内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

困難な非日常的日常を生きるための実践哲学

2020-03-21 19:27:54 | 哲学

 昨日、私が住んでいるバー・ラン県知事が県条例として、全国的に適用されているのよりもさらに厳しい外出禁止令を発令した。これによって、森・公園・野外のスポーツ施設・その他人が集まれる屋外の場所への外出もすべて禁止された。しかもその期間は4月15日まで延長された。
 これで復活祭の休み前に学校が再開される可能性はバー・ラン件に関しては完全になくなった。しかも、仮に禁令が来月16日に解除されたとしても、それは学校再開を直ちに意味しない。
 大学の授業は通常授業が4月の最終週までで終了し、翌週から二週間の期末試験期間に入る、というのが今年度の公式学年暦であった。つまり、仮に5月に大学が再開されたとしても、中間試験以後教室での授業はまったくなしに学生たちに試験だけ受けさせることになる。しかも、現時点では、教室での試験実施の可能性さえまったく予想がつかない。
 にもかかわらず、これまでのところ、国民教育大臣は公式の学年暦を変えるつもりはないと言っている。ところが、一昨晩、7月31日まで学年度が延長されるという趣旨の文書がネット上を駆け巡った。その文書はもっともらしく政府発効の公式文書のように偽装されていたため、中高生たちばかりでなく、相当数の教員たちも、発信元のアドレスを十分確認しないで拡散してしまった。大臣はすぐにそれを否定するツイッターを発信した。しかし、現在のあまりにも不確実な状況からして、それはまったくあり得ない話ではないだろうと私は思う。
 これだけ悪条件と不確定要素が揃っていて、通常授業の教育の質を維持することはまず不可能と言ってよい。ただ、オンライン授業でどんなことができるのか、その可能性を試す機会にはなっている。ぶっつけ本番の危うさ、手探り状態の戸惑い、試行錯誤の繰り返しは避けられないが、今回のような非常事態ではそれも仕方ない。
 ますます困難さを増す非日常的日常はまだまだ続く。そこから逃げ出すこともできない以上、現実への持続的な細心の注意を維持しつつ、その現実からの魂の離脱を日々試みるという哲学的態度の実践が求められている。