[1月2日17:05.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区 鶴巻バス停]
宗一郎:「いやあ、だいぶゆっくりしたねぇ。でもおかげで、かなりリフレッシュできた。明後日からの仕事も、全力でできそうだねぇ」
勇太:「そりゃ良かったね」
産業道路と呼ばれる県道23号線は片側3車線の幹線道路である。
その上には仙台東部道路という都市高速(?)も通っているのだが、バスの本数はお世辞にも多いとは言えない。
バス駐車帯があるわけでもなく、そこでバスを待つのは稲生家とマリアだけだった。
勇太:「おっ、やっと来た」
日が短く、夕闇に包まれた幹線道路。
年始とはいえ車の通行量は多く、多くのヘッドライトが流れて行く。
そんな中、オレンジ色のLED行き先表示を掲げた市営バスが勇太達を見つけると、ゆっくりと速度を落として停車した。
往路とは違い、首都圏では見かけなくなったツーステップバスである。
地方とはいえ、ICカードは使える。
首都圏のPasmoも使用可。
バスに乗り込むと、後ろの2人席に座った。
平日ならさすがに工場団地も通るバス路線のこと、それなりに乗客もいるのだろうが、年始は殆ど客がいない。
大型車での運行が勿体無いくらいだ。
勇太達を乗せるとバスは、ヘッドライトの川の流れに乗った。
〔このバスはR16系統、東部工場団地、若林体育館前経由、荒井駅行きです。次は賀茂皇(かもこう)神社前、賀茂皇神社前でございます。……〕
仙台市営バスは市街地へ向かう方に対し、系統番号の頭にアルファベットを付ける。
この場合のRとは、荒井駅に向かうという意味である(ARAI Station)。
宗一郎:「これで駅まで行って、コインロッカーから荷物を回収することの地下鉄乗り換えで仙台駅に向かうということでいいかな?」
勇太:「異議なーし」
マリア:「異議ナシ……デス」
勇太が大きく頷くと、隣に座るマリアも頷いた。
バスの2人席は狭いので、小柄な勇太とマリアであっても、体が密着する。
恐らく、それを勇太は狙ったものと思われる。
[同日17:20.天候:晴 地下鉄荒井駅]
恐らくバスは定刻通りに走ってはいまい。
それでも、想定したよりは早目に着いた感じがした。
それは年始で、まだ車も人も少なかったからだろうか。
宗一郎:「大人4人分、これで」
宗一郎はSuicaでバス運賃を払った。
勇太:「だいぶ寒くなったな……」
バスを降りると、寒風が勇太達を襲って来た。
せっかく温泉で体を温めたのに、これでは元の木阿弥になってしまう。
急いで駅構内に入った。
宗一郎:「それにしても勇太、だいぶゲームセンターで取ったみたいだな」
勇太:「う、うん……」
マリア:「ヌイグルミ、取ッテモライマシタ。嬉シイデス」
宗一郎:「う、うん。それはいいんだが、帰りの鞄の中に入るかね?」
勇太:「何とか入るよ。こんなこともあろうかと、大きめのバッグを持ってきたからね」
宗一郎:「向こうに戻る前に、そういうのは宅急便で送るようにした方がいいかもな」
勇太:「魔女の宅急便、ね……」
宗一郎:「何だ?」
勇太:「別に」
マリア:(何故か最後に私の屋敷に届けに来るのは、エレーナという……)
エレーナは薬師系のポーリンの弟子であるから、本来はホウキで飛び回るというのは本質的ではない。
それでも日銭稼ぎという意味で、大目には見られているようだ。
そもそもダンテ一門の魔道師で、実はホウキで飛び回れる魔女はそんなに多くない。
とても目立つ為、飛ぶ場所やタイミングを間違うと、反対者から魔女狩りの対象にされるからだ。
そうでないマリアでさえ、魔女狩り肯定派のキリスト教派に捕まりそうになったことがある。
勇太が所属している法華講青年部が近くで街頭折伏をしていた為、その青年部員達がクリスチャン達を取り囲んで折伏を行い、流血の惨を見ることは避けられた(当作品では未公表)。
宗一郎に頼まれて3人分の乗車券を買ってきた勇太。
因みに、まだ日本の乗車券販売機の使い方をよく知らないマリアは勇太の指の動きを見ていた。
勇太:「別にバスや地下鉄の運賃ぐらい、自分で払うよ」
宗一郎:「いいんだ。父さんが皆を連れて来たんだから」
横幅の広い改札口を通過すると、エスカレーターでホームに降りる。
ホームには電車がいなかったが、ゴロゴロと先頭車に向かってキャリーバッグを引いていると、電車の接近放送が聞こえて来た。
〔2番線に、八木山動物公園行き電車が到着します。……〕
荒井駅は富沢駅や新木場駅のように、到着した電車がそのまま折り返しになることはなく、ここまでの乗客を全員降ろしてから引き上げ線に引き上げ、それから折り返しのホームに入線してくる方式だ。
