内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

「喜びも、悲しみも歓迎する」― ジョン・キーツ A Song of Opposites より

2024-05-08 14:12:55 | 詩歌逍遥

 研究休暇中で毎日が日曜日みたいな暮らしをしているからということもありますが、迂闊なことに、今日明日が連休であることをすっかり失念していて、朝になってようやくそのことに気づき、ほとんどの店が閉まっているから今日は買い物ができないではないかとちょっと慌てました(日本ではありえないことですね)。幸い自転車で五分ほどのところに休日祝日祭日でも午前中はほぼ休みなく営業しているスーパーが一軒あり、そこで今日明日に必要最低限の買い物は無事済ませることができました。
 今日五月八日がヨーロッパ戦勝記念日で、明日木曜日がキリストの昇天祭、およそ何の相互関係もない二つの祝日からなる連休なのですが、後者が移動祝日(復活祭から数えて六回目の日曜日後の木曜日)であるために何年かに一度、こういうことになります。金曜日は平日ですが、その日も自主的に「休日」にしてしまう人たちも多く、そうなると五連休ということになります。大学さえ一部の建物は施錠されて入れなくなります。もう学年末ですが、この金曜日に補講や試験などを組もうものなら、学生から大ブーイングを受けること必定です。私はそれらすべてのことを今年は傍観者としてぼーっと眺めているだけです。
 さて、帚木蓬生氏の『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』のなかに引用されているジョン・キーツの詩 A Song of Opposites にちょっと感動したので、同書に示された訳詩(おそらく帚木蓬生氏自身の訳。漢字の誤りと思われる一箇所を改変)をまず掲げ、その後に原詩を掲げます。原詩で脚韻がどのように踏まれているか知ることもこの詩の味わいを深めてくれます。

喜びも、悲しみも歓迎する
忘却の川の藻も、ヘルメスの羽も同じだ
今日も来い、明日も来い
二つとも、私は愛する
悲しい顔を、晴れた空に向け
雷の中に、楽しい笑い声を聞くのも
私は好きだ
晴天も悪天候も、どちらも好きだ
甘美な牧草地の下で、炎が燃えている
不思議なものへの、くすくす笑い
パントマイムの思慮深い顔
葬式と、尖塔の鐘
幼児が頭蓋骨で遊んでいる
晴れた朝の、嵐で難破した船体
すいかずらの巻きつく毒草
赤いバラの中で、蛇が舌を鳴らす
優雅な服をまとったクレオパトラが
胸に肉汁のゼリーをつけている
踊る音楽、悲しい音楽
二つとも正気で狂っている
輝く詩の女神と蒼ざめた女神
暗い農耕の神と、健全な滑稽の神
笑って、溜息をつき、また笑え
ああ、何という痛みの甘美さよ
詩の女神が輝き、蒼ざめる
そのヴェールをとって顔を見せておくれ
私に見せ、書かせておくれ
その日と夜を
二つともで私を満たしてくれ
甘美な心の痛みに対する私の大いなる渇き
私の東屋をお前のものにして
新しい銀梅花や松、花満開のライムの樹で
包んでおくれ
そして低い芝草の墓が私の寝椅子だ

Welcome joy, and welcome sorrow,
     Lethe’s weed and Hermes’ feather;
Come today, and come tomorrow,
 I do love you both together!
 I love to mark sad faces in fair weather;
And hear a merry laugh amid the thunder;
 Fair and foul I love together.
Meadows sweet where flames are under.
And a giggle at a wonder;
Visage sage at pantomime;
Funeral, and steeple-chime;
Infant playing with a skull;
Morning fair, and shipwreck’d hull;
Nightshade with the woodbine kissing;
Serpents in red roses hissing;
Cleopatra regal-dress’d
With the aspic at her breast;
Dancing music, music sad,
Both together, sane and mad;
Muses bright and muses pale;
Sombre Saturn, Momus hale; -
Laugh and sigh, and laugh again;
Oh the sweetness of the pain!
Muses bright, and muses pale.
Bare your faces of the veil;
Let me see; and let me write
Of the day, and of the night -
Both together: - let me slake
All my thirst for sweet heart-ache!
Let my bower be of yew,
Interwreath’d with myrtles new;
Pines and lime-trees full in bloom,
And my couch a low grass-tomb.