報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「いい湯だよ〜 大江戸温泉物語」

2017-01-24 19:17:02 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月2日11:30.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区 大江戸温泉物語・仙台コロナの湯]

 宗一郎:「なに?お前はサウナが苦手だったのか?」
 勇太:「あの息が詰まるのが何ともねぇ……」
 宗一郎:「サウナ出たてのビールは、何とも格別なのに……」
 勇太:「悪かったね。僕は露天風呂にでも行くよ」

 勇太は露天風呂に出た。
 年始の真っ昼間ということもあってか、そんなにまだ利用客は多くない。
 露天風呂なのに、内湯との出入口の上にはテレビモニタが付いていて、正月特番を流していた。

 勇太:「1人用の壺炭酸風呂がある」

 そこに入るとザバーッと溜まっていたお湯が流れ落ちた。

 勇太:「こういう時、すぐ隣は女湯になっていて、声を掛ければ返答があるなんてなぁ……」
 ???:「クフフフフフ……。お望みなら、すぐ開通工事を致しますよ」

 勇太の頭の中に、下品な笑い声が聞こえてくる。

 勇太:「う……その声は……?」

 ザバーッと、空いている隣の壺風呂から横田が現れた。
 トレードマークの眼鏡(?)は掛けたままだった。

 横田:「クフフフフ……明けまして、おめでとうございます。読者の皆様」
 勇太:「どこに向かって言ってるんだよ。というか、ずっとお湯の中に潜んでたの?」
 横田:「これが我々、顕正会男子部調査室の本質です」
 勇太:「何がだ!ていうか、男子部調査室なんてまだあるのかよ!」

 そこで勇太、ハッとする。

 勇太:「まさか今、ここにケンショーレンジャーの面々が?」
 横田:「そうですと言いたいところですが、ご安心ください。私1人だけですよ」
 勇太:「あなたも顕正会の表舞台から姿を消したのに、こうやって現れて……」
 横田:「コミネ屋も離婚しましたので、いい気味です。クフフフフフ……」
 勇太:「あ、そう。とにかく、マリアさんには手出しをするなよ?」
 横田:「分かっております。私が魔女狩り&拷問を掛けるは、彼氏のいないフリー魔女のみ!これならOKですよね?」
 勇太:「あ、ああ……僕は知らないけどね。(いや、これ、いい訳無いよなぁ)」
 横田:「ところで稲生さん、早いとこ私にもお年玉を」
 勇太:「は?」
 横田:「イリーナ先生の生パンティを私に……!あのシルクの黒パンティがあれば……!ハァ……ハァ……!(*´Д`)」

 勇太は頭痛を感じて湯船から出た。

 横田:「嗚呼、稲生さん、何処へ!?」
 勇太:「頭痛くなってきたから上がる」
 横田:「のぼせましたか?」
 横田:「アンタのせいだよ。ついてこないでよ」

 勇太はそう言い捨てると、内風呂へ戻った。

 勇太:(全く。あんなんで顕正会と魔界共和党の理事が勤まるのかよ……)
 横田:「ああ、稲生さん。もし良かったら、マリアさんの下着でも全然構いませんよ?」

 ズコーッ!

 横田:「フム……。今すぐ調達できるのがそれであることを考えると、むしろその方が現実的かもしれませんねぇ……」
 勇太:「ワープでもできるのか、アンタわ!?」
 横田:「ワープでもテレポートでも、何でもできます。私にできないのは、女性を粗末に扱うことだけです」
 勇太:「っ……
 横田:「さあ、早いところマリアさんの綿混レースのブラショーツを私に……!(;゚∀゚)=3」
 勇太:「テレポートだけに……!」
 横田:「はい?」
 勇太:「東京テレポート駅までテレポートしやがれーっ!」

 勇太は何とバシルーラ(http://dic.pixiv.net/a/%E3%83%90%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%A9)を素で唱えた。

 横田:「あ〜れ〜!」

 因みに、タオルだけ巻いた状態でバシルーラされた横田は空中でタオルが取れ、ダイレクトに東京テレポート駅前に落下した時には【お察しください】。

[同日12:00.天候:晴 大江戸温泉物語・仙台コロナの湯]

 マリア:「なに?横田が?」
 勇太:「そうなんです。相変わらず、先生やマリアさんの下着を狙っている有り様で……」
 マリア:「あの変態理事め。で、ヤツはどこに?」
 勇太:「バシルーラで東京テレポートに飛ばしておきました。テレポートが大好きみたいなんで」
 マリア:「……よく聞こえなかった。もう1度」
 勇太:「だから、バシルーラで……あれ?」

