『人生を遊ぶ』

毎日、「今・ここ」を味わいながら、「あぁ、面白かった~ッ!!」と言いながら、いつか死んでいきたい。

  

楽あれば苦あり//美味あれば醜味あり

2024-09-14 07:15:46 | 懐石

きのうは
三ツ星懐石店で、
月一の「ひとり茶会」を
愉しんできた。

幸いにして、
朝方には夏風邪も
ほぼほぼ全快しており、
まずまずの体調に
復調してくれた。

オフ日の朝は、
モビコール(緩下剤)入りの
バナナシェークのみとしてるので、
お昼にもなると
おかながグーと鳴り出した。

外は残暑なんていうもんじゃない
35℃の猛暑。

熱中症対策を厳重にすべく、
素肌にポロシャツを着て
前ボタンを全開して、
ネックアイスバンドに
脇下・短パンのポッケにも
アイスパックを挟んで
車を出した。

きちんとした懐石店や
フレンチレストランには
それなりの身なりをして
出向くのが礼儀というものだが、
常連の甘えでもって、
サンダルを突っ掛けて
まるっきりのビーチスタイル(笑)。

Tシャツじゃなく
襟付きのポロシャツなのが
唯一の礼節だろうか・・・(笑)。

そんなラフスタイルでも、
いつものように
女将と親方が
笑顔でお出迎え頂く。

**

「暑いですねぇ・・・」
の御挨拶から始まり、
三席カウンターの定席で
親方が手際よく
先付けを作って供して下さる。

珍しく手加減が狂ったのか、
まな板から半月盆に供する時、
ドン! と音がしたので
「失礼しました・・・」
と小声で仰られた。

冷房はあるものの
火を使う厨房内は
さぞかし暑かろう・・・と、
察せられた。

その中で集中して調理し
神経を使っておもてなしを
しなっきゃならないのが
客商売である。



*

先付けは
『チーズ豆腐・スモークサーモン・
 オクラの酢出汁』

親方に拠れば、
クリームチーズを牛乳で溶かし、
寒天・ゼラチンで固める
簡単なレシピだとの事。

なので、今度、さっそく
家でも創ってみようと
思わせられた。

ただし、
一朝一夕ではない
料亭の絶妙の出汁加減には
家庭ではなかなか
遠く及ばないものである。



*

吹き寄せは
手提げ皿に
初秋らしい
『生麩田楽・焼き栗・海月酢・
 サワラの芋サラダ焼・
 海老とキャビア』

まずは、目で楽しみ、
そして、熱々の田楽から・・・。

モチモチした生麩の食感に
やや焦がした田楽みその
悩ましいほどの香りが立って
「・・・・・・」
言葉が出ない。

焼きたての田楽豆腐が
落ちに登場する
落語の『味噌蔵』が
脳裏に浮かんだ。

それから、
冷製のクラゲ酢で
高ぶりを醒まし、
またまた、熱々のサワラへ。

洋風のポテトサラダを
纏わせての焼き物は珍しい。

和洋折衷の妙味・佳味である。

そしてまた、
冷製の海老とキャビアへ。

仕上げは
はんなり甘味のある
走りの焼き栗。

下には
極小粒の黒胡麻が
飾りに付いていた。



***

いよいよ、“懐石の華”
『椀刺し』に・・・。

『銀杏真蒸の菊花仕立て』

茶懐石の煮物椀としては
最高水準の
見栄えと味であった。

外は猛暑で
夏の名残り著しいが・・・
碗の中は、まぎれもなく
秋の風情。

これぞ懐石の愉しみである。

高橋親方の味は
ピュアで全く濁りがなく
そして研ぎ澄まされている。

それは、腕と人間性の
相乗効果なのかもしれない。

人をして
幸せにしてくれる
見事な料理である。

だからこそ、
茶懐石の本場の京都から
帰福して来、三十年も
通い詰めている。



*

お造りは、
秋らしい彩りの織部角皿に
『烏賊・雲丹・鯛・鮪』

先月の盛夏中には
ギヤマンに盛られていたが、
緑釉に茶がかった織部模様は
さすがに初秋に相応しい。

これは、女将のセレクトだという。

ウニは単品で味わった後、
烏賊や鯛とも
抱き合わせてもみた。

セルフィーユと烏賊を合わせると
フレンチっぽくもなった。

穂紫蘇に鯛も面白い。

大根のツマでなく
プチマリンという
海藻を原料としたツマは
プチプチとした食感で
それ自体楽しめる。



*

茶懐石では
「強肴(しいざかな)」になる
蒸し物は、
『秋鮭の信州蒸し』

茶蕎麦を鮭の身で巻き
蒸しあげた、珍しい逸品だった。

親方に問うと、
オリジナルではなく、
古典的「秋のレシピ」だそうな。

「けっこう手間がかかるんです・・・」
と苦笑されておられたが、
初めて味わう「出会い物」の妙に
感心もし、
「懐が広いですねぇ・・・。
 まだまだ、何かありそうですねぇ・・・」
と、名人の隠れたレパートリーを
今後も引き出そうと挑発してみた(笑)。



*

焼き物は
『鴨』

バルサミコ酢の香りが立つ
熱々のタレが敷かれていた。

南瓜と獅子唐の素揚げと
交互に鴨の滋味を堪能した。



**

『お芋ごはん』と『滑子汁』
で料理は〆となった。

茶事の懐石では、
ご飯と味噌汁は
最初に供されるが、
「会席膳」としての「懐石」では
お仕舞いにくる。



*

ここで
コースのデザートになる
主菓子(甘味)が供される。

『胡麻羊羹』である。



*

そして、
口中が甘やかになった処で、
お薄が・・・。

茶の作法に則り、
碗を掌(たなごごろ)に受け、
この一碗を無事
喫する事が出来る事に
謝し奉り、頂戴した。

おもてなし頂いた
ご主人、女将、半東の
皆様にも感謝申し上げた。



*** 秋の「箸置き」

退店時に、
「来週。大腸ポリープの
 摘出手術で、入院なんです・・・」
と、親方・女将のお二方に告げると、
お顔を曇らせて同情下すった。

「前後の二、三日は、
 おかゆ暮らしなんで、
 今日、御馳走を頂けて
 良かったですぅ・・・」
と、お道化ると
笑っておられた。

帰路、ふと、思ったのは・・・
こんなにも美味なるご馳走を
時々、頂いてるから、
あの死ぬほどマズイ
『ニフレックス』(大腸洗浄剤)を
2ℓも呑まなくてはならないのかなぁ・・・
と、《宇宙のバランスの法則》を
恨めしく思った・・・(笑)。

世の中、何でも
プラス・マイナス・チャラ・・・
なのかもしれない・・・(笑)。

酸いも甘いも
体験し尽くすのが、
生きてる意味なのかもしれないが・・・。

マズイ物を
大量に無理くり摂取させられるのは、
難行苦行もいいとこで、
この世の生き地獄である・・・(😿)。













 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「海」という字には「母」が... | トップ | 世話になるすべてに禮を言ふ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

懐石」カテゴリの最新記事