[1月1日17:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 ホテル東横イン仙台駅西口中央・8F客室]
マリア:「ん……?」
マリアが目を覚ますと、視界の中に自分が作ったフランス人形が入って来た。
フランス人形にしては珍しく緑色の髪をしており、それがツインテールになっていて赤い髪留めを使用しているので、勇太からはミク人形と呼ばれている。
ボーカロイドの初音ミクを彷彿とさせる髪型だからだ。
因みに、それとペアを組むプラチナ色の髪の方はミカエラという名前なのだが、初音ミクの派生型である弱音ハクに似ていることから、ハク人形と呼ばれている。
マリア:「もうこんな時間か……。ありがとう。起こしてくれて」
マリアが起き上がると、上はブラウスだけしか着ていない。
マリア:「うう……ん……!」
大きく伸びをして、ライティングデスクの椅子に掛けたスカートを手に取った。
人間形態になったミクとハクが、マリアの着付けとヘアメイクを手伝う。
普段は人形として荷物の中に隠れている2体だが、いざという時は人間形態になってマリアの手伝いをする。
尚、東京中央学園の時は連れて来なかったし、ペンション“ビッグフォレスト”の時はまさかのMP切れで使用不可だった。
今こうして、やっとMPがある程度回復したというわけである。
[同日17:45.天候:晴 ホテル東横イン仙台駅西口中央・1Fロビー]
勇太:「いい部屋ですよ!まさかのイースト・アイの通過まで見れて!……あ、イースト・アイというのはJR東日本で導入している軌道検測車のことで……」
マリア:「うん、うん」
エレベーターに乗っている最中、勇太は鼻息荒くしてそんなことをマリアに語った。
勇太とマリアが泊まっている部屋は、すぐ目の前に東北新幹線の高架線がある。
普通はそんなの騒音部屋以外の何物でもないのだが、ホテル側も考えているのか、なるべく防音ガラスを使用した窓にしており、また、勇太のような鉄ヲタ客を当て込んだPRをしているようである。
マリアは勇太の言葉に、適当に相槌を打つしか無かった。
ピンポーン♪
〔1階です〕
エレベーターを降りると、既にロビーには両親が待っていた。
宗一郎:「お、来たな。それじゃ、夕食に行こう。牛タンの店に行こうと思うんだけど、いいかな?」
勇太:「仙台に来たら牛タン。ベタな観光客の法則だね」
とはいえ、勇太が中学生の頃までは地元民だった稲生家。
部屋の鍵をフロントに預けて、ホテルを出た。
勇太:「うわ、寒い」
宗一郎:「山形ほど雪は無いけどな。でも、さいたま市より寒いな」
マリアはローブを着ており、外に出るとフードを被った。
尚、今は赤い縁の眼鏡を掛けている。
これは自動翻訳魔法具の1つであり、この眼鏡を掛けるとイギリス人のマリアにとって難しい日本語の文字があっという間に英字に変わるというもの。
元々は、大師匠ダンテがラテン語で書いた魔道書を読む為の物である。
但し、言葉での自動翻訳と同様、直訳されることが多い為、日本人から見て日本語の表現がおかしくなっている所が散見されるのが短所。
[同日18:00.天候:晴 JR仙台駅3F“牛タン通り” たんや善次郎]
宗一郎:「遠慮しないで好きな物食べてくれよ」
勇太:「うん。じゃあ僕、牛タン定食。マリアさんは牛タン初めて?」
マリア:「食べた記憶は無いね。ビーフのどの部分?」
勇太:「ここです」
勇太は自分の舌を指さした。
マリア:「そう、なのか……」
宗一郎:「まずは飲み物を頼もう。父さんはビールだ。大ジョッキ!」
佳子:「飲み過ぎよ。中ジョッキにして!」
宗一郎:「……はい」
佳子:「……あ、勇太とマリアちゃんは好きなの飲んでいいからね」
勇太:「う、うん……」
マリア:「アリガトゴザイマス」
マリアはワインを頼み、勇太と母親の佳子はサワーを注文した。
勇太:「で、結局、明日はどうするの?」
宗一郎:「それなんだけども、どうだろう?大江戸温泉物語にでも行くか」
勇太:「ああ、やっぱそっちになるのか……」
宗一郎:「さすがに正月三ヶ日から、いい日帰り入浴プランをやっている温泉旅館が見つからなくてね。全く。あの事件さえ無ければ、こんな苦労せずに済んだのに……」
佳子:「もう、今さらしょうがないわよ。時間だけは2泊3日で取っちゃったのもあるからね」
宗一郎:「まあ、そうだな」
飲み物が運ばれて来たので、それで乾杯する。
宗一郎:「かーっ、これだな!」
佳子:「だから、そんなに一気に飲んだら体に悪いって!」
勇太:「相変わらずだなぁ……」
そんなことをやっているうちに、牛タンが運ばれてきた。
マリア:「確かに見た目はビーフだけど、何か、不思議な食感……」
勇太:「そうでしょ、そうでしょ」
宗一郎:「まあ、専門店で本場の名物が食べられただけでも、観光旅行って感じだな」
勇太:「そうだね」
マリア:(師匠への土産は、この牛タンにするか?たまには食べ物でもいいだろう……)
食べながらそう思ったマリアだった。
もっとも、長命のイリーナのことだから、長過ぎる人生の中で、1度は食しているのかもしれないが。
ワインを口にすると、白い肌が赤くなる。
周囲を見ると、他にも外国人旅行客の姿は……無いことはないが、少なくともマリアの生まれ故郷だの育った故郷だのからの旅行客では無さそうだった。
[同日20:00.天候:晴 ホテル東横イン仙台駅西口中央]
宗一郎:「父さん達は先に寝るけど、あまり夜更かしはするなよ」
勇太:「分かったよ」
勇太の両親はエレベーターで上がって行った。
2人、ロビーの椅子に座る。
マリア:「確か、このホテルの朝食はここで出るんだったか?」
勇太:「そうですね。いつもの通り、ここで食べ放題です。さっきフロントの人に聞いたら、正月三ヶ日限定で、お餅が出るんですって」
マリア:「モチ?」
勇太:「餅です。日本人がお正月に大抵食べるものですよ」
マリア:「ふーん……」
稲生はロビーにあるドリンクサーバーから、水とコーヒーを持ってきた。
勇太:「今更、食後ですけどね」
マリア:「ああ、ありがとう。さっき、コンビニで何買ってたの?」
勇太:「それなんですけど、今日は温泉に入れないので、これを代わりに」
勇太はコンビニのレジ袋から入浴剤を取り出した。
勇太:「マリアさんはバスタブに浸かる人でしたっけ?」
マリア:「たまに。そうか。このホテルにはバスタブがあるから、それで使えるってことか」
勇太:「そういうことです」
マリア:「分かった。ありがたく、使わせてもらうよ」
勇太:「どうぞどうぞ。ところで、先生へのお土産はどうしましょう?」
マリア:「さっき食べた牛タンなんかどう?たまには食べ物でもいいんじゃない?」
勇太:「いいんですかね?でも、あれは冷凍しないといけないから……。あ、でも、クール宅急便で送ればいいか」
マリア:「そういうことだな」
勇太:(必ず屋敷に届けに来るのがエレーナというところが気になるけれど……)
勇太とマリアは話し込み、ふと気がつくと既に深夜帯になっていたという。
マリア:「ん……?」
マリアが目を覚ますと、視界の中に自分が作ったフランス人形が入って来た。
フランス人形にしては珍しく緑色の髪をしており、それがツインテールになっていて赤い髪留めを使用しているので、勇太からはミク人形と呼ばれている。
ボーカロイドの初音ミクを彷彿とさせる髪型だからだ。
因みに、それとペアを組むプラチナ色の髪の方はミカエラという名前なのだが、初音ミクの派生型である弱音ハクに似ていることから、ハク人形と呼ばれている。
マリア:「もうこんな時間か……。ありがとう。起こしてくれて」
マリアが起き上がると、上はブラウスだけしか着ていない。
マリア:「うう……ん……!」
大きく伸びをして、ライティングデスクの椅子に掛けたスカートを手に取った。
人間形態になったミクとハクが、マリアの着付けとヘアメイクを手伝う。
普段は人形として荷物の中に隠れている2体だが、いざという時は人間形態になってマリアの手伝いをする。
尚、東京中央学園の時は連れて来なかったし、ペンション“ビッグフォレスト”の時はまさかのMP切れで使用不可だった。
今こうして、やっとMPがある程度回復したというわけである。
[同日17:45.天候:晴 ホテル東横イン仙台駅西口中央・1Fロビー]
勇太:「いい部屋ですよ!まさかのイースト・アイの通過まで見れて!……あ、イースト・アイというのはJR東日本で導入している軌道検測車のことで……」
マリア:「うん、うん」
エレベーターに乗っている最中、勇太は鼻息荒くしてそんなことをマリアに語った。
勇太とマリアが泊まっている部屋は、すぐ目の前に東北新幹線の高架線がある。
普通はそんなの騒音部屋以外の何物でもないのだが、ホテル側も考えているのか、なるべく防音ガラスを使用した窓にしており、また、勇太のような鉄ヲタ客を当て込んだPRをしているようである。
マリアは勇太の言葉に、適当に相槌を打つしか無かった。
ピンポーン♪
〔1階です〕
エレベーターを降りると、既にロビーには両親が待っていた。
宗一郎:「お、来たな。それじゃ、夕食に行こう。牛タンの店に行こうと思うんだけど、いいかな?」
勇太:「仙台に来たら牛タン。ベタな観光客の法則だね」
とはいえ、勇太が中学生の頃までは地元民だった稲生家。
部屋の鍵をフロントに預けて、ホテルを出た。
勇太:「うわ、寒い」
宗一郎:「山形ほど雪は無いけどな。でも、さいたま市より寒いな」
マリアはローブを着ており、外に出るとフードを被った。
尚、今は赤い縁の眼鏡を掛けている。
これは自動翻訳魔法具の1つであり、この眼鏡を掛けるとイギリス人のマリアにとって難しい日本語の文字があっという間に英字に変わるというもの。
元々は、大師匠ダンテがラテン語で書いた魔道書を読む為の物である。
但し、言葉での自動翻訳と同様、直訳されることが多い為、日本人から見て日本語の表現がおかしくなっている所が散見されるのが短所。
[同日18:00.天候:晴 JR仙台駅3F“牛タン通り” たんや善次郎]
宗一郎:「遠慮しないで好きな物食べてくれよ」
勇太:「うん。じゃあ僕、牛タン定食。マリアさんは牛タン初めて?」
マリア:「食べた記憶は無いね。ビーフのどの部分?」
勇太:「ここです」
勇太は自分の舌を指さした。
マリア:「そう、なのか……」
宗一郎:「まずは飲み物を頼もう。父さんはビールだ。大ジョッキ!」
佳子:「飲み過ぎよ。中ジョッキにして!」
宗一郎:「……はい」
佳子:「……あ、勇太とマリアちゃんは好きなの飲んでいいからね」
勇太:「う、うん……」
マリア:「アリガトゴザイマス」
マリアはワインを頼み、勇太と母親の佳子はサワーを注文した。
勇太:「で、結局、明日はどうするの?」
宗一郎:「それなんだけども、どうだろう?大江戸温泉物語にでも行くか」
勇太:「ああ、やっぱそっちになるのか……」
宗一郎:「さすがに正月三ヶ日から、いい日帰り入浴プランをやっている温泉旅館が見つからなくてね。全く。あの事件さえ無ければ、こんな苦労せずに済んだのに……」
佳子:「もう、今さらしょうがないわよ。時間だけは2泊3日で取っちゃったのもあるからね」
宗一郎:「まあ、そうだな」
飲み物が運ばれて来たので、それで乾杯する。
宗一郎:「かーっ、これだな!」
佳子:「だから、そんなに一気に飲んだら体に悪いって!」
勇太:「相変わらずだなぁ……」
そんなことをやっているうちに、牛タンが運ばれてきた。
マリア:「確かに見た目はビーフだけど、何か、不思議な食感……」
勇太:「そうでしょ、そうでしょ」
宗一郎:「まあ、専門店で本場の名物が食べられただけでも、観光旅行って感じだな」
勇太:「そうだね」
マリア:(師匠への土産は、この牛タンにするか?たまには食べ物でもいいだろう……)
食べながらそう思ったマリアだった。
もっとも、長命のイリーナのことだから、長過ぎる人生の中で、1度は食しているのかもしれないが。
ワインを口にすると、白い肌が赤くなる。
周囲を見ると、他にも外国人旅行客の姿は……無いことはないが、少なくともマリアの生まれ故郷だの育った故郷だのからの旅行客では無さそうだった。
[同日20:00.天候:晴 ホテル東横イン仙台駅西口中央]
宗一郎:「父さん達は先に寝るけど、あまり夜更かしはするなよ」
勇太:「分かったよ」
勇太の両親はエレベーターで上がって行った。
2人、ロビーの椅子に座る。
マリア:「確か、このホテルの朝食はここで出るんだったか?」
勇太:「そうですね。いつもの通り、ここで食べ放題です。さっきフロントの人に聞いたら、正月三ヶ日限定で、お餅が出るんですって」
マリア:「モチ?」
勇太:「餅です。日本人がお正月に大抵食べるものですよ」
マリア:「ふーん……」
稲生はロビーにあるドリンクサーバーから、水とコーヒーを持ってきた。
勇太:「今更、食後ですけどね」
マリア:「ああ、ありがとう。さっき、コンビニで何買ってたの?」
勇太:「それなんですけど、今日は温泉に入れないので、これを代わりに」
勇太はコンビニのレジ袋から入浴剤を取り出した。
勇太:「マリアさんはバスタブに浸かる人でしたっけ?」
マリア:「たまに。そうか。このホテルにはバスタブがあるから、それで使えるってことか」
勇太:「そういうことです」
マリア:「分かった。ありがたく、使わせてもらうよ」
勇太:「どうぞどうぞ。ところで、先生へのお土産はどうしましょう?」
マリア:「さっき食べた牛タンなんかどう?たまには食べ物でもいいんじゃない?」
勇太:「いいんですかね?でも、あれは冷凍しないといけないから……。あ、でも、クール宅急便で送ればいいか」
マリア:「そういうことだな」
勇太:(必ず屋敷に届けに来るのがエレーナというところが気になるけれど……)
勇太とマリアは話し込み、ふと気がつくと既に深夜帯になっていたという。