ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

薬が患者さんに届くまで 続々

2015-03-16 10:33:14 | 
このタイトルの記事を書いてから、半月もたってしまいました。前回はADMEといわれる、薬の重要な性能のうち、吸収・分布という点で終わっていましたので、今日はその続きの代謝・排泄です。
薬は投与形態によらず、しっかり吸収され目的とする部位に分布して、初めて効果を発揮できます。そこで次が代謝の問題です。注射剤の場合は、直接血液中に入り全身に回りますが、経口投与の場合腸管から吸収された薬物は、門脈という血管をとおりすべて肝臓に行きます。それから全身に回るというルートですが、すべての薬は多かれ少なかれ、主に肝臓で代謝を受けます。代謝されるといっても、通常は吸収された薬剤の1%程度ですので、薬効についてはほとんど問題がありません。

薬の種類によっては、代謝されることを前提としたものもあります。これはプロドラッグと呼ばれるタイプで、例えば良い活性があるのですが、ほとんど経口吸収しないような場合です。これに代謝されやすいような、腸管吸収可能となる部位をつけると活性は悪くなりますが、経口剤として投与できるようになります。そして吸収されたものが、体内で代謝され、つけた部位が外れて元の活性の良い薬剤になるという仕組みです。またある臓器に吸着されやすいような部位をつけ、目的とする臓器に行ってから、代謝されて活性が出るといった、臓器特異的薬剤なども考えられています。

体内での代謝は、通常排泄しやすい方向に変換されますので、代謝によって毒性が出るということはまずありません。しかし一部とはいえ異なる物質に代わってしまうわけですので、代謝物がどういうものができ、どんな性質を持っているかを調べなくてはいけません。実はこれが大変な作業になります。前述のように生成する代謝物は非常に微量ですので、これを実験動物の体内から取り出し、きれいにして分析できる量にするには、多くの実験動物が必要になります。さらにその性質を調べるためには、より多くの量が必要となり、ここでは省力しますが、様々な工夫が必要となってくるのです。私の専門から見ると、この生体内代謝は、通常の化学反応ではとても無理な部位への変換などもあり、代謝物を化学合成するのは、難しい課題となることが多いようです。

代謝についてはかなりいろいろな問題がありますが、次回はこの生物代謝によって生まれた薬と最後の排泄について書いてみます。