ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

薬が患者さんに届くまで 代謝

2015-03-19 10:44:21 | 
薬の性能について何回か書いてきましたが、代謝の問題の続きです。
薬を投与してから、体内でどのように代謝され、どんな物質に変換されるかを調べること自体大変な作業でした。しかし分析技術・装置が進歩して、比較的簡単に調べることができるようになったのですが、新たな問題が出てきました。この分析技術が進歩したことにより、感度が格段に上昇してきました。少し前ならとても検出できないような、微量物質も検出できるようになってきました。つまり代謝物として、性質を調べなければいけない物質がどんどん増えてしまうのです。現在の規制がどうなったかよくわかりませんが、たぶんある程度の量で切ることになっていそうです。

余談ですが、この分析技術の革新で一番困っているのが、排水処理などです。工業廃水などは、含まれる有害物質などが細かく規制されています。特に毒性が強いものは、検出されてはいけないということになっています。ところが昔の検査法では出ないものの、新しい簡単な方法では感度がよくなっているので検出されてしまうのです。そこで昔の”○○法で検出されないこと”と規定されています。そのためいまだに数十年前の大がかりで面倒な検査法を使わなければいけない項目が多くなっています。

さて代謝の話に戻りますが、この代謝物から開発された薬があります。20年ぐらい前の話ですが、高脂血症の治療薬の探索が始まったころです。ある製薬メーカーが、カビの生産物の中から、コレステロールの合成を阻害する物質を見つけました。この物質は非常に活性は強いのですが、若干問題があり、さらにすぐれたものの探索を続けました。その結果元の化合物の犬の尿中に出てきた代謝物が、非常に優れていることが分かったのです。このメーカーはその製造法を探し、放線菌という微生物を使って変換する方法を開発しました。この高脂血症治療薬は、世界に展開し単品で最大売上げを記録するほどの商品になりました。

最後の排泄ですが、経路としては尿中排泄と、腸管排泄があります。腸に排泄されると再吸収の問題が出ますので、できれば如中排泄が望ましいことになります。排泄の速度も重要で、あまり早いと効果が薄くなり、遅いと副作用などが出やすくなってしまいます。特に完全に排泄されることが重要で、体内に蓄積されるようでは、薬になりません。排泄の問題は何か工夫で調整することはできませんので、より大切な事項といえます。

今まで何回か書いてきたように、吸収・分布・代謝・排泄がすべてうまくいって初めて開発対象となるわけです。