熊本熊的日常

日常生活についての雑記

「さらのさら」

2011年08月06日 | Weblog
1月の個展でお世話になったギャラリー・カフェが青空市を開くというので出店させていただいた。今年に入ってからは一個挽きで皿ばかり作っていて、在庫がそれほどない。果たして割り当てられた出店スペースを埋めることができるだろうかと思いながら20数枚の皿を並べた。並べたのはよいが、私の技量の未熟の所為で、厚ぼったいものが多く、売れることもないだろうと、大小にかかわらず千円均一の値付けとした。

個展のときと同じように、商品を並べる台には風呂敷を敷いた。個展の頃は布や染めについての知識が皆無だったので、絵柄しか気にしていなかった。この8ヶ月ほどの間に染色工場を見学したり、芹沢介美術館や日本民藝館の企画展「芹沢介と柳悦孝」を訪れる機会に恵まれたり、といったことがあり多少の知識を得た。商品を並べる布に凝るほどの商品ではないのだが、それでも気になってしまうのが人情というものだろう。新しい知識は得ても、新しい風呂敷は芹沢介美術館の売店で求めた1枚だけなので、これを中心にして、あとは適当に重ねて使用した。中心、といっても敷いた場所のことではない。

固定店舗と違って、露店は開店時間というものがはっきりとしない。商品を並べ終わればそれが「開店」だ。ギャラリー・カフェのほうが11時半開店なので、便宜上その時間を開店時間とすると、開店から2時間ほどの間に並べた商品の半分以上が売れてしまった。想定外のことだが、いや、想定外であるからこそ、ありがたいことである。「有り難い」という字義通りの現象だ。お買い求めいただいたお客様は個展のときのお客様が何人かとひとりふたりの新規のお客様だ。その後、気温の上昇に伴って来客が途絶え、夕方になって店じまいをしようかという頃になって、新規のお客様が現れ、今日の売上は15枚になった。

露店でも店舗でも、ある程度の量の商品を陳列しておかないと、売っているのかいないのかよくわからない雰囲気になってしまう。もちろん、商売や店によっては、陳列品が全くないというところもある。しかし、それはその店の商品が受注生産のみで、しかも、売る側に相当の自信がある場合に限られる、ような気がする。私の場合は単純に在庫が払底しただけなので、明日は住処にある在庫をかき集めて並べるよりほかにどうしょうもない。そうなると、商品は皿だけではないので、露店の銘は「さらのさら」というわけにはいかない。ただ商品を並べるだけでもよいのだが、ものを売るだけが目的ではないので、露店の銘のほうも考えなおさないといけない。

ちなみに、「さらのさら」は「更の皿」、つまり単に新品の皿というだけのことで、それ以上の意味はない。ただ言葉としておもしろいと思ったので、露店の銘に使ってみたのである。「さらのさら」と書いた紙を押さえているオレンジ色の物体は、スウェーデンのガラス工芸家 Erik Hoglund のマルチトレイ。