その為、乗車ホームに入線してきた電車には乗客が1人も乗っていない。
今度は勇太やマリアもブルーのシートに腰掛ける。
〔お知らせします。この電車は、八木山動物公園行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕
車内は暖房が効いて暖かい。
因みに行き先の八木山動物公園なのだが、英語では『Yagiyama Zoological Park』と書く。
英語圏育ちのマリアも、そちらの方が意味が分かるという。
宗一郎:「あっ、そうか」
宗一郎はポンと自分の頭を叩いた。
宗一郎:「マリアさんは、動物園には行ったことがあるかい?」
マリア:「いえ、無いです」
宗一郎:「だよなぁ。うっかりしてた。だったら、むしろ行っておくべきだった」
勇太:「今から行けば?」
宗一郎:「ムチャ言うな。新幹線の時間もあるんだぞ」
マリア:「勇太、また今度でいいから」
マリアは勇太に耳打ちした。
勇太:「すいませんね、気がつかなくて……」
マリア:「いや、いいよ。こっちも楽しかったし」
マリアは稲生がクレーンゲームで取ったテディベアを抱きしめた。
もっとも、そのサイズを取るのにいくら使ったかは【お察しください】。
まあ、勇太はクレーンゲームが得意なのだが、それでも【お察しください】。
[同日17:30.天候:晴 仙台市地下鉄東西線・西方面電車内]
〔2番線から、八木山動物公園行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
発車時間になり、短い発車メロディーの後で、ホームドアと車両のドアが閉まった。
その後、一呼吸あってから電車が走り出す。
〔次は六丁の目、六丁の目、サンピア仙台前です〕
〔The next station is Rokuchonome station.〕
〔今日も仙台市地下鉄をご利用頂き、ありがとうございます。お客様に、お願い致します。……〕
宗一郎:「ふむ。これで仙台駅まで行って、それから夕食を取れば効率がいいな。勇太、新幹線は時間通りに走ってるかな?」
勇太:「東海道新幹線は雪で遅れてるけど、東北新幹線は大丈夫だよ」
宗一郎:「うん。さすがは雪に強い新幹線だ」
宗一郎は大きく頷いた。
地上の電車が悪天候でストップしてしまっても、恐らくは元気に走れるであろう地下鉄は一先ず市街地に向かった。
宗一郎:「いやあ、だいぶゆっくりしたねぇ。でもおかげで、かなりリフレッシュできた。明後日からの仕事も、全力でできそうだねぇ」
勇太:「そりゃ良かったね」
産業道路と呼ばれる県道23号線は片側3車線の幹線道路である。
その上には仙台東部道路という都市高速(?)も通っているのだが、バスの本数はお世辞にも多いとは言えない。
バス駐車帯があるわけでもなく、そこでバスを待つのは稲生家とマリアだけだった。
勇太:「おっ、やっと来た」
日が短く、夕闇に包まれた幹線道路。
年始とはいえ車の通行量は多く、多くのヘッドライトが流れて行く。
そんな中、オレンジ色のLED行き先表示を掲げた市営バスが勇太達を見つけると、ゆっくりと速度を落として停車した。
往路とは違い、首都圏では見かけなくなったツーステップバスである。
地方とはいえ、ICカードは使える。
首都圏のPasmoも使用可。
バスに乗り込むと、後ろの2人席に座った。
平日ならさすがに工場団地も通るバス路線のこと、それなりに乗客もいるのだろうが、年始は殆ど客がいない。
大型車での運行が勿体無いくらいだ。
勇太達を乗せるとバスは、ヘッドライトの川の流れに乗った。
〔このバスはR16系統、東部工場団地、若林体育館前経由、荒井駅行きです。次は賀茂皇(かもこう)神社前、賀茂皇神社前でございます。……〕
仙台市営バスは市街地へ向かう方に対し、系統番号の頭にアルファベットを付ける。
この場合のRとは、荒井駅に向かうという意味である(ARAI Station)。
宗一郎:「これで駅まで行って、コインロッカーから荷物を回収することの地下鉄乗り換えで仙台駅に向かうということでいいかな?」
勇太:「異議なーし」
マリア:「異議ナシ……デス」
勇太が大きく頷くと、隣に座るマリアも頷いた。
バスの2人席は狭いので、小柄な勇太とマリアであっても、体が密着する。
恐らく、それを勇太は狙ったものと思われる。
[同日17:20.天候:晴 地下鉄荒井駅]
恐らくバスは定刻通りに走ってはいまい。
それでも、想定したよりは早目に着いた感じがした。
それは年始で、まだ車も人も少なかったからだろうか。
宗一郎:「大人4人分、これで」
宗一郎はSuicaでバス運賃を払った。
