今日早朝から昼過ぎまで、明後日の学部三年の授業「日本思想史」の準備とその授業で毎回実施している書き取りテストの採点に没頭していました。
この書き取りテストは、その前に先週フランス語で説明した日本語のテキストを易しい日本語に置き換えて説明したうえで行います。重要な学習項目を三つの短い文に凝縮して書き取らせます。こうすることで授業の要点が明確になり、かつ日本の重要語彙の習得にも役立ちます。しかも、このテストの点数は平常点として最終成績に加味しますから、毎週学生たちも真剣に受けています。完璧な解答も少なからずありますが、中には同音異義語に引っかかってまったく文意に合わない漢字をあててしまっている答案や、長音が聴き取れていない(これはフランス人学習者に典型的な弱点です)答案もあります。
明日日曜日は金曜日にパリのINLCOである博士論文の口頭審査の際の講評と質問を仕上げるために丸一日あてたかったのですが、上記の授業の準備に少し凝りすぎてしまって、応用言語学科一年生向けの「日本文明入門」の授業の準備は明日に持ち越しとなってしまいました。明日も早起きして、午前中にはその準備を仕上げ、午後は講評と質問の仕上げに集中するつもりです。
明後日の授業でも谷川俊太郎の詩を一つ紹介します。『こどもたちの遺言』(佼成出版社、2009年)に収められた「生まれたよ ぼく」です。この詩、合唱曲にもなっているのですね。
生まれたよ ぼく
やっとここにやってきた
まだ眼は開いてないけど
まだ耳も聞こえないけど
ぼくは知ってる
ここがどんなにすばらしいところか
だから邪魔しないでください
ぼくが笑うのを ぼくが泣くのを
ぼくが誰かを好きになるのを
ぼくが幸せになるのを
いつかぼくが
ここから出て行くときのために
いまからぼくは遺言する
山はいつまでも高くそびえていてほしい
海はいつまでも深くたたえていてほしい
空はいつまでも青く澄んでいてほしい
そして人はここにやってきた日のことを
忘れずにいてほしい
I’ve Been Born a Boy
I’ve been born a boy.
Finally I came here.
Though my eyes are still closed
and though my ears can hear nothing yet,
I know
What a wonderful place it is here.
So please don’t interrupt
my laughing, my crying,
my liking someone
and may becoming happy.
For the sake of some day in future
when I shall leave here,
I now leave a will in which
I wish the mountains to keep soaring up forever beautiful,
the sea to be brimming with water forever deep,
the sky to be forever blue and clear
and the people to keep remembering
the day when they first came here.