風の遊子(ゆうし)の楽がきノート

旅人を意味する遊子(ゆうし)のように、気ままに歩き、自己満足の域を出ない水彩画を描いたり、ちょっといい話を綴れたら・・・

楽描き水彩画「街の産業史を物語る土蔵

2019-08-06 06:37:34 | アート・文化

水彩画教室のスケッチ取材でしばしば出かける古い町並みで、街の産業遺産ともいえる土蔵。米や酒、織物など保管する物によって多少の違いはあるものの、共通するのは頑丈な観音開きの窓でしょう。

窓は1つから4つ、5つとさまざま見かけますが、密閉化するため階段状に細工された扉は魅力的。それも原材料の土や漆喰が乾燥しても寸分の狂いもなく合わせる技は、まさに職人技です。

こんな土蔵も産業構造の変化や長い歳月の経過で老朽化。一部には近年塗り替えや修繕されたのも見かけますが、手つかずのままも少なくないようです。

描いたのは黒く塗装された壁がやや色あせ、漆喰の崩落が進んだ観音開き。特産品の取引で賑わった時代を思い浮かべながら描きました。

 


楽描き水彩画「旧脇街道・美濃路の起宿で見たご神木のイチョウです」

2019-08-04 07:00:00 | アート・文化

一宮市の旧脇街道・美濃路の旧起宿(おこしじゅく)の大明神社に立つ、ご神木のイチョウです。 

将軍や参勤交代の大名らが行き交う木曽川べりの渡船場と宿場町の変遷や賑わいを見てきた幹周5.6m、樹高32mの古木。推定樹齢は380年と見られています。

集落から高く伸びた姿を描くか、胴回りを描くか迷いましたが、樹齢と力強さを感じさせる胴回りにしました。
それにしても、イチョウの葉はやっぱり緑より黄色が似合いますね。

  

 


楽書き雑記「独創性、メッセージ性、表現力、エネルギーに感動=あいちトリエン散歩・愛知県美術館②」

2019-08-02 15:31:47 | アート・文化

僕にとって現代アートの魅力は何と言っても作品の独創性とメッセージ性。それがレベルの高い国際展のトリエンナーレの作品となればより明確に表現され、大きな展示スペースを独り占めする作品として創造されたエネルギーにも感動します。

今回も作品のテーマは家族・人種・戦争、さらにはDNAなどといった分野にまで多岐に渡っており、向かう展示室に「こんどはどんなテーマだろう」と期待が膨らみます。

スクリーンに上空から見た都市風景の映像が大写しされ、飛行機の爆音が響きます。台湾の台北市のようですが、白昼なのに通りにも広場にも人影がありません。車やバイクも走っていません。不気味な光景です。

これは台湾で毎年実施されている「萬安演習」という防空演習。市民らは30分間に渡って屋内退避し、車やバイクも全面ストップします。
作品はその光景をドローンで捉え「日常演習」のタイトルで、一見安定した平和な街に潜む戦争の脅威を感じさせます。

一人で森の中を行く少年兵の行動を捉えた写真も。世界各地で問題になっている銃を手にする少年兵。写真の少年兵にもあどけなさが残ります。

平面絵画の中に原爆の炎を描いた作品があり、この絵だけ画面がアクリル板かガラス板で額装されていました。水彩画展などでは常識ですが、これだと画面に鑑賞する人の姿が写り込みます。
意図の有無はわかりませんが、僕には写り込んだ原爆の炎に包まれた自分の姿に核兵器問題との向き合い方が問われているように感じました

 円形の空間に置かれた大きな時計。よく見ると秒針がちょっと早く動いています。
作品の説明では「もし1日が18時間に圧縮されたら」昼夜の時間が短くなり、新しい暦が必要になるだろう。
「もし、地球がより早く回転するとしたら?」静物や環境にはどのような影響があるだろう。哲学的に考えてみようとする作品のようです。

「やはり現代アートの鑑賞は、結構疲れるなあ」と初日から改めて感じました。でも、一方で「だから面白い」とも。他の会場巡りもゆっくり楽しみたいと思います。

 

 


楽書き雑記「現代アートの国際展『あいちトリエンナーレ2019』が開幕= あいちトリエン散歩・愛知県美術館①」

2019-08-01 18:12:06 | アート・文化

現代美術の国際展「あいちトリエンナーレ2019」(8月1日から10月14日まで、75日間)が開幕、まず名古屋の愛知県美術館(愛知文化芸術センター)へ出かけてきました。

会場は愛知県美術館はじめ名古屋市美術館・名古屋市内の四間道(しけみち)・円頓寺(えんどうじ)、それに豊田市美術館と豊田市駅周辺です。

「情の時代」をテーマに、国内外から約80組の現代美術や世界の先端を行く音楽プログラムなどが参加。理解力は十分ではありませんが美術展の会場巡りを楽しむつもりです。

美術館1階で出迎えてくれた作品は、3階の高さから吊り下げられた巨大な幕。1500枚のTシャツを縫い合わせ、24個のスピーカーから曲が流れる仕組みです。

展示場の大きなスペースに、色・模様とりどりの衣装のピエロが45体。寝る、座る、うんちする、笑う、泣く、味わう、愛するなどといった人間の24時間の一瞬一瞬を表現しています。

3Dアニメに描かれた奇妙な建物や飛行機らしい風景。英国への入国審査、収容、国外退去、送還する飛行機。それを通過した人へのインタビューをもとに再現し、実在するのに見えないものを可視化したアートだということのようです。

ガラスにきめ細かに線で描いたドローイング作品を展示室の4面いっぱいに並べたコーナーで、作家がマーカーペンを手にして展示作品に線を描き足しているのを目にしました。展示作品が未完成だったとかいうことではなく、次々と線を描き入れていくこと自体がアートだということでしょう。
ひょっとすると閉幕まで続くのだろうな、と現代アートの深さや幅広さを知る思いでした。