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閑話休題・『貨幣の条件』 ~タカラガイよりみた人の営み

2016-04-07 13:22:41 | Weblog

【これもまた、雲南の本なり】
雲南の博物館で、よく展示されている「貯貝器」。事務的な名前とは裏腹に、人や虎のような動物を狩る人のオブジェなどが猛々しくやはり青銅で装飾された蓋と、直径60センチほどの筒状の胴体も持つ美術的価値の高い青銅器が目を引きます。

なぜ、この美術品にそのような名前が付いているのかというと、そこにタカラガイが納められていたからなのです。

雲南で日本の江戸時代のころまで使われていたお金というと、タカラガイでした。マルコポーロの『東方見聞録』や中国の『明実録』などの史料でもたどることができるたしかな事実です。つまり貯貝器は金庫だったのです。

また北京よりはるか北方の漢代の貴族の墓を掘り起こすと、死者の胸や頭の付近に、タカラガイが置かれていることがあります。呪術的な意味を持たせていたのです。

ほかにも中国の少数民族の衣装には、かつてタカラガイが豪華に縫い付けられたものが多数ありました。装飾的な美しさと財宝としての価値があったのです。
 
一方、日本では竹取物語の昔から「コヤスガイ(子安貝)」とも呼ばれ、日本各地でさまざまな呼称をあたえられていた貝ですが、日本でお金として使われることはありませんでした。なぜならば横の海で獲れるものだから。

【初めてタカラガイが主役に】
タイ、チベット、中国と日本などタカラガイのある場所(あるかな、と思って行ってなかった場合は、本には出ていない)をフィールドワークし、文献を解読して貨幣の原点と存在意義にせまった書籍がこの春、筑摩書房から出ました。
 
私も雲南、タイなどいくつかタカラガイをたずねる旅に同行しました。たいていの場合、貝は副えもので、飾られていてもあまり注目されていない印象があります。それらを紡いで主人公に据えた珍しい切り口の書だと思います。

雲南の歴史や地理にがっつりと触れているので、ご参考までに。


上田 信著『貨幣の条件 タカラガイの文明史』 筑摩選書 1800円+税

●書評 出ました!●

読売新聞(2016年3月6日付け)
雑誌「てんとう虫」4月号(2016年4月1日発行) 
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