンギャルド
本阿弥光悦 雨雲
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天才光悦の自在な作陶も心踊らされ、魅力的です。
平成の現代まで一子相伝で伝統を受け継ぎながら独自の個性を発展させてきた楽家
中には養子を迎えたりした時もあるようです。
どの代の作品もそれぞれの個性が光り、なおかつ進歩しているところがすごいです。
特に太平洋戦争に駆り出されて帰ってきたときには先代がなくなっていたという14代目の
覚入さんの超モダンな作品
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これは時代を感じさせました。
何と言っても
現15代目吉左衛門さん。
時代を超えて光悦と長次郎とすべての要素を加味して今なお進化しているすごさを改めて感じました。
まさに「今」を生きている陶芸家です。
私がミセスで見てもっと現物を観たいと思った「一犁雨」
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写真はすべてお借りしましたが、現物は本当に心揺さぶられる美しさです。
時を超えて光悦さんの
「乙御前」
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と吉左衛門さんの
「梨花」
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まるで姉妹のような作品だと感じたのは私だけでしょうか?
室町~江戸~現代へ時空を超え縦横無人に錯綜する美意識、デザインや技術
掌に乗るお茶碗に込められた小さな宇宙を一つ一つがとても素晴らしい。
ぜひ、一見の価値がある展覧会です。
9年前より少し大人になった私(笑)も、もう一度佐川美術館を訪れてみようと思っています。
おまけ
1階入口にこんなお茶室も
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