風景水彩画教室の「新顔」が、初めて挑戦した公募展に連続入賞しました。
新顔といっても経験者(他の教室にいたとか学生時代などに心得のある人)と未経験者がいますが、彼は後者。定年後の趣味にと、この道を選んだ意気込みと努力の見事な成果です。
名古屋市天白区在住の村上元彦さん(61歳)。
教室に入ったのはちょうど1年前。「勤めが定年になりました。60歳ですが絵は初めてです」と自己紹介され、「じゃあ、フツーの人だな」と思ったのを覚えています。経験者を特別な人とすれば、圧倒的に多い未経験者は普通。今風に言えばフツーの人というわけです。
ちなみに僕はフツー。村上さんが入学した日に持ってきた絵を見て、風景の中の見えるものを全て描こうとしていたり、陰影のつけ方など見て「僕もそうだったな」と思ったものです。
しかし、村上さんのスケッチ取材での動きや作品を見るたびに、その変化に驚きました。
次回、次々回と見ていくと、僕を含めた先輩たちが好き勝手に村上さんの絵を論評した言葉が選択され、取り入れてあるのです。
もう一つ。教室のスケッチ取材とは別に独自で駆け回って掴んだ「絵になる素材」を次々に見せられ、同じ意欲と努力でも本気で向かえば短期間でも一気に向上するものだな、と思わずにいられません。
最初の入賞は、すでに終わった天白区美術展洋画部門の教育委員会賞。街なかのカフェが、やわらかな色使いで30号の作品に仕上げています。
続いて奨励賞を受けたのは、開催中(27日まで)の第72回瀬戸市美術展。この種の展覧会場では減ってきた撮影禁止とかで、ここには掲載しませんが、「根(命)」と題する絵は地面を這い広がる木の根を描いています。
どちらも全国規模の絵画団体の公募展ではなく、地方自治体の公募展だといっても「フツーの新顔」が教室の先生の筆入れなどもなしに入賞するのは簡単ではないでしょう。
僕は65歳で教室に入って12年。意欲も努力もそれなりにしているつもりですが、停滞気味です。
「才能がない、と言い訳していてもしょうがない。ギアを入れ直し、アクセルを踏んでみようか」。村上さんの絵を見ながらそう思いました。