抗うつ剤と安定剤、眠剤によって、体調は大分に回復してきた。
両親が揃っている実家での休養の日々も、うつの改善には理想的な環境であった。
両親は、娘の〈こころの病〉については大いに心配し、あれやこれや余計な励ましをせずに、じっと見守る賢明さを持ち合わせていた。
そんな家族の支えもあって、圭子は自ら「罪」と感じる事に、勇気を振り絞って対峙することが出来た。
魘(うな)されて目を覚ますと、両足に老婆にしがみ付かれたような痺れたような感覚が再生された。
執拗な夢でのフラッシュバックに圭子は憔悴する思いがした。
事実、鬱を患ってから、5㎏も体重が落ちた。
彼女は、思った。
せめて、あのお婆さんが誰なのか分かったら、後日、墓前でお詫びも出来るものを…と。
でも、祈るだけなら、我が家の仏壇に向かって、仏様に許しを請うて、お婆さんの魂にお詫びをすることだって出来るはずだ…と、気が付いた。
そして、朝晩、仏壇に線香を焚いて、圭子は自分流のお祈りを日課にするようになった。
両親は、娘の親しい誰かが亡くなられてのお勤めだと解していた。
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