ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

体力が30代で低下する医学的理由

2018-05-26 10:24:14 | 健康・医療
日本の大人は、極めてストレスの多い環境で暮らしているため、多くの人が疲れを感じているようです。

疲れが単に肉体の酷使によって起こるものなら、体育会系のような体力がある人は疲れにくいと言えるのかもしれませんが、体力があっても疲れやすい人とか弱そうなのにバリバリ働く人もいます。

医学的には、「疲れとは、根本的に自律神経の消耗によって引き起こされる現象である」とされています。疲れの感じやすさは個人差が非常に大きいことは医学的にも実証されており、同じ環境で同じような仕事をしても、疲れやすい人とそうでない人が出てきます。

この差は先天的、いわば遺伝子レベルの体質の違いと、後天的に身に付けた能力の違いという2つの要素があるようです。前者の「先天的に疲れにくい人」は、自律神経の機能が高い人と言えるようです。

あまり知られていませんが、自律神経の能力は血圧のように専門の測定装置を使って計測し数値化することができるようです。これを「脈波」と呼んでいますが、毛細血管が収縮・拡張するときの差を測ることで、交感神経と副交感神経の力を読み取るシステムです。

収縮と拡張の大きさ(厳密に言うと加速度)を数値化した脈波が、その人の自律神経がもつパワーを示しているという考え方です。生まれつき疲れにくい体質の人は、普段から脈波が大きいと言えるようです。

この自律神経の機能は、年を取る後に当然衰えていき、これはある年齢を境に一気に起きることが分かっています。具体的には、個人差はあるものの60歳時点での自律神経のパワーは20歳の時の4分の1に落ちると言われています。

これは自然界であれば生存が危ういレベルで、ここから「生物としての人間の適正な寿命は50歳である」という説が出ているようです。

自律神経は、体温、脈拍、呼吸、睡眠など人体に必須の機能を調節する神経で、100分の1秒単位で器官を調整しているのです。この機能は驚くべきことに、実は30代の時点で、20代と比べるとピークの半分程度まで衰えているようです。筋力などはほとんど低下しないことを考えれば、20代から30代の自律神経には、極めて劇的な変化が起きていると言えます。

このために30代半ばで引退するアスリートも多いと考えられます。我々のような普通の人間でも何となく疲れるようになったり、しっかり寝ても疲れが取り切らなくなるという現象が始まるようです。30歳を過ぎてから、急に身体の無理が効かなくなったというのは、この様に自律神経の衰えという、医学的な裏付けがあると言えます。

確かにテニスの世界でも30代になると引退していますが、こういった原因があるとは面白いものです。


ガンを眠らせ共存する「休眠療法」

2018-05-24 10:42:35 | 健康・医療
ガンで標準治療の適用が無くなると、「もう治療法はない」ということになります。しかし末期ガンでもこの段階では身体は元気ですので、簡単に「緩和療法」つまりガンの治療はせず痛みなどの苦痛を取るだけの治療に変わることに抵抗があることは多いようです。

そこで緩和療法に移る前の療法として登場したのが、ガン休眠療法という治療法です。これはガンの増殖を抑えて発育速度を遅くし、ガンの進行を遅らせることが主眼で、ガンを眠らせて少しでも長くガンと共存することを目指しています。

標準治療のでの抗ガン剤の目的はガンの縮小ですが、それが必ずしも生存期間の延長にはつながらないことが研究で分かってきたようです。そこでガンが縮小はしないが、ある程度増殖・進行を抑制する程度で、副作用の軽い投与量を設定しています。

従来の抗ガン剤治療では、年齢、ガンの状態にかかわらず、身長・体重で一律に投与量が決定されていました。これはかなりの大量投与となり、強い副作用が生じてしまいます。また抗ガン剤が効く量には個人差があることも分かってきました。

そこで継続投与、副作用をグレード2までにする、個人差を考えた投与量という基本を踏まえた休眠療法が考えられてきたのです。これにより標準治療の抗ガン剤は不可能とされた高齢者、他の疾患を持っている人、進行・再発の末期ガンの人も受けることができるようです。

この休眠療法で月単位の余命を宣告された膵臓ガンの患者が、5年生存した例もあるようです。

余談ですが少し前、懇意にしていた近所のおばさん(おばあさん)が86歳で亡くなりました。亡くなる2週間前まで元気だったのですが、体調不良を訴え病院に入院し検査をしたところ、肝臓ガンが見つかりました。

