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精子と卵子以外の細胞から「合成胚」作製

2018-05-20 10:42:03 | 健康・医療
オランダの研究チームが、精子と卵子ではないネズミの幹細胞から「合成胚」を作成したと発表しました。

この画期的な幹細胞の研究は、ヒトや動物のクローンを作ることでは無く、受精卵の着床という初期段階で多くに妊娠が失敗する理由を理解することを目的に行われました。

実験皿の中で作られたこの合成胚を、研究チームは生きているメスのネズミの子宮内膜に付着させ、この合成胚は数日間成長したようです。この過程の研究が、人間の生殖医療の向上につながる可能性があると専門家は話しています。

これは初期の流産が、女性が妊娠したことに気付く前にも、受精卵が子宮内膜に定着しないことで発生しているのいう問題に関連しています。この現象は胚の成長異常に関係する可能性が高いとされていたものの、なぜ初期の流産が発生するのか全く解明されていませんでした。

初期の胚がどのように発達するかを研究することは、倫理的にも技術的にも注意を要するようです。こういった生殖関連の研究については、必ず倫理的問題がついて回るようですが、クローン動物を作ることが可能になった現在では、少なくとも動物実験については全く問題がないような気がします。

胚の模型を作製するのに精子や卵子ではなく幹細胞を使うことは、科学研究の要求に豊かな供給をもたらしました。このあたりも受精卵を作る技術が確立しているわけですので、早期流産の原因解明に受精卵を使って研究することが難しかったというのもやや奇妙な感じがします。

幹細胞は未成熟な細胞で、生命の初期段階や成長過程で多くの異なる体の部分に変化することができます。研究チームは、ネズミから作り出した2種類の幹細胞を混ぜ合わせ、胚に似た構造体を作製しました。

顕微鏡で見ると、この構造体は胎盤や身体を作り出す役割を通常果たす、同じような形の球体状の細胞など、本物の初期段階の胚や胎盤胞と全く同じに見えるという結果でした。研究チームは、この構造体がネズミの子宮に定着するのを観察することができました。

他の研究者たちも、幹細胞で胚を作ることはできていたものの、こういった観察はそれまでされたことはありませんでした。研究チームは、これらの合成胚を極めて大量に作成し、詳細に研究できるようになった。このことは、なぜ初期の胚が定着に失敗するのかを理解し、生殖能力を補助するかもしれない薬を試験することの助けになりうると述べています。

この方法で人間の胚に似た構造物を生み出すことへの見通しは今のところかなり遠いとしています。それでもこういったネズミの胚を使って、子宮内膜への定着の仕組みを研究できるようになれば、色々人間にも応用可能な結果が出てくるような気もします。