勇太:「だいぶ寒くなったな……」
バスを降りると、寒風が勇太達を襲って来た。
せっかく温泉で体を温めたのに、これでは元の木阿弥になってしまう。
急いで駅構内に入った。
宗一郎:「それにしても勇太、だいぶゲームセンターで取ったみたいだな」
勇太:「う、うん……」
マリア:「ヌイグルミ、取ッテモライマシタ。嬉シイデス」
宗一郎:「う、うん。それはいいんだが、帰りの鞄の中に入るかね?」
勇太:「何とか入るよ。こんなこともあろうかと、大きめのバッグを持ってきたからね」
宗一郎:「向こうに戻る前に、そういうのは宅急便で送るようにした方がいいかもな」
勇太:「魔女の宅急便、ね……」
宗一郎:「何だ?」
勇太:「別に」
マリア:(何故か最後に私の屋敷に届けに来るのは、エレーナという……)
エレーナは薬師系のポーリンの弟子であるから、本来はホウキで飛び回るというのは本質的ではない。
それでも日銭稼ぎという意味で、大目には見られているようだ。
そもそもダンテ一門の魔道師で、実はホウキで飛び回れる魔女はそんなに多くない。
とても目立つ為、飛ぶ場所やタイミングを間違うと、反対者から魔女狩りの対象にされるからだ。
そうでないマリアでさえ、魔女狩り肯定派のキリスト教派に捕まりそうになったことがある。
勇太が所属している法華講青年部が近くで街頭折伏をしていた為、その青年部員達がクリスチャン達を取り囲んで折伏を行い、流血の惨を見ることは避けられた(当作品では未公表)。
宗一郎に頼まれて3人分の乗車券を買ってきた勇太。
因みに、まだ日本の乗車券販売機の使い方をよく知らないマリアは勇太の指の動きを見ていた。
勇太:「別にバスや地下鉄の運賃ぐらい、自分で払うよ」
宗一郎:「いいんだ。父さんが皆を連れて来たんだから」
横幅の広い改札口を通過すると、エスカレーターでホームに降りる。
ホームには電車がいなかったが、ゴロゴロと先頭車に向かってキャリーバッグを引いていると、電車の接近放送が聞こえて来た。
〔2番線に、八木山動物公園行き電車が到着します。……〕
荒井駅は富沢駅や新木場駅のように、到着した電車がそのまま折り返しになることはなく、ここまでの乗客を全員降ろしてから引き上げ線に引き上げ、それから折り返しのホームに入線してくる方式だ。
その為、乗車ホームに入線してきた電車には乗客が1人も乗っていない。
今度は勇太やマリアもブルーのシートに腰掛ける。
〔お知らせします。この電車は、八木山動物公園行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕
車内は暖房が効いて暖かい。
因みに行き先の八木山動物公園なのだが、英語では『Yagiyama Zoological Park』と書く。
英語圏育ちのマリアも、そちらの方が意味が分かるという。
宗一郎:「あっ、そうか」
宗一郎はポンと自分の頭を叩いた。
宗一郎:「マリアさんは、動物園には行ったことがあるかい?」
マリア:「いえ、無いです」
宗一郎:「だよなぁ。うっかりしてた。だったら、むしろ行っておくべきだった」
勇太:「今から行けば?」
宗一郎:「ムチャ言うな。新幹線の時間もあるんだぞ」
マリア:「勇太、また今度でいいから」
マリアは勇太に耳打ちした。
勇太:「すいませんね、気がつかなくて……」
マリア:「いや、いいよ。こっちも楽しかったし」
マリアは稲生がクレーンゲームで取ったテディベアを抱きしめた。
もっとも、そのサイズを取るのにいくら使ったかは【お察しください】。
まあ、勇太はクレーンゲームが得意なのだが、それでも【お察しください】。
[同日17:30.天候:晴 仙台市地下鉄東西線・西方面電車内]
〔2番線から、八木山動物公園行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
発車時間になり、短い発車メロディーの後で、ホームドアと車両のドアが閉まった。
その後、一呼吸あってから電車が走り出す。
〔次は六丁の目、六丁の目、サンピア仙台前です〕
〔The next station is Rokuchonome station.〕
〔今日も仙台市地下鉄をご利用頂き、ありがとうございます。お客様に、お願い致します。……〕
宗一郎:「ふむ。これで仙台駅まで行って、それから夕食を取れば効率がいいな。勇太、新幹線は時間通りに走ってるかな?」
勇太:「東海道新幹線は雪で遅れてるけど、東北新幹線は大丈夫だよ」
宗一郎:「うん。さすがは雪に強い新幹線だ」
宗一郎は大きく頷いた。
地上の電車が悪天候でストップしてしまっても、恐らくは元気に走れるであろう地下鉄は一先ず市街地に向かった。