ごっとさんのブログ

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アトピー性皮膚炎の新薬発売

2018-05-21 10:45:54 | 
アレルギー性疾患であるアトピー性皮膚炎の新しい治療薬が発売されました。症状の重い患者に効果が期待され、臨床試験では患者の症状が大きく改善されています。

アトピー性皮膚炎は私にとっても身近な疾患で、私の次男は大学に入学したころ発症し、10年ぐらい悩まされていました。前の職場でも何名かがこの病気で、ひどくなるとみても大変そうだという感じがしていました。しかし昔はあまり聞いたことがなくここ30年ぐらいで増加してきたような気がします。

厚生労働省の調査によると、アトピー性皮膚炎の患者数は2014年で45万6000人に上り、子どもだけでなく大人にも多いようです。治療は、ステロイドなどの薬物療法、入浴やシャワーで汗や汚れを落とし、保湿剤を塗るといったスキンケア、ダニやほこりを除くなどの悪化させる要因の除去などが基本となります。

ただし完治は難しく、かゆみのつらさなどに苦しむ人は多く、意識調査ではアトピーによって生活の質に影響がある人は全体の86%、精神面に影響がある人は79%となっています。

今回発売された薬は、フランスの大手製薬企業が出した「ヂュピクセント」で、アトピーでは初のバイオ医薬品で化学合成したものではありません。これは抗体医薬の一種で、15歳以上で症状が重く、ステロイドなどで治療効果が不十分な人が対象となっています。

アトピーでは、皮膚から体内に侵入したアレルギー物質に過剰に反応して、TH2細胞という免疫細胞が増えます。この新薬は、Th2細胞が大量に放出するタンパク質であるインターロイキン4(IL-4)やIL-13が皮膚細胞などの受容体と結合し、炎症反応を引き起こすことに注目しました。

この結合を新薬が妨げることで炎症を抑えます。新薬は副作用として、アレルギー性結膜炎や頭痛などの症状が出る可能性はありますが、症状の重いものは起きにくいようです。

ただ注意が必要なのは喘息を合併する患者で、新薬によって喘息も改善しますが、それによって気管支拡張薬の使用などを中断すると急激に喘息の症状が悪化する恐れがあるようです。

やはり抗体医薬ですのでどうしても価格が高くなり、初回600ミリグラム、2回目以後300ミリグラムを2週間ごとに注射します。この場合2回目以後の薬価が1回8万1640円で、保険で支払金額は3割以下になりますが、継続すると経済的な負担は重くなるようです。

この新薬は治療の選択肢が少ないアトピーにとって、患者には朗報で、症状が良くなったら中断できる可能性もあるようです。ガンなどで話題の抗体医薬が、こういった方面にも応用できるということは面白い成果と思われます。