ところがその腫瘍がすでに10センチ以上の大きさで、医師によればこれだけ大きくなるには、おそらく10年以上前に発症していたはずということでした。

息子さんによれば、もし10年以上前に早期発見し、手術や抗ガン剤治療をしていても元気な期間はそれほど伸びていなかっただろうということでした。私もこの意見には賛成で、つらい時期を過ごさずにこの年まで元気に生きたのは、苦しい治療をしなかったからのような気もします。

ガンというのは非常に個人差の大きいものですので、このおばあさんのように10年以上もガンと共存できるケースもあるようです。そういったことも含めて、このガン休眠療法というのは、すべての人に有効とはならないような気がしますが、ガンと共存するような治療法も重要な選択肢となると思われます。


「環境DNA」調査

2018-05-23 10:25:07 | 自然
川や海など水をくむだけで、そこにどんな生き物が住んでいるのかわかる「環境DNA」の調査が進んでいるようです。

水中に含まれる糞などから、生き物の種類を突き止める手法で、生態系を調べるうえで重要な方法となってきているようです。もともと環境DNAとは、土壌や水中にいる微生物のDNAを意味する言葉でした。

これが発展してきたのはもう15年以上前ぐらいからDNAの増幅方法が進展し、ごくわずかでもDNAがあればそれを増幅させ、分離して配列を調べるということが可能になってきました。

本論から外れますが、この環境DNAから微生物学分野に大きな問題が提起されました。微生物の研究は多くの微生物の中から、目的とする微生物だけを分離するために、人工的な培地で増殖させ分離操作を行うところから始まります。

つまり微生物学は、この人工的な色々な養分の入った培地で増殖できる菌だけが対象にならざるを得なかったわけです。この環境DNAが進歩することによって、自然界に住むほぼすべての微生物を検出できるようになりました。

そこでこういった微生物のうちどの程度が従来の培地で培養できるかを調べたところ、なんと99%は培養できないことが分かったのです。つまり自然界の微生物を網羅していたはずの微生物学が、その中のほんの一部しか対象になっていないことが分かったわけです。

その後微生物学がどういう方向になったかを私は追跡していませんが、人工的に培養できる微生物から脱却するのは難しいような気がしています。

さて水中の環境DNAについては、2008年に欧州の研究チームが池の水からウシガエルのDNAを検出できたというのが始まりのようです。

これから環境DNAの調査が活発になり、2016年には神戸大学のチームが、国のレッドリストで絶滅危惧IAに指定されているゼニタナゴのDNAを検出し、その地点を基に生息地を絞り11年ぶりに成魚を確認することができました。

現在は約8000種の魚のDNAが登録されているデータベースも確立され、湖や川にどんな魚種が生息しているか、一斉に調べることができるようになりました。この調査ではその生物が生息しているかどうかは判定できても、正確な個体数まではわかりません。

しかしこの問題も解決できそうなプロジェクトも進んでおり、環境DNAの調査データから個体数を計測する実証試験も始まっているようです。またこれをより進化したDNAではなくRNAを調べていくという研究も始まっているようです。

こういった研究が進めば生き物の分布だけでなく、その行動や健康状態までくんだ水からわかるようになるのかもしれません。


イタリア国際テニス決着

2018-05-22 10:45:23 | テニス
ローマで開催されているイタリア国際(ATP-1000、マスターズ)で錦織が第2シードのディミトロフを破り3回戦進出したところまで書きました。

3回戦はランキング28位のコールシュライバーでしたので、完全復活に近い錦織であれば問題ないと思っていました。実際多彩なショットと安定したストロークを見せ、6-1、6-2の完勝でした。

いよいよ準々決勝は元王者ジョコビッチとの対戦となりました。ジョコビッチも怪我からの復帰途上とはいえ、強さが帰ってきています。1セットは錦織のショットが上回り、安定した展開で6-2で錦織が簡単にとりました。

ところが2セットに入るとジョコビッチが錦織の球に慣れてきたのか、ミスが減り長いラリーで逆に錦織にミスが出るようになりました。錦織も色々なショットを織り交ぜ抵抗しましたが1-6で取られてしまいました。

ファイナルセットは本当に拮抗した展開で、どちらが取るか目が離せない接戦となりました。長いラリーが続き1ポイントが重い試合でしたが、ちょっとしたところでジョコビッチのストロークが上回り、3-6で負けてしまいました。

