きのうの
「王座戦」第四局は、
前局につづき、
またしても
ソーちゃんの大逆転劇だった。
中盤からずっと
敗勢がつづいて、
終盤では、いよいよ
今日はダメかぁ・・・と、
諦めムードも漂った。
それでも、前回のような
逆転が起こるかもしれない・・・
という淡い期待と
彼への信頼はあった。
そしたら、
最終盤で、
互いに1分将棋になり、
「15対85」くらいの
大詰めの処で永瀬ッチが
痛恨の大ミスをやらかした。
その直前にも、
「7五角」と打った処でも、
AIに「悪手」と表示された。
これは、これまでの
棋戦で初めて見る表示で、
一瞬、AI表記のエラーかと
思ったほどである。
そしたら、
二度目の大ポカでも
「悪手」と紫色の字が
一瞬表示されて、
またもや驚いた。
プロどうしの闘いで
最終盤では「最善手」での
応酬が必須だが、
そこでの「悪手」は
即・致命傷となる。
解説者は、
1分将棋の「秒読み」と
相手は大天才の七冠なので、
その焦りで
「エアポケットに入ったのかもしれない・・・」
と言ったが、
まさに、そんな感じだった。
悪手を指した直後、
その間違いに気づき、
何度も何度も髪を掻きむしって、
それは、痛々しい光景であった。
7年来の「二人研究会」の
パートナーである
ソーちゃんも、
間違いと動揺の空気を察し、
まるで自分がミスをしたかのように
肩を落としながらも、
転がり込んできた
一筋の勝ち筋を
淡々と微動だにせず
指し進めていった。
その姿は
まさに「名人」に相応しい
厳かなものだった。
解説者やコメント雀たちも
言葉を失ってしまい、
「まるで、お通夜みたい・・・」
という言葉もあった。
前局同様に
九分九厘、勝っていた勝負を
自らの反省の弁にあったように
「詰めの力」の足りなさで
「名誉王座」を捕り逃してしまった。
「将棋はミスをした方が負け」
というゲームの鉄則を
誰よりも知っているのが
七冠のソーちゃんだが、
いささか“後味のわるい”
勝ち方だったので、
「まだまだ、実力をつける必要がある」
と、こちらも反省の弁を語っていた。
王座戦での
苦戦した二つの辛勝は、
すぐさま、彼の血肉となり、
さらに「強さ」の糧になった事だろう。
中学2年から
7年間にわたって
追い続けてきた
『藤井劇場』の第一幕は、
「八冠」制覇で区切りがつき、
これから、第二幕目のシリーズに
入りそうである。
チャンプの具志堅さんは、
「防衛の方が難しい」
と新聞で語っていた。
羽生七冠は
五か月後の防衛に失敗し、
六冠に失冠した。
それでも、
タイトルを99期も取り、
「永世七冠」に輝いたので、
これを上回るのは
ソーちゃんしかおらず、
「永世八冠」「100期超え」も
『藤井劇場』の第二幕かもしれない。
***
八冠を決めた会場が
京都の「都ホテル」というのも
縁があって嬉しかった。
在京中には、
フレンチ・レストランに出かけもし、
この春休みには、
向かいにある動物園で
リク坊と遊んできたばかりである。
*
杉本師匠は、
朝一の6時台の
ニュースに引っ張られ
喜びの声を聴かせてくれた。
ワイドショーで
弟子につけた異名が
「異次元超特急」というが、
まさに、プロ入り7年で
アッと言う間に
九段昇進、八冠制覇してしまった。
ちなみに、
師匠は、まだ八段で
無冠である(笑)。
【出藍の誉れ】
【青は藍より出でて藍より青し】
という格言のごとしである。
**
今朝の朝刊には、
作家の小川洋子の
文学者らしい視点の
コメントがあった。
なるほど、
天才は孤高であり、
それでも
己れの信じる道を
歩み続けるのである。
【盤上没我】
・・・
この孤高の八冠には
いちばん相応しい
ものかもしれない。
本居 宣長は
「これを愛し、これを信じ、これを楽しむ」
と言ったというが、
まさに、それに尽きるのが、
道を究める、ということなのだろう。
孤高の天才・八冠の生き様から
同じ令和に生きる我々は、
何をか学ばねばならない
のかもしれない。
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