『人生を遊ぶ』

毎日、「今・ここ」を味わいながら、「あぁ、面白かった~ッ!!」と言いながら、いつか死んでいきたい。

  

ラ・メゾン・ド・カンノ・アンプル

2024-10-05 07:35:23 | フレンチ

 

きのうは
久しぶりに市内に
新装オープンした
フレンチ・レストランに
赴いてきた。

これまで、
いくつものフレンチもどき
レストランが出来ては潰れ、
してきたが、それでも、
唯一、真っ当な店が
一軒だけ残っているという
地方都市のフレンチ事情である。

なので、
オーナーシェフの経歴を見て
期待を抱いて出かけてみた。



*

落ち着いたライトグレーの外装に
フランス国旗のトリコロールと
「キュイジーヌ・フランセース」
と有り、
濃紺のドアが洒落ている。

オープンキッチンの
カウンターでの
ひとり客なので、
初対面は、こちらも向こうも
緊張する場面である。

予約時間に入店すると、
カウンターにセットされた席を
示されて着座した。

そして、
シェフが正面に来られて
「カンノと申します・・・。
よろしくお願い致します」
と、ご挨拶頂いた。

お互い、緊張してるので、
どちらも笑顔はなく、
さながら、真剣勝負前の
立ち合いのようでもある(笑)。

フレンチは
40年来、食べるのも、
創るのも、勉強するのも、
趣味の一つなので、
カウンター席から丸見えの
厨房での仕事の様子を
逐一、鑑賞するように
凝視した。

4人掛けテーブル席が二つに
カウンター席が4つほどの
小体な店内だが、
マダムもギャルソンもいない
ワンオペでやっている。

この日も
テーブル席には
二人連れの初老マダムが
二組やってきたので、
シェフの力量が試されるようだった。

さすがに、
調理中に鳴る予約と思しき電話には
出る間もなく切れていたが・・・。
郵便配達人まで来るわで・・・(笑)。

それでも、
調理の手順、動線はスムーズで、
さすがの手際良さであった。

もっとも、完全予約制なので、
開店前にミザンプラス(下準備)が
完璧になされており、
アミューズやオードヴルは
ドレッセ(盛り付け)するだけに
仕込みが完了していた。



*

アミューズは
『エグゾセ・クリュ 
 オーヴェルジーヌ
 ソース・ポワヴロン・ルージュ』
(トビウオと茄子の赤ピーマンソース)

まだ残暑で
蒸しっとした日に
キリリと冷たく
香り仄かな一品は
まさに快適なスターターであった。

「トビウオ」は
仏語では
exocet(エグゾセ)と言うようだ。



*

オードヴルの一品目は
『ムース・ド・キャロット
 ウルサン
 コンソメ・ジュレ』
(人参のムース 
 ウニとコンソメ・ジュレ)

見た目にも涼しげで
コンソメ・ジュレの味も
滋味深く、
ニンジンのムースは
素材の甘さが際立っていた。

ウニは少量だったが、
三つ巴の味は
絶妙の極みであった。

事前に用意されていたが、
コンソメもムースも
手間のかかる料理だが、
まったく手抜きがないからこそ
ピュアな旨味が創出されていた。

感心しながら平らげると
シェフがやってきて
「如何でしたか?」
と問われたので
「うん。美味しかった・・・」
と、正直な感想を申し上げた。

シェフは
安堵したように
「ありがとうございます・・・」
と答礼して皿を下げた。

*

他客の二組のマダムたちは
けっこうくつろいで
ペチクチャ談笑していたが、
なんだか、カウンター席のみは
「差しの勝負」みたいに(笑)
ピンと張り詰めた緊張感が
漂っていた。



*

オードヴル二品目は
ポワソン(魚料理)ともなる
『ロワイヤル・ド・
フリュイ・ド・メール』
(海の幸の茶碗蒸し風)

フロワ/フロワ(冷製)ときて、
ここで熱々のショー(温製)に・・・。

カレイのアラと思われる
フュメ・ド・ポワソン(魚介出汁)の
味がクッキリしており、
清んだキレイな味だった。

カレイは仏語で
『carrelet』(カレ)と言う。



*

メインのヴィアンド(肉料理)は、
『テリーヌ・ド・コンフィ・ド・プーレ』
(鶏のコンフィのテリーヌ)

これも、
すでに仕込まれていた
テリーヌをロティして
ソースを創って供された。

コンフィ(油煮)を
テリーヌにしたのは初めてだが、
見た目も食感も佳かった。

ソースはクラシカルで
しっかりセル(塩加減)が効いたものだった。

 


これには、
目の前で拵えた
ポム・ド・テール(馬鈴薯)の
シャッキリしたサラダが
口直しにほど良かった。

(ブログによれば・・・)
自家製と思われるパンで
ソースをスカルペッタ
(ぬぐう/伊語)して
お皿を清め、
ナイフ・フォークを向こう側にして
厨房側に寄せたら、
シェフが下げに来られて
「ありがとうございます」
と懐石式配慮に応礼された。



*

デセールは
『グラス・ド・ヴァニーユ
 ブランマンジェ』
(バニラアイスとブランマンジェ)

アシェット・ブラン
(白色磁器)
に合わせたかのような
白系のデセール・フロワ
(冷製デザート)
は、香り豊かで
清々しい味だった。

殊に、グラスは
目の前のマシンで
出来立てのトロリとしたもので
レストランならではの
逸品だった。

キルシュ(桜桃リキュール)風味の
ソース・アングレーズも
洒落たものだった。


*

〆にエスプレッソ・・・
といきたかったが、
生憎、マシンが故障して・・・
との事で、コーヒーメーカーによる
ブラックとなった。

これは、まことに残念で、
【画竜点睛を欠く】
思いだったので、
是非是非、直して頂きたい旨を
伝えた。

*

BGMは
軽妙なシャンソンで
自然光が射すような創りは
モダン・ビストロ的な
アンビシャス(雰囲気)であった。

お皿は「NIKKO COMPANY」製の
白一色で統一されており、
高価な什器を用いない辺りにも
ビストロ色を感じさせた。

*

お会計時に、
シェフが
「お口に合いましたでしょうか・・・」
と、恐るおそる尋ねられたので、
「とても素晴らしかったですね。
 ピュアで、澄んだキレイな味で、
 見事なものでした」
と絶賛したら、
安堵感と嬉しげな表情をされた。

ワンオペで
始終、息つく暇もなさそうな
全力疾走感だったので、
「マダムはおられないんですか?」
との問いに
「別な職に就いてるんです・・・。
 ここが、コケた時の為に・・・」
と、初めて笑顔を見せながら、
プライベートな内輪話を
自己開示して下すった。

シェフの真面目で、
フレンチへの思いも
深いのが理解でき、
洒落の解かる人柄とも感じた。

なので、
来月の予約も
その場で入れさせて頂いた。

退店時には、
忙しい最中にも関わらず、
わざわざ一人客の為に
玄関の外まで出てこられ、
車を出すまで
深々とお辞儀をされていたのが
好印象であった。

お店が益々繁盛し
この水準を保ちながら、
長らく続いて欲しいものである。

*ー*

帰宅後、
シェフのブログの
過去ログを拝見していたら、
なんと、同じ福高の
20年後輩だと知り、
さらに、親近感が湧いた。















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