やはりテニスは強い相手とやることで、試合勘や良いストローク、素早い動きが戻ってくるような気がします。錦織は負けはしましたが、次の大会に期待が持てる内容の試合となりました。

準決勝はこのジョコビッチとナダルという王者決戦でしたが、1セットはタイブレークまでもつれナダルが取り、2セットは強打と良く動くナダルが圧倒し6-3で決勝進出となりました。

もう一人は昨年の覇者の20歳ズベレフが勝ち上がってきました。本当の新旧対決となり世代交代が進みつつあることを示していました。この決勝も1セットはクレーキングのナダルの強さが目立ちました。ズベレフはミスも多く常に押されたまま何と6-1でナダルが取りました。

決勝のわりには面白くない試合と思っていましたが、2セットに入るとズベレフが慣れてきたのか、ナダルの昔の悪い癖であるショットが短くなるということが重なり、何と6-1でズベレフが取ったのです。

ファイナルセットもこの流れが続き、ズベレフが3-1とリードしたところで雨が降り出し中断となりました。この雨は1時間ほどで止み再開しましたが、この中断で強いナダルが戻ってきたのです。

ショットも長くなりストロークも左右にうまく入るようになりました。この再開後はナダルはすべてのゲームを取り6-3で見事優勝しました。あそこで雨が降らなければなどと言っても始まりませんが、テニスは本当に難しいものです。

来週はもう今シーズン2回目のグランドスラムである全仏オープンが始まります。これも錦織や大坂がどんな活躍をするのか、長い夜になりそうです。

アトピー性皮膚炎の新薬発売

2018-05-21 10:45:54 | 
アレルギー性疾患であるアトピー性皮膚炎の新しい治療薬が発売されました。症状の重い患者に効果が期待され、臨床試験では患者の症状が大きく改善されています。

アトピー性皮膚炎は私にとっても身近な疾患で、私の次男は大学に入学したころ発症し、10年ぐらい悩まされていました。前の職場でも何名かがこの病気で、ひどくなるとみても大変そうだという感じがしていました。しかし昔はあまり聞いたことがなくここ30年ぐらいで増加してきたような気がします。

厚生労働省の調査によると、アトピー性皮膚炎の患者数は2014年で45万6000人に上り、子どもだけでなく大人にも多いようです。治療は、ステロイドなどの薬物療法、入浴やシャワーで汗や汚れを落とし、保湿剤を塗るといったスキンケア、ダニやほこりを除くなどの悪化させる要因の除去などが基本となります。

ただし完治は難しく、かゆみのつらさなどに苦しむ人は多く、意識調査ではアトピーによって生活の質に影響がある人は全体の86%、精神面に影響がある人は79%となっています。

今回発売された薬は、フランスの大手製薬企業が出した「ヂュピクセント」で、アトピーでは初のバイオ医薬品で化学合成したものではありません。これは抗体医薬の一種で、15歳以上で症状が重く、ステロイドなどで治療効果が不十分な人が対象となっています。

アトピーでは、皮膚から体内に侵入したアレルギー物質に過剰に反応して、TH2細胞という免疫細胞が増えます。この新薬は、Th2細胞が大量に放出するタンパク質であるインターロイキン4(IL-4)やIL-13が皮膚細胞などの受容体と結合し、炎症反応を引き起こすことに注目しました。

この結合を新薬が妨げることで炎症を抑えます。新薬は副作用として、アレルギー性結膜炎や頭痛などの症状が出る可能性はありますが、症状の重いものは起きにくいようです。

ただ注意が必要なのは喘息を合併する患者で、新薬によって喘息も改善しますが、それによって気管支拡張薬の使用などを中断すると急激に喘息の症状が悪化する恐れがあるようです。

やはり抗体医薬ですのでどうしても価格が高くなり、初回600ミリグラム、2回目以後300ミリグラムを2週間ごとに注射します。この場合2回目以後の薬価が1回8万1640円で、保険で支払金額は3割以下になりますが、継続すると経済的な負担は重くなるようです。

この新薬は治療の選択肢が少ないアトピーにとって、患者には朗報で、症状が良くなったら中断できる可能性もあるようです。ガンなどで話題の抗体医薬が、こういった方面にも応用できるということは面白い成果と思われます。