熊本熊的日常

日常生活についての雑記

雲のうえ

2010年10月12日 | Weblog
北九州市の広報誌がすごい。先週末に橙灯に置かれていたのを見つけたのだが、表紙がいい。裏表紙は、ごくありふれた地元企業の全面広告なのだが、表紙の印象が強烈なのである。表紙なのに題字が無い。その代わり、使われている写真が半端ではないかっこ良さだ。これなら、心ある人はきっと手に取ること請け合いだ。

今、配布されているのは9月25日号で、写真は斎藤圭吾氏の撮影。橙灯にはバックナンバーが揃っていて、それらを見ると、毎号写真というわけではなく、絵の号と交代のようだ。絵も良い。発行は北九州市にぎわいづくり懇話会。毎回特集が組まれていて、9月25日号の特集は「夜のまち」。記事のほうは、どうということもないのだが、記事に使われている写真がまた言い。プロのカメラマンなのだから良くてあたりまえかもしれないが、それにしても良い画だ。風景は出かけていって実物を見たくなるように、人物は会って話を交わしたくなるように、食べ物は食べてみたくなるように写っている。

北九州というところには一度だけ仕事で訪れたことがある。ロームという会社の工場を拝見させて頂けるというので出かけて行ったのである。もう10数年前のことなので記憶は定かでないのだが、ロームの系列のアポロ電子という会社にもお邪魔させていただいた。この他、九州は熊本の東京エレクトロンの工場にお邪魔したことがあるくらいで、観光で訪れたことは一度も無いし、ましてや暮らしたことも無い。このブログの筆名は「熊本熊」だが、熊本には縁もゆかりもないのである。勿論、友人知人には九州出身の人も少なくないので、いろいろ話には聞いており、いつかゆっくりと出かけてみたいと思わないこともなかった。

しかし、今、こうして「雲のうえ」をぱらぱらとめくっていると、小倉の「epidemic」でクリームブリュレを食べてみたい、とか、「おもてなし北川」でおもてなしを受けてみたい、とか、八幡の「二鶴寿し」の寿司はどんな味がするのだろう、というように個別具体的な欲望が湧き起こるのである。残念ながら、それで即、仕事を休んで飛んでいく、というような身分ではないのだが、そういう感想を抱かせる広報誌というのはあまり無いのではないか。マスメディアの取り上げ方というのはわざとらしく、あんなのを観て出かけていくような奴と一緒にされるのは嫌だ、と、却って行きたくなくなる。よくある自治体の広報誌に出ているような店だと、生活臭がきつくて引いてしまったりすることもある。それが「雲のうえ」はちょっと違う。どう違うのか、やはり「雲のうえ」の実物をみてもらえればすぐにわかる。すぐにわからない人とは付き合いたくない。

北九州市のサイトに「雲のうえ」を紹介する画面がある。それによると4人いる制作スタッフのうち3人にマガジンハウス「Ku:nel」という雑誌での仕事歴がある。それは偶然かもしれないし、そのつながりでこの仕事をしているのかもしれないのだが、なんとなく「雲のうえ」のテイストの源が想像できたような気がする。以前付き合っていた人がこの雑誌を愛読していて、2冊ばかりもらったこともある。そういえば、もうすぐ彼女の誕生日だ。はがきでも出してみようか。返事があるとしても、はがきや手紙ではなくて携帯のメールだろうけれど。