■【心 de 経営】 徒然なるままに日暮パソコンに向かいて 第12段 同じ心ならん人と 真実の心の友は?
「徒然草(つれづれぐさ)」は、吉田兼好による随筆集の冒頭の文章です。作者は、兼好であるという明確な証拠はないようです。おそらく大半の方が、何らかの形で、この文章に接しているのではないでしょうか。
徒然草といいますのは、清少納言の『枕草子』、鴨長明の『方丈記』とならび日本三大随筆の一つといわれています。
高校生時代に戻った気分で、また、社会人として人生を歩み、自分の高校時代には理解できなかったり、誤解していたりすることを発見しながら、独断と偏見に満ちた、我流の解釈を僭越ながらお付けしました。
徒然なるままに、日暮パソコンに向かいて、よしなしごとを、そこはかとなく書き付けてまいります。
お届けも、徒然なるままにアップロードしますので、読者の皆様も、日暮パソコンに向かいて、末永く、徒然にご覧下さるよう、お願いします。
◆第12段 同じ心ならん人と 真実の心の友は?
兼好は、「真の友にあうことは難しいことである」、真の友とは、気持ちが通じたコミュニケーションがとれるが、そうでないことが多いと言っています。
俗世を断ち切れていないように思える兼好は、俗人の私から見ますと親しみを感じますが、このような人であっても、寂しかったのでしょうか。
◆012 原文 同じ心ならん人と
同じ心ならん人と しめやかに物語して、かしきことも、世のはかなきことも、うらなく言ひ慰まんこそうれしかるべきに、さる人あるまじければ、つゆたがはざらんと向かひゐたらんは、一人ある心地やせん。
互ひに言はんほどのことをば、「げに」と聞くかひあるものから、いささかたがふところもあらん人こそ、「われはさやは思ふ」など争ひ憎み、「さるから、さぞ」ともうち語らはば、つれづれ慰まめと思へど、げには、少しかこつかたも、われと等しからざらん人は、おほかたの由なしごと言はんほどこそあらめ、まめやかの心の友には、はるかに隔たるところのありぬベきぞ、わびしきや。
同じ心: 趣味・嗜好・意見等が同じ人
うらなし: 腹蔵ない、隔てのない
向かひゐる: 向かって座る
かこつ: 不平を言う
まめやか: 真面目な、誠実な
【要旨とコメント】
気持ちが通じ合い、気心が知れた人と、しんみりと打ち明け話などや、関心の高いこと、世間のちょっとしたことなども、お互い、隠し隔てなく話し合えますと、心も慰められ、さぞかし素晴らしいことでしょう。
しかし、そのような気心が知れた人というのは、現実には、中々いません。
大半の人とは、多少なりとも相手の気持ちに反しないようと調子を合わせて向き合っているようなことがありますが、相手がいるにもかかわりませず、あたかも自分一人だけでいるような気持ちになってしまいます。
相手に合わせるのではなく、互いに意見が異なるような間柄の人であれば、「なるほど」と同意することもあれば、意見が異なり、「自分はそうは思わない」などと反論したり、「そうだから、そうなのだ」というように意見を交わしたりできれば、相手に合わせなければならない人といるよりは、寂しきも慰められ、真の友とはいえないまでも、多少ましなことです。
現実の人間関係では、大半の人が異なる面を持ち、自分と同じような意見を持っていないような人達です。その様な人達とは、ありきたりでどうでもよいようなことを話している間は、何とか我慢もします。しかし、その様な人達は、真の心の友というには、はるかに及びません。
兼好は、その様な人達が大半である現実を「実に寂しいことだなあ」と感じています。真の友を持つことの難しさを語っているのです。
言葉では表現しきれないような微妙なことでも、お互い、心の奥底では感じ合える「友」を兼好は求めていたのでしょう。
八方美人的な人というのは、諍いを好まず、自分の気持ちよりは相手のいいたいことにあわせ、忖度した言葉しか出てきません。表面的な良好さで満足してしまうのでしょう。
その様な人を心底から信頼することはできかねます。
時には意見が異なり、口論となったり、意見の対立があったりしても、真の「友」というのは、その関係が壊れることはありません。ところが、表面的で気持ちが通っていない人とは、ちょっとした対立で、その関係が絶たれてしまうでしょう。
幸い、私には、人生のいろいろな時代に、その世代に相応しい心より信頼できる人にお会いでき、付き合いも継続している人がいます。兼好と比較しますと、これは、得がたいことなのかも知れません。改めて、自分の運の良さを実感できます。
しかし、歳を重ねるにつれ、その様な「心の友」「真の友」が他界し、黄泉の水となってしまってきました。寂しいことではありますが、それが人生というものなのでしょう。
自分が黄泉の国に旅立つとき、心が満たされていれば、「幸せな人生」であったといえるのでしょう。
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