本書 La nuit de l'âme. L’intellect et ses actes chez Maître Eckhart, Vrin, collection « Études de philosophie médiévale », 2017 は HDR (=Habilitation à diriger des recherches) 取得のために書かれた論文が基になっている。著者とは2016年8月末にストラスブール大学神学部での博士論文の公開審査のとき審査員としてご一緒したことがある。そのときのことは当日の記事で話題にした。
エックハルトにおける知性論の重要な構成要素である九つの動詞に焦点を合わせて、そのそれぞれが神の言葉の魂における誕生にまでいたる知性の諸階梯を示していることを澄明な文体で鮮やかに示した見事な研究である。
その九つの動詞とは、dépouiller, abstraire, élever, unir, saisir, s’émerveiller, chercher, écouter, prêcher である。最初の二つの動詞は同じ働きの二側面として取り扱われているから、階梯としては八段階に分けられている。
「魂の夜」の「夜」は、魂において働く知性がその自らの働きによって見分けることができるものの彼方から到来する言葉を受け入れることができるようになるために通過しなくてはならない「何も見えない闇」という試練を意味している。
マイスター・エックハルトにおいて、知性とは、魂の闇のうちにしか到来しない言葉がおのずから魂のうちで響き渡るようになるまでの夜の諸階梯を辿り続ける終わりなき探究の途にほかならない。
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