ごっとさんのブログ

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「焦げを食べたらガンになる」は本当か?

2018-05-09 09:45:39 | その他
アメリカで出版された本の内容紹介記事が出ていましたが、あまりにも極端でありアメリカで10万部も売れたとは考えにくいので取り上げてみます。

著者はシリコンバレー保健研究所の所長で、タイトルは「シリコンバレー式頭が良くなる全技術」という本でした。この本の内容は、まず食品の調理法によってヘルシーな食品をミトコンドリアを鈍くさせる食品に代えてしまうというものです。

例えば“肉を燻製にしたり揚げたりグリルしたりするとき、2つの発ガン性物質「複素環アミン」と「多環芳香族炭化水素」が生成される。これらの化合物はガンを発症させるだけではなく、複素環アミンは神経毒で震顫(震え)を引き起こすこともある。もっと悪いことに、複素環アミンと多環芳香族炭化水素はともにミトコンドリア機能を阻害することで知られている。”という書き出しで以下に複素環アミンの人体への悪影響の研究結果が色々とあげられています。

この本に書かれているように肉などを高温で調理すると複素環アミンや多価芳香族炭化水素(具体的にどんな化合物化はよく分かりませんが)が生成することは確かでしょう。またここにあげられているこれらの化合物の生理作用の研究も間違ったものではないと思われます。

しかしここで全く無視されているのが「どのくらいの量」という概念です。我々が化合物などの作用で問題にしている物に「閾値(いきち)」という数値があります。

例えば花粉がまえば花粉症を発症するわけではなく、個々の人が持っている閾値をこえなければ発症しません。この値は個人によって違いますので、同じ花粉量であっても発症する人と何でもない人が出てくるわけです。つまり人に影響を与えるかどうかは、その物質の量によって決まるものです。

この本にかかれているような加熱によって生ずる芳香族アミンの量などごく僅かで、肉を何キロ食べても全く影響の出ない量と思われます。

次にこの本はタンパク質にも触れており、いくつかの調理法は重要なタンパク質を熱変性させて損なってしまうとしています。“ホエイプロテインは、ミトコンドリアが極めて重要な抗酸化物質であるグルタチオンを生成する働きを高めるが、変性してしまうとこの重大な任務を果たすことができない。”

しかし熱変性というのは、たんぱく質の立体構造が変わるだけで、含まれるアミノ酸組成が変わるわけではありません。その他いろいろな物質を例に挙げて、調理法はゆでる・蒸すが良いとしています。

しかし私はこんがり焼いた肉を食べたいし、これだけの歴史のある調理法が体に悪いという結果は出ていないと思っています。この本は科学的研究を変に根拠としているだけに、いわば悪質な啓蒙本と言えるのかもしれません。