報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「ダンテ一門は世界一規模の大きい魔道師組織の為、全く顔も名前も知らない魔道師がいる」

2017-01-29 21:31:21 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月4日12:30.天候:晴 埼玉県さいたま市 さいたま新都心]

〔「魔法の書は、この地に置いておこう。いつかまた、必ず悪魔が蘇る。束の間の平和になるだろうが、今はそれを享受するんだ」「ええ、そうね」〕

 魔道師2人、魔道師が主人公の映画を観るの図。

 稲生:「いい作品でした」

 何故か手を合わせている稲生。

 マリア:「うーむ……。まさか、頼り無い探偵が後で助けに来るとは……」
 稲生:「前半で何かしらのフラグが立っているような気がしたんですが、終盤で見事に伏線が回収されましたね」

 2人の魔道師は外に出た。

 稲生:「しかし、マリアさんは先にパンフレット買っちゃう派だったんですねぇ……。パンフレットなんて、ネタバレの宝庫なのに」
 マリア:「前もそうだったろ?私は別にネタバレなんか気にしないし。だいいち、未来をガンガン予言する魔道師がそんなこと言ったらブーメランだろ?」
 稲生:「まあ、そうですね」
 マリア:「次はどうする?」
 稲生:「お昼食べてから、買い物に行きますか」
 マリア:「うん」

 稲生とマリアは、さいたま新都心駅の陸橋に上がった。
 東西自由通路の役割を果たしている。
 西側には超高層ビルが何棟か建っている。
 そこから時折強いビル風が吹く。

 マリア:「ん?」

 マリアはふと上を見上げた。

 稲生:「どうしました?」
 マリア:「エレーナ……?じゃないか」

 マリアが指さした先には、ホウキに跨って空を飛ぶ魔女の姿があった。

 マリア:「もっと高く飛ばないと目立つ上、乱気流に巻き込まれるぞ」

 高度が高い方が気流に巻かれやすいと思われるだろうが、別に飛行機ほど高く飛ぶわけではない。
 せいぜい、ヘリコプターくらいの高さである。
 因みにマリアはホウキで空を飛ぶ技術は持ち合わせていないが、エレーナの後ろに乗ったことはあるため、何となく分かるものはある。

 稲生:「マリアさん、失速してますよ!?」
 マリア:「誰だか知らんが、あのバカ!」

 稲生達は陸橋の向こう側に渡ると、ビルの改修工事現場に墜ちた魔女の救助に向かった。

[同日12:45.天候:晴 さいたま新都心駅西側]

 工事現場は昼休みということもあって、中に人はいなかった。
 それでもいつ誰かに見られないとは限らない。
 2人は急いで救助に当たると、近くの物陰に連れて行った。

 マリアは荷物の中から回復薬を取り出すと、それを魔女に使用した。
 スプレー式になっていて、それを見た稲生は、

 稲生:(何だか、“バイオハザード”の救急スプレーみたいだな……)

 と、思った。
 もちろん、原材料はグリーンハーブを使用したものなのだろうが。

 稲生:「マリアさん、魔法は使わないんですか?」
 マリア:「こんな所で魔法を使ったりしたら目立つだろ」
 稲生:「そうでした」
 マリア:「見たところ、同門のヤツだ」
 稲生:「そうなんですか。でも僕は知らないし、マリアさんも知らない?」
 マリア:「あまり日本に来ないヤツだろうな」
 魔女:「う……」
 マリア:「おい、大丈夫か?しっかりしろ」
 魔女:「うう……」

 マリアより赤みの入った金髪の魔女が目を開けた。

 魔女:「ここは……?」
 マリア:「日本の埼玉県だ。どこを飛んでいたのかも覚えてないのか?」
 稲生:「キミは誰?」
 魔女:「ひっ……!!」

 稲生が顔を覗き込むと、魔女は怯えた顔をして後ずさった。

 マリア:「心配するな。この男は同門の者だ。私はイリーナ組のマリアンナ・ベルフェ・スカーレット。この男は稲生勇太だ。聞いたことくらいあるだろう?」
 魔女:「はぁぁ……」

 魔女は溜め息にも近い息を吐いた。
 歳の頃は稲生達と変わらなさそうだ。

 稲生:「マリアさん、もしかしてこの人、具合が悪いんじゃ?」
 マリア:「なにっ?」

 マリアは魔女の額に触った。
 明らかに熱い。

 マリア:「おまっ……!こんなヒドい状態で飛んでたのか!何を考えてるんだ!自殺行為だぞ!!」
 稲生:「マリアさん、取りあえず僕の家に運びましょう」
 マリア:「全く。とんだ拾い物しちゃったな……」

 昼食は後にして、稲生とマリアは魔女を連れて行くことにした。
 タクシー乗り場が近いので、そこからタクシーに乗せて家まで帰った。

[同日13:15.天候:晴 埼玉県さいたま市 稲生家]

 正月三ヶ日も終わったので、家には誰もいない。
 稲生達は取りあえず、マリアが寝起きしていたベッドに魔女を寝かせた。

 マリア:「エレーナなら仕事の関係で顔が広いから、知ってるかもしれない」
 稲生:「それはいいですね」

 マリアは水晶球を取り出した。

 マリア:「エレーナ、エレーナ。聞こえる?」

 水晶球越しに、エレーナに呼び掛ける。
 だが……。

 エレーナ:「ZZZ……ZZZ……」

 寝てたw

 マリア:「起きろ、こらーっ!!」
 エレーナ:「お金がいっぱい……へへ……ZZZ……」
 稲生:「ダメだ、こりゃ。完全に爆睡してる。しょうがない。イリーナ先生に聞きましょうよ」
 魔女:「はぁぁぁぁ……」

 魔女は苦しそうに息を吐いた。

 稲生:「インフルエンザか何かかな?」
 マリア:「ええっ!?」
 稲生:「冷却シート持ってきます。マリアさんはイリーナ先生に問い合わせを」
 マリア:「分かった」

 マリアは今度はイリーナに問い合わせた。

 マリア:「師匠、師匠。こちらマリアンナです。応答願います」
 イリーナ:「ZZZ……ZZZ……」

 イリーナも爆睡してた。
 ズッコケるマリア。

 イリーナ:「へへ……さすがにそれは食べれないよ……ZZZ……」
 マリア:「ったく!どいつもこいつも!」
 リリアンヌ:「フヒヒ……。ま、マリアンナ先輩……こんにちは……です」
 マリア:「リリィ?リリィか……オマエに用は無いんだが」
 リリアンヌ:「フフフ……。でも、そこに寝ているヤツは知ってますです……フヒヒ……」
 マリア:「誰だ?」
 リリアンヌ:「アン組のエルザ・ベリ・アンダーセンです。ドイツ出身ですよ」
 マリア:「うーん……。聞かない名だなぁ……」
 稲生:「よくリリィは知ってるね?」
 リリアンヌ:「フヒッ、魔界で一緒でしたから」
 マリア:「魔界を拠点にしてるヤツか。それなら、話が早い。早くアン師に連絡して、引き取りに来てもらおう」
 稲生:「はい」

 こうしてエルザという名のドイツ人魔女は、所属組の者によって引き取られた。
 急な発熱が原因で、魔界の穴を潜り抜けたことに気づけなかったのだろうとのことだが、何だか信じられない事件だった。
 もっとも、稲生にはエレーナとイリーナに対するマリアのツッコミの方が怖かったが。
コメント (5)
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