久しぶりに
橙灯を訪れる。知る人ぞ知る小石川のカフェで、印象としては営業している日のほうが少ない。これまでは一人で出かけたことしかなかったのだが、今日は
ハニービーンズの羽生田さんと一緒だ。天気も穏やかだったので、巣鴨から楽しく話をしながら歩いた。不忍通りを渡り路地に入ると、古い木造家屋が並んでいるのだが、そのひとつが解体作業中だった。たいていの場合は、集合住宅に建て替えられるのだが、ここもそうなるのだろう。この路地には取り壊されるものもあるが、蕎麦屋や文房具屋として使われている現役の古い家屋もある。高さ規制があるのか、建て替えられた新しい建物も2階建てくらいのものばかりなので、狭い路地でも空は広く見える。それがまた良い雰囲気を出している。そうした古い家並を過ぎ、スーパーの脇を抜けると区立中学の裏に突き当たる。そこを右に折れ、中学の壁沿いに進むと正面に小石川植物園の緑が視野に入る。植物園の壁沿いに網干坂を下ると千川通りに出る。このあたりは共同印刷に近い所為か、小さな印刷所が多い。この通りに面した建物の2階に橙灯がある。
橙灯はカフェなのだが、この店がある建物の1階も喫茶店だ。それじゃ食い合いになるじゃないか、と思う人はカフェというものを理解できていない。カフェと喫茶店は全く別のものだ。橙灯のほうは、もともと住居部分だった区画を使っているので、外見は店らしくない。店主の坂崎さんによると、気の小さい人は、そのドアを開けることができず、引き返してしまうのだそうだ。それくらい取っ付きにくい構えなのである。その所為かどうか知らないが、この店に集まってくる人は個性的な人が多いとのこと。
今日、我々が訪れたとき、ちょうど
佐竹環さんが帰るところだった。佐竹さんは今年の4月末まで
CORBというカフェを小石川でやっておられた人で、彼女の焼くパンに定評がある。カフェのほうは店じまいしたが、パンの販売は続けていて、今日は納品にやってきたらしい。そんなわけで、今日はコーヒーと佐竹さんが焼いたフルーツケーキ「雪山」と「冬の森」をいただいた。「佐竹さん」などと気安く書いているが、私は今日が初対面だ。でも、CORBという名前は何度も耳にしているし、おそらくカフェ好きの間ではこの店を知らない人はいないだろう。一方で、自己紹介のときに「羽入田さんと私は
狩野さんのところの講座で知り合いました」と言えば、佐竹さんのほうはすぐにピンとくるものがあるはずだ。スペシャリティコーヒーの世界というのはそれくらいに狭いのである。
狭い、と言えば、店での会話のなかで、坂崎さんが
Jikonkaへ行ってきたという話が出た。
能登千加重さんの皿と朝奈さんのガラス皿を買って来たと言って見せてくれた。私も能登さんの皿を買ったというのは、
先日のこのブログに書いた通りだ。Jikonka Tokyoの店長である竹内さんは坂崎さんの小匙ジャムを使っているらしい。
坂崎さんが淹れるコーヒーは、相当旨い。この店で使っているのは
オオヤコーヒーが焙煎した豆だそうだ。それをネルで落とす。もちろん豆と道具だけが味を決めるわけではない。一番重要なのは淹れる人の腕だろう。私もコーヒーを淹れるとか茶を点てることについては多少の自信はあるのだが、だからこそ、他人の淹れるものがとても気になる。繰り返しになるが、ここのコーヒーはとても旨い。会話のネタはいくらでもあるのだが、1時間ほど経ったところで、別のお客さんがやってきたので、我々は引き上げることにした。この店はコーヒーも旨いが、面白い本だの小物がたくさん置いてあるのも楽しくてよい。小学館から発行されたばかりの、
なかむらるみさんの本「おじさん図鑑」が平積みになっていた。るみさんのサインを入れておいてもらうようにとお願いして、店を出る。来週はそのサイン本を買いに、改めてこの店にお邪魔することになる。
帰りに
ハニービーンズに寄って、コーヒーを一杯ごちそうになりながら羽入田夫妻とおしゃべりをして、豆を買って一旦帰宅する。昨日、津川さんから電話を頂き、自家製燻製を発送したとのことだったので、コーヒー豆を置いてすぐに実家へ行き、届いたばかりの燻製をピックアップする。津川さんは趣味が高じて燻製の製造販売に乗り出した人だ。
エアロコンセプトの菅野さんのところで、確か昨年の夏頃にご紹介いただいたと記憶している。燻製を作るのはたいへんに手間隙のかかることで、例の黒砂糖のお返しで頂くとなると恐縮してしまうのだが、この燻製がこれまたたいへんに旨いので、素朴に嬉しい。ひとつひとつ丁寧に作っているので、販売しているとはいいながら積極的に宣伝はしていないようだ。ウエッブサイトはURLを確保しながらも未完成のままである。それでも旨いものは自然に口コミで広がっているようで、津川さんの燻製のブランドである「妙乃燻上」で検索をすれば、いくらでもその燻製について語っているブログなどが列挙される。
ちょうど実家のほうに、
NTTドコモから先日契約したデータ通信の確認のはがきと、そのデータ通信の料金が高額になっているとの連絡のはがきが届いていた。2通のはがきを付き合わせると、契約当日に21万円分の通信をしたことになっている。早速、料金センターに電話してみると、最終的に料金を請求する段階になれば、契約通りのものになるはずだが、ドコモショップに行って今月中に手続きをするようにとのことだった。実家からの帰りに巣鴨のドコモショップに寄って事情を話すと1時間ほど待たされた後、料金の再計算をするということになった。再計算ができたら連絡するので電話番号を教えろという。不正請求の訂正を電話連絡で済ませようというのである。さすがにカチンと来たので、訂正は文書で知らせるようにと、こちらも譲らなかった。文書を出せ、出せないとのやりとりの末、NTTドコモとしてではなく、巣鴨のドコモショップとして訂正の連絡を郵送してもらうことで一件落着した。コマーシャルには巨額の費用を投じている割に、客とのインターフェースはお粗末極まりない。文書の訂正は文書で行うのが筋だろう。その簡単な筋が通らない。この会社だけではないのだが、巨大企業には人を人として扱う能力が無いのである。