 勇太が自分でも何を言ってるのか分からなくなってくると、マリアはブルーの瞳を目一杯に見開いて言った。

 マリア:「ヴァ・スィ・ル・ゥラは、ミドル・マスター(Middle Master 経験もそこそこに積んだ中堅)以降に習得する魔法だぞ!?どうしてまだインターン(Intern 見習い)の勇太が使えたの!?」

 因みにマリアでさえ、まだロー・マスター(Low Master 1人前に成り立て)である。

 勇太:「えっ……えっと……?何ででしょう……?」
 マリア:「とにかく、見習いなんだからCクラスの魔法しか使えないはずだ。後で師匠に怒られるようなことはしないでよ」
 勇太:「わ、分かりました。気をつけます」
 宗一郎:「あー、いい湯だった。早速お昼にしよう」

 宗一郎も後から出て来た。

 勇太:「父さん!」
 宗一郎:「何だ?」
 勇太:「あ、いや、何でもない」
 宗一郎:「ちょうどここに食事処があるからな。ビールが美味そうだ」

 勇太達は座敷の上に上がった。

 宗一郎:「まずは飲み物を……。よし、父さんはビールだ」
 佳子:「私はウーロンハイでいいわ」
 勇太:「じゃあ、僕はグレープフルーツサワー」
 マリア:「ハイボール、イイデスカ?」

 飲み物を注文した後で宗一郎が言った。

 宗一郎:「そう言えばさっき、男湯が騒がしかったが、何かあったのか?」
 勇太:「……下着泥棒が女湯に忍び込もうとしたんで、追い出されたんだよ」
 宗一郎:「そうだったのか。サウナは密閉されてるから、騒ぎに気付かなかった」
 勇太:(横田は僕に用があったみたいだから、サウナにいたらいたで、そっちに現れたんだろうなぁ……)

 飲み物が運ばれて来て、それで乾杯すると今度は適当に食べ物を注文した。

 宗一郎:「夜の新幹線だから、しばらくここで過ごしてもいいな。夕食はまた仙台駅のどこかにしよう。牛タン通りの他に、すし通りだっけ?あそこでもいいな。それとも、肉系がいいか?」
 勇太:「父さんに任せるよ」

 勇太はそう言って、サワーを口に運んだ。
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“大魔道師の弟子” 「事件の真相」

2017-01-24 12:28:35 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月2日11:00.天候:雪 長野県北部某所 マリアの屋敷]

 ダンテ:「フーム……。今時こんな悪霊がねぇ……」

 ダンテはペンション“ビッグフォレスト”であった悪霊事件を精査していた。
 リビングルームにあるテレビには、まるでビデオのようにその時のもようが映し出されている。

 イリーナ:「あのコ達がもう少し機敏に動いてくれれば、あんなことにはならなかったのですが……」
 ダンテ:「確かに合格点はあげられないが、しかし追試や補習を受けてもらう必要もない」
 イリーナ:「そうですか?」
 ダンテ:「ああ。あのコ達が戦った、あの学校での出来事が大きな功績だ」

 今度はテレビに、旧校舎での戦いが映る。

 ダンテ:「まずは、こういった霊を取りこぼした霊界側に大きな責任がある。これを私の名前で指弾の対象にしよう。次のペンションの事件も含めてだ」
 イリーナ:「はい」
 ダンテ:「この通り、証拠は映像として記録されている。向こうさんも、言い訳を考えるのに涙目になるだろう。いや、言い訳を考えることすらできんか」
 イリーナ:「では……」
 ダンテ:「証拠を押さえてくれたことを持って、『合格ではないが、不合格でもない』という判定にしよう。引き続き、あの2人には頑張ってもらってくれ」
 イリーナ:「了解しました。(それってつまり、結局は『後で再試験をやる』ってことだよね?)」
 ダンテ:「他に何か気になる点はあるかね?」
 イリーナ:「ええ。その旧校舎での戦いなんですけど、大ボスとして登場した死神……あれは、本物の死神ではありませんね。人間が思い描いている“ベタな死神の法則”をただ単に具象化しただけの産物」
 ダンテ:「その通りだ。本物の死神は、今やああいう姿はしておらんよ。あのコらも会っているはずだ。冥界鉄道公社の乗務員や、その汽船の船長とかな。船長にあっては、魔道師の資格も持つ兼任者のようだが」
 イリーナ:「そうですね。では、どこの誰があの不格好な死神を具象化したのか?ということですが……」
 ダンテ:「答えを得る手段はただ1つ。あのコらの旅の最中に出会った、とある人物が大きなカギだ。その当人に聞いてみよう」

 ダンテがパチンと指を鳴らすと、メイド人形の1人が洋風ではあるが、古風の固定電話機を持ってきた。
 ダンテはその受話器を取る。
 その電話機には受話器がもう1つ付いていて、イリーナはそれを取った。

 ダンテ:「準備はいいかね?」
 イリーナ:「はい」

 ダンテはダイヤルを回した。
 そして、どこかに繋がる。
 着信音が聞こえてきた。
 何回か鳴って、向こうが電話を取った。

 大森:「はい、ペンション“ビッグフォレスト”です」
 ダンテ:「あー、宿泊の予約を入れたいんだが、大人2人空いてるかね?」
 イリーナ:「は!?何ですか、これ!?だって、あのペンションは……オーナーは……ええっ!?」

 イリーナはそれまで目を糸のように細くしたり、眠たげに半開きにしていたりしていたが、さすがに今は両目を大きく開けている。

 ダンテ:「東アジア魔道団の中で何が起きたのかは知らんが、内ゲバに私のかわいい孫弟子達を巻き込まないで頂きたいね」
 大森:「これはこれは……。ダンテ門流の創始者様より、直々のクレームを頂戴するとは、ある意味光栄ですな」
 ダンテ:「何か、こちら側にクレームがあるのなら、セントールを通して出して頂くよう申し入れをしていたはずだが、それすらままならぬほどだったのかね?」
 大森:「いやいや、たまたま偶然ですよ」
 ダンテ:「これはしたり。我々魔道師に、偶然という言葉はとても不自然ということはあなた方も1番よく知っているはず」
 大森:「ですが、教祖にはなれても神にはなれない存在でもあります。魔道師の更にずっと上を行く神が、我々も予知できぬ偶然を作ることは可能です」
 ダンテ:「で、どのように言い訳するつもりかね?」
 大森:「私が、かつて会社勤めをしていたのは事実です。そして、たまたまその当時の仲間が私の経営するペンションを訪ねて来たのも偶然であり、けして不自然なことはではない。内ゲバという言葉にはいささか不快感を覚えますが、他門から見ればそのように見受けられてしまうのは致し方無いというのは認めましょう。しかしそこに、遠く離れて住んでいるはずの息子とその姉弟子が共に訪れるというのを予知できるのは、もはや神しかおりますまい」
 ダンテ:「いや、そんなことは無いがね。だが、まあ良い。予知能力など、魔道師によって千差万別だ。今更そんなこと言ったってしょうがない。では、今回の件は、けしてダンテ門流の弟子達と知って巻き込んだわけではないということでよろしいかね?」
 大森:「そのつもりです。粛清決行日の変更はできませんので、結果的にああなってしまったのです」
 ダンテ:「うむ、分かった」
 大森:「ですが、ダンテ先生。私、大森が東アジア魔道団の日本支部長として申し上げます」
 ダンテ:「何かね?」
 大森:「あなた方が協定を破り、逸材である日本人を弟子入りさせてしまった遺恨は、未だに残っておりますぞ」

 稲生勇太のことである。
 ダンテ門流にそれまで日本人が1人もいなかったのは、他門との協定による。

 ダンテ:「その詫びは既に済んでいることだ。あれでも足りないというのなら、団長自ら私の元へ来るように伝えてくれたまえ」

 ダンテはそう言って電話を切った。
 黙って聞いていたイリーナも電話を切る。

 イリーナ:「先生、これは……?」
 ダンテ:「これではっきりした。あのペンションが本設なのか仮設なのかは知らんが、東アジア魔道団の日本支部だったということ。そして、破門者の粛清の決行日にあのコ達を呼んだことがな。偶然などではないよ。稲生君の御両親は、招待状を受けて向かったのだからな。ま、そこは目を瞑っておいてやるさ」
 イリーナ:「はい」
 ダンテ:「あのコ達は、いつ帰ってくるのかね?」
 イリーナ:「4日の夜行バスで帰って来るので、5日の朝にはここに着くかと」
 ダンテ:「ふむ……」

 ダンテは数秒だけ瞑想した。

 ダンテ:「特に何のトラブルも無く、ここに戻れそうだな。よろしい。これにてイリーナ組の巡察は終了とする。今後も弛まず、精進しなさい」
 イリーナ:「はい」

 ダンテの体が光り出すと、煙のように消えた。

 イリーナ:「これ……。あのコ達に何て説明しよう……?」

 1人残されたイリーナは、しばらくの間、呆然としていたという。
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