ごっとさんのブログ

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ガン幹細胞仮説のはなし

2016-05-14 10:59:39 | 健康・医療
ヒトがガンになったとき、当然化学療法などの治療をしますが、この抗ガン剤が非常に効きにくいガン細胞があり、これがガン幹細胞ではないかという仮説が出たのは、もう20年ぐらい前になります。

このころ私は研究の第一線から離れる少し前でしたので、その後この話はどうなっているのかあまりわかりませんでした。最近このガン幹細胞仮説がどうなったのか少し調べてみました。

ガン幹細胞という概念が出てきたのは、実際のがんを治療すると、完全に切除したはずなのにその後再発したり、転移という現象が出てきます。これに関与しているのは、通常のガン細胞とはやや異なった細胞があるのではというところからでした。

正常な組織中には、その組織に特有な幹細胞があり、組織を形作るためのいろいろな細胞に分化するとされています。例えば皮膚といっても、真皮から表皮までいろいろな細胞の層ができて皮膚という組織が出来上がるわけで、皮膚組織には皮膚幹細胞があり、真皮に分化したり表皮に分化したりしているわけです。これがガン組織にもあるのではというのが、ガン幹細胞仮説です。

この定義としては、正常細胞と同じように「自己複製能力がある」および「いろいろながん細胞に分化できる」というものですが、当時の技術ではガン細胞をいろいろ培養しても、幹細胞かどうかを判別することは難しいことでした。それでも1990年代の終わりには、白血病細胞からガン幹細胞を分離したという報告が出ていました。しかし白血病は骨髄細胞がガン化したもので、骨髄細胞はあらゆる血液細胞の変化する幹細胞ですので、単に幹細胞がガン化しただけではないかといわれていました。

その後いろいろな組織のガンから、ガン幹細胞を見つけたという報告が続き、これが仮説から進歩してきているようです。ガン幹細胞は分化したガン細胞のように、頻繁に分裂増殖をしませんので、抗ガン剤の攻撃を受けにくいのは確かなようです。

現在は多種の抗ガン剤が開発されていますが、基本的に分裂するときに作用して殺すメカニズムですので、ガン幹細胞は抗ガン剤に対して耐性を持っているといえます。最近はこのガン幹細胞に注目し、これをやっつけるような手法も発表されています。

ガン幹細胞という概念は定着してきたような気がしますが、もともと幹細胞だったものがガン化するのか、あるいはガン化した後に初期化され幹細胞となるのかなど、まだまだ不明な点は多いようですが、新しいガン治療の取り組みの課題となるような気もします。