内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

博論審査ミッション完了!

2024-12-06 22:50:55 | 雑感

 今日の博士論文の口頭審査は途中に十分ほどの休憩を挟んで4時間を超えた。
 審査は、型通り、まず博士論文提出者の20分あまりのプレゼンテーションから始まった。このプレゼンテーションでは、通常、博論での問題意識をより広い文脈に位置づけたり、博論のテーマに至る過程や今後の展望などが語られたりする。今日のプレゼンテーションには、論文作成中の個人的な困難な事情が語られた部分があり、ちょっと意外に思ったが、その直後の指導教授からのコメントのなかでその点が補足され得心がいった。
 指導教授のコメントのあとは、事前報告書を書いたパリ・ナンテール大学の教授からの講評と質問。小休止を挟んで私の番。準備したコメントに多少その場で付加したことはあったが、20分あまりだった。私の質問に対する回答はあまり満足のいくものではなかったが、質問を重ねてさらに追求してもそれ以上の回答は引き出せそうもなかったので、それでよしとした。
 私のあとは二人。パリ政治学院の教授と審査委員長を務めたイナルコの教授。この審査委員長のコメントが40分ほどに及び、かなり批判的であった。
 全審査員の講評と質問の後、審査を受けた学生と陪席した聴衆(といっても数人だったが)は一旦席を外し、審査員たちだけが審査会場に残って審議する。審議後、審査を受けた学生と聴衆が再び会場に呼び入れられ、審査結果が発表される。
 博士号は無事授与されたが、審査で指摘された表現上の諸問題を、指導教授の監督下、今日からの1ヶ月間で修正するという条件付きで博論は受理された。この条件は、誤りを少なからず含んだ博論をそのまま公開しなくて済むということでもあるから、博論を書いた本人のためでもある。
 もう一点審査結果として審査員長から本人に告げられたのは、イナルコの内規に基づいて、今年度イナルコに提出された全博論中から選ばれる最優秀論文の審査に推薦するということであった。この推薦は、その年に提出された博論の数が多ければ、その中から選考対象に残ったことを意味するから、最優秀論文に選ばれなかったとしても、推薦だけで一つの積極的評価であることを意味する。
 今回の博論は、最上等の出来ではないが、テーマのオリジナリティその他高く評価できる点もあり、最優秀論文の審査に推薦することには私も他の審査員も異存はなかった。
 かくして今回の審査は無事終了した。
 審査後、指導教授とパリ政治学院の教授とサン=ジェルマン=デ=プレ教会近くのイタリア料理レストランで遅めの軽い昼食を取りながら歓談。昼食後レストランを出たところで二人と別れ、サン・ミッシェル大通りのジベール・ジョゼフ書店に哲学書の新刊をチェックしに行く。
 これは実は私にとって「危険な」行為なのである。この大型書店には、哲学関係で私が欲しくなるような本がこれでもかというほどいつも平積みになっているからである。今日もやはりまんまと「罠」にはまってしまった。フラマリオンから11月に出たばかりの一巻本ニーチェ全集が目に飛び込んできた。さすがにその場では買わなかったが、ストラスブールに戻ってから注文することになるだろう。それと、これは嬉しい驚きだったが、シモンドンの Du mode d’existence des objets techniques の改定増補版がフラマリオンの文庫版叢書 Champs essais の一冊として10月に刊行されていた。こちらは今後自分の研究上必要にもなるので、紙版はストラスブールで注文するとして、電子書籍版を即購入した。その場で購入した中古本が一冊ある。Bruno Latour の La religion à l’épreuve de l’écologie, La Découverte, 2024 である。この本については後日このブロブでも語る機会があるであろう。
 TGV は完璧に定刻通り。自宅に帰り着いたのは午後八時過ぎ。
 かくして今回のミッション完了!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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