ごっとさんのブログ

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iPS創薬で難聴の治験

2018-05-18 10:25:31 | 
慶応大学の研究チームは、進行性の難聴を引き起こす遺伝性の病気「ペンドレッド症候群」の治療薬候補をiPS細胞を使って発見し、患者に投与する治験(臨床試験)を5月に開始すると発表しました。

iPS細胞を使った創薬研究の治験は、京都大学が昨年実施した「進行性骨化性線維異形成症」に続き国内2例目で、動物実験を行わずに治験を開始するケースは初めてです。

ペンドレッド症候群は、難聴やめまい、甲状腺腫を引き起こす疾病で、有効な治療法はなく、国内の患者数は約4千人とされています。音の振動や体の平衡状態を脳に伝える内耳という器官に異常が生じることで起こります。

研究チームは患者の白血球から作製したiPS細胞を内耳細胞に分化させ、症状を体外で再現することに成功しました。詳しく調べたところ、異常なタンパク質が蓄積して内耳細胞が死ぬことが病気の原因とわかりました。

異常なタンパク質の分解を促進する可能性のある約20種類の薬剤を試したところ、臓器移植の際に免疫抑制剤として使われる「シロリムス」(発売名ラリパリムス)が有効であることを突き止めました。これは既存の薬剤を調べたわけですが、この程度の種類で有効なものが見つかるというのは運が良いといえます。

このペンドレッド症候群は患者の症状を再現する動物を作成できず、原因が分からないため治療薬の開発が進んでいませんでした。やはり病態の実験動物がいないというのは、原因も調べにくく、また何を目標とするかなど設定が難しいため、取り組みが難しいことになっています。

現在は実験動物の作製も遺伝子を含めた色々な手法が開発されているようですが、こういった患者数の少ない難病では、需要の問題もあり進んでいなかったようです。

研究チームは、今回の臨床試験がiPS創薬の本格的な始動になり、より多くの病気の治療につながるだろうと話しています。今回の臨床試験は7歳以上の患者16人を対象に、1人当たり10か月かけて実施します。

患者は自宅で検査機器を使って症状を毎日計測し、データを通信回線で自動収集して投薬効果を確かめるとしています。今回のように動物実験を全く行わず治験に入るというのは非常に珍しいケースですが、使用する薬剤が既存薬ということもあり、副作用などの安全性も確認されているはずですので、問題はないような気もします。

ただ体外での実験で良い結果が出たからといって、体内(実験動物、人間も含めて)で同じような効果が出ることは少ないような気もしますので、治療法の無い病気とはいえ、直接ヒトで確かめるというのはやや強引すぎるような